
アナログに慣れ親しんだ編集脳をデジタル編集に切り替えて半年。ようやくマニュアルを見比べずにカット編集ができるようになりました。
動画を編集していて思うのは、テレビ業界の動きが鈍く感じられることです。
先ほど幕張で開催された国際放送機器展ではテレビ業界の新たなる戦略が披露されました。
しかし、ネットと連携したコンテンツ戦略や、フォーマット権の海外販売などどこかで聞いたことばかり。
かつて大画面やデジタル技術の競争を繰り広げた 国際放送機器展は、放送人にとってまだ見ぬ世界を見せてくれる夢の扉でした。
放送とネットの反応速度の差を感じます。
利用規約更新のインパクト
若い世代を中心に視聴習慣を大きく変えた投稿動画。その元締めともいえるYouTubeがこのほど利用規約を更新すると公表しました。実施は12月10日からです。
新しい利用規約では、YouTubeが独自の裁量で採算に合わないと判断したユーザーに対してサービスへのアクセスを解除できる、つまりはチャンネルを削除あるいはアカウントごと削除できるようになるということで、多くのユーザーからYouTube上での将来に対する不安の声が挙がっています。
YouTubeの新しい利用規約が「採算の合わないチャンネル」を勝手に削除可能になるものだと物議を醸す|au Webポータル経済・ITニュース
一部のYouYubeの利用者の間ではアカウント削除への不安が広がっているようですが、私はYouTubeには別の意図があるように感じます。
YouTubeと聞いて誰もが思い浮かべるのはエンタメコンテンツです。
衝撃的な映像。過激な主張。個性的なキャラクターのトーク。隙間時間に携帯で楽しめる利便性が視聴者層を掘り起こし、動画投稿のメディアを拡大してきました。
ところが今、時代に変化が起きつつあります。つい先日こんな動画がYouTubeに投稿されました。
やべ、Sam Pilgrim日枝神社降りてるのか。日本人にはできないな。俺も寂れた神社でやってしまったが https://t.co/mDiG4ayuP7
— naoyuki sasanami (@naotko) November 12, 2019
外国人マウンテンバイカーが神社の階段を駆け下ったり、公道を走行中のトラックにつかまって走ったりする非常識なふるまいです。
マウンテンバイクで神社の階段下る 投稿動画に批判続出:朝日新聞デジタル
こうした不穏当な動画投稿の拡大とそれに対する社会的な批判がこのところ目立ちます。
銃乱射事件の現場や富士樹海の自殺者の映像など、倫理的に問題のある動画の投稿で物議を醸すことも増えています。
表現の自由との兼ね合いで、削除には慎重な態度で臨んできたYouTubeの姿勢にも変化が出始めているようです。
“採算に合わない”とは何か
ご存じのようにYouTybeは広告費で成り立っています。
投資しても見返りがあるうちは規制という話は出てこないのが世の中の道理です。
ところがエンタメ系のコンテンツが需要を上回るにつれ飽和状態が起きはじめています。
飽和の中から生まれやすいのは、明らかに節度を越したコンテンツです。
毎分500時間の動画が投稿される中、近年は過激なコンテンツや不正確な情報の拡散など、悪質な投稿動画で物議を醸すことも増えている。「ユーチューバー」ともいわれる、動画を投稿し広告収入で稼ぐクリエーターも増える一方、ガイドラインの運用をめぐる批判も絶えない。
誰もがハマる「YouTube」は、本当に安全な場所か | インターネット | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
それまで客寄せパンダとして大目に見てきたコンテンツも、” 採算に合わない”と判断すれば持ち続ける理由はないというわけです。
YouTube の投稿画面には最近次の一文が新たに掲載されるようになりました。
この動画は子ども向けですか?
ご自身の所在地にかかわらず、児童オンライン プライバシー保護法(COPPA)やその他の法令を遵守することが法的に必要です。自分の動画が子ども向けに制作されたものかどうかを申告する義務があります。
これを見て思うのが、放送におけるガイドラインです。公共電波を使う放送には”しばり”がかけられています。NHKでは放送ガイドラインが、民間放送では「日本民間放送連盟放送基準」などです。
YouTubeが打ち出した利用規約の更新は、本格的にメディアとしての領土を拡大するための取り組み。たとえて言うなら開発のための区画整理事業に相当するものだと思います。
放送を追い抜くまでに拡大したYouTubeが求めているものは良質なコンテンツです。
「責任あるグローバルプラットフォームにすることが最優先事項だ」 ユーチューブのアメリカ本社ナンバー2である、最高製品責任者(Chief Product Officer、CPO)のニール・モーハン氏
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例えば教育系のコンテンツのようなもの。爆発的な視聴は期待できなくても、長期間にわたって見続けられるようなコンテンツです。
こうしたコンテンツを提供できるのはプロフェッショナルです。YouTubeのチャンネルにはすでにそうした知識と見識を持った人が、わかりやすく内容を説明する動画が投稿され始めています。
まとめ
利用規約の更新であわてる人は、たぶんYouTubeの狙いがどこにあるかわかっているはずです。機転の利く人はもっと狭く深い世界に生きる道を築いていくはずです。これまで誰も気が付かなかった新ジャンルを見つけることで、新たな参入者にもチャンスは残されています。
大切なのは動画の目的を見失わないことだと思います。求められるのは誰かが必要とするテーマであり感謝されるコンテンツであることに変わりはありません。