
一週間がかりで撮影・編集していた動画を公開しました。
今日はこの動画づくりを振り返りながらインタビューの役割を考えます。
カルガモ一家を取材して考えた
初夏を迎えたこのシーズンは、野生のカルガモが繁殖を迎える時期です。特に都心ではカルガモ親子のお引っ越しの様子が話題になります。
近くの二子玉川でもカルガモが営巣していて、引っ越しの映像を狙いに行きました。しかし、スケジュールの都合でカルガモの引っ越しの模様は撮影できませんでした。
手元にあるのは取材先の担当者が撮影した数秒程度のスマホ映像とスナップ写真のみ。たったこれだけの素材を使って動画作品を作らなくてはなりません。ではどうするか、選んだ答えはインタビューを使ってサイドストーリーを構成することでした。
インタビューが録れれば動画できる
動画を見ていただいて分かるように、狙いを絞った先はカルガモではなく、カルガモの引っ越しを見守る地域のとりくみでした。カルガモは多摩川の中に消えてしまいましたが、営巣した場所と支えた人々の記録は残っています。
撮影はこれまでの事実を振り返りながら現場の様子を撮影し直すというやり方で行いました。
ご覧のように動画ではインタビューの項目を三つに割り、その前後に説明的な情報を振り分けています。インタビューの内容が視聴者にしっかり届くような流れにできれば動画は成立すると考えました。
インタビューで何を聞くか
駆け出しの頃先輩に同行してインタビューの現場に行ったことがあります。先輩から「テレビのインタビューは取材記者のように数字や情報を聞き出すのではない」と聞いて、では何を聞くのだろうと迷いました。
インタビューに当たっては、事前のリサーチに基づいた大まかな流れを考えておく必要があります。取材相手に会って初めて何を聞いたらいいか考えるのでは遅すぎます。
しかし、事前に細かすぎる質問を用意するのも考えものです。事前の質問を聞き出すことが目的になってしまうからです。
ちょうどいいのは、大きな質問を三つほど事前に用意しておき、聞く順番もある程度考えておくことです。あとは相手の話次第で臨機応変に対応することです。
私の場合、事前に用意するのはたとえば「動機、挫折、願い」という目標です。細かな質問は用意せず、結果としてざっくりとした答えが発掘できればという姿勢で臨みます。
事前に用意してきた質問に対して相手の反応が良かったとしても番組上使えるインタビューにならない可能性があるのです。
できるだけ視聴者の共感を得られるかがインタビューのポイントになります。
インタビューする側が、相手から話をうまく引き出す必要があるのです。
特ダネは人の中にある
優れた作品の多くはインタビューの成否にあると言われます。人の心の中は誰もうかがい知ることができない秘密の世界です。その秘密の世界の扉を開くのはインタビューしかないからです。
相手の話が聞き足りないと思ったら、様々な手段を使って食い下がりましょう。
例えば決めらた時間が終わったあと、雑談をするように質問者が疑問に思ったことをつぶやいてみるというのもありです。
カメラマンには事前にロケ終了後もカメラを回しておくよう目配せしておくことも秘訣です。よくできたカメラマンはインタビューの内容にも耳を澄ませているものです。カメラマンも胃の腑に落ちるような「なるほど」というような答えを期待しています。
相づちは声を出さない
インタビュー撮影の時心がけているのが、不用意に相づちを打たないことです。相づちとは、相手の話を受けて「そうですね」とか「ハイハイ」などと受け答えしてしまうことです。
なぜダメかというと、編集時に困るからです。映像の編集は映像と音声をセットで行います。使うのは発言の主語と末尾。末尾とは言い切るタイミングです。「私はこう決断しました」というインタビューがあったとしたら重要なのは責任の所在である冒頭の「私」と、判断の所在のある「しました」の部分です。
通常の会話では相づちは、お互いの言葉が重なります。「私」の部分や「しました」の部分に、質問者の不用意な相づちの音が重なったら編集することができません。
ですから、質問する際は相手に主語を語らせるように遠回しな質問を投げかけ、あとは声を出さずに、大げさな表情を使って相手の話を促すようにするのです。
まとめ
相手からどれだけの話を引き出せるのか、誰も聞いたことがない話を掘り起こせるかは質問者の知識や経験次第。相手がこの人にだったら話せるし、話していると楽しいと感じさせるような人間力が求められていると思います。