もらう、ひろう、ぬすむ【企画の流儀】

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。

現役時代いつも困っていたのがネタ探し。誰も見たことがない。誰も知らない。そんな特ダネは転がっていません。先輩の制作者からよく言われたのが

「番組制作者は、もらう、ひろう、さがすこと」でした。

番組のネタ探しその秘訣とは

番組の企画は、ゼロから1を生み出すものではありません。すでに世の中に知られたことを1+1=2のように足し合わせて価値を生み出すことなのです。

新聞ネタから連想する

新聞にはこまめに目を通しましょう。新聞に掲載された話題をそっくりそのまま映像化するのは芸がありません。新聞に掲載された情報から想像を広げてみましょう。

番組が伝える情報は時間を競うスクープではありません。新聞が記事にした話題の中には、活字で伝えきれないものが隠れています。それをテレビがいただくのです。

新聞にとっては役に立たない情報とは活字化できないものすべてです。それを映像化してみると、記事とは違った驚きやスクープが見えてきます。視聴者から見ると同じ情報でもメディアが違うと新鮮な情報に映るわけです。

人づてにたどる

「蛇の道は蛇」ということばがあります。同類の者のすることは、同じ仲間なら容易に推測ができるということのたとえです。私なら、蛇をその道の専門家に置き換えます。専門家には情報が集まります。スクープに近づくには、人づてに辿るのが早道です。

例えば、TBSで放送されている「クレイジージャーニー」。独自の視点やこだわりを持って世界を巡る人たちをスタジオに招いて特異な体験談を聞く番組です。

出演者の一人丸山ゴンザレスさんの取材手法の一つが人づてで辿るスタイルです。人が住める環境である限り、了解を取り付けることで目指す聖域にたどりつけることがカギであると彼の著書「世界の混沌を歩く ダークツーリスト」に詳しく掲載されています。

現場に行って眺める

よく知られた空間であっても、光の当て方を変えただけで思いも寄らない光景にであうことがあります。被写体を違った角度から見てみたり、ドローンのような位置から見てみたりすることです。

40年前、東京を探検する企画で、神田川を取材したことがあります。神田川は神田柳橋で隅田川に繋がりますが、その水源は吉祥寺の井の頭公園です。

最大の見所は。御茶ノ水駅周辺です。谷底を流れる川の姿はまるで渓谷。ふだん人が立ち入ることができない水面から、この景色はどのように見えるのか、都の清掃局に取材交渉して船で辿ることができました。

驚いたのは、水面近くからは地上の喧騒が全く聞こえなくなることでした。実際に行ってみなければわからない驚きをテレビで伝えることができました。

何気ない風景であっても、その場所にまつわる歴史や周囲の人への聞き込みから、現場の持つ物語が広がることもあります。「神は細部にこそ宿り給う」のです。

組み合わせて化学反応を見る

科学番組の見せ方の一つに「珍なる実験」という手法があります。

最近ではバラエティなどの仕掛けとしても使われていましたが、「人間を暗闇の中に閉じ込めたら時間感覚は失われるのか」という体内時計をテーマとした番組で、使われたのが、人間を暗室に閉じ込める実験でした。

テレビの世界では「珍なる実験」と呼びます。専門家ならば絶対にやらないであろう実験をあえて視聴者に理解しやすくする手段として行う実験です。「なるほどそうだったのか」という読後感を引き出すための実験も企画の一つと言えます。

その昔プロの写真家が撮影したスチール写真だけを使って60分間の映像作品を作った先輩がいました。

静止画を集めて動画のように動く映像を作り上げる手法は今では当たり前でした図、初めて放送番組として企画を通すときには拒否感を示す人が大勢いたと聞きました。

だれも試したことのない手法を使う

プロの仕事に密着する企画で、記憶に残るのが「漫勉」です。これは漫画家の仕事を無人カメラで撮影するものです。誰も見たことがない世界を白日の下にさらすのが「探検」という切り口ですが、この番組では「実況中継」という手法を撮影系のドキュメンタリーで使いました。カメラマンの代わりに無人カメラを置くことで被写体であるプロの漫画家は安心し、結果素顔のままの創作風景が取れました。ヒマラヤの秘境より入りにくいのが人の心です。手法が道を開く例の一つと言えます。

番組制作者の姿勢は人から情報をいただいて視聴者に届けることです。

主役ではなくわき役であることをわきまえ、謙虚になる姿勢が秘訣なのではないでしょうか。