「これからはショート動画が伸びるらしい」。そう聞いて、試してみた方も多いのではないでしょうか。
編集に3時間。テロップ(画面に出す文字)も入れて、BGMも選んで、ちょっとした効果音まで付けました。
ところが、見てくれた人は最初の一瞬で、指でスッと画面を上へ。次の動画に行ってしまいます。
「面白いのは、ここからなのに……」
そう思っても、再生回数はなかなか伸びません。
実はこれ、ショート動画を始めた人の多くがぶつかる壁です。
■ショート動画は「最初の一瞬」で選ばれている
ショート動画は、指で上にスワイプするだけで次々に切り替わります。見る人は、一本一本を「見るか、飛ばすか」をほんの一瞬で決めているわけです。
ですから、どんなに中身が面白くても、入口で「続きが気になる」と思ってもらえなければ、その面白さは届きません。
今回は、その入口をつくるための「4つの型」をご紹介します。
■「70%を切ったらアウト」は本当?
その前に、よく耳にする噂についてひとこと。
ショート動画のコツを調べると、「スワイプされずに見てもらえた割合が70%を下回ると、おすすめに出なくなる」「1000回再生の壁を越えられない」といった話をよく見かけます。
けれど、YouTubeの公式な説明には、こうした「ここを超えれば合格」という一律の数字は出てきません。「この数字を達成すれば10万回再生」という保証もありません。
公式に挙げられている判断材料には、たとえば次のようなものがあります。
・スワイプされずに見てもらえた割合
・平均して何秒見てもらえたか
・動画の何%まで見てもらえたか
・高評価の数や、視聴後のアンケートの結果
つまり、冒頭だけでなく、そのあとの中身もちゃんと見られているということです。
ひとつの数字だけで「失敗だ」と落ち込む前に、まずはこう問いかけてみてください。
「この動画、最初の1〜2秒で、何が見られるのか伝わっているかな?」
なお、この「1〜2秒」は、冒頭を見直すときの目安として私が使っている数字です。YouTubeが決めた制限時間ではありません。
■型① 失敗から始める 「それ、自分もやりそう」と思わせる
人は、得をする話と同じくらい、「損をしない話」「失敗しない話」にも耳を傾けます。その気持ちを入口にする方法です。
たとえば、説明から入るとこうなります。
「今日は、Vlog撮影で気をつけたいことを紹介します」
これを、実際に起きた出来事に置きかえてみます。
「旅行の動画、全部音が入っていませんでした」
……えっ、何があったの? と思いますよね。
このひと言に、マイクの設定画面や、音の出ない映像を重ねます。「自分もやってしまいそう」と感じた人は、つい続きを見たくなります。
ただし、実際には起きていない失敗を、体験談のように話すのはやめておきましょう。わざわざ失敗をつくる必要はありません。自分が本当に困ったことの中に、題材は必ずあります。
使える言い方:「〇〇したら、△△で困りました」
■型② 完成形から始める「どうやったの?」と思わせる
撮った順番どおりに見せる必要はありません。
「今日は朝から、机の片づけをしていこうと思います」
これでも内容は伝わります。でも、先に片づいた机を見せて、こう言ったらどうでしょう。
「この机、今朝までは物が置けませんでした」
すっきりした机の映像から、物に埋もれた数時間前の映像へ切り替えます。
見る人の頭には、「どうやってここまで片づけたの?」という疑問が自然にわいてきます。
すごい実績や大きな数字がなくても成り立つのが、この型のいいところです。
料理なら、切ったときの断面。手づくりの工作なら、完成品。旅行なら、その日いちばん心に残った景色。最後の場面を、最初に持ってきてみましょう。
使える言い方:「こうなりました。ここまでの道のりをお見せします」
■型③ 予想を裏切る 「えっ、逆じゃない?」と思わせる
思っていたのと違うことが起きると、人は理由を知りたくなります。
「今日は、Vlog用のカメラを比べてみます」
これを、比べてみてわかった意外な結果から始めてみます。
「高いカメラを買ったのに、使う回数が減りました」
画質には満足している。でも重くて、だんだん持ち歩かなくなった。こうした実体験なら、それだけで立派な題材になります。
大事なのは、後半でその理由をきちんと説明することです。「高いカメラはダメ」という話にまで広げる必要はありません。
「私の使い方だと、こうなった」。その具体的な話こそが、面白さになります。
使える言い方:「〇〇したのに、△△になりました」
■型④ 相手をしぼる 「あ、それ私のことだ」と思わせる
「皆さん」と広く呼びかけるかわりに、困っている場面をひとつにしぼります。
「動画編集をしている皆さんへ」
よりも、
「編集が終わるのが、いつも夜中になってしまう人へ」
のほうが、心当たりのある人にはぐっと届きやすくなります。
Vlogなら「一人旅で、自分が写った映像がほとんど残らない人へ」。機材の紹介なら「スマホの容量がいっぱいで、撮影が止まったことがある人へ」。
年齢や職業をあれこれ並べるより、ひとつの困りごとをピタリと言い当てるほうが、短い時間でも伝わります。
使える言い方:「〇〇で困っている人へ」
■4つの型をおさらい
・失敗から始める
見る人の気持ち:自分も失敗するかも?
例:旅行の動画、全部音が入っていませんでした
・完成形から始める
見る人の気持ち:どうやってこうなったの?
例:この机、今朝までは物が置けませんでした
・予想を裏切る
見る人の気持ち:なんでそうなったの?
例:高いカメラを買ったのに、使う回数が減りました
・相手をしぼる
見る人の気持ち:私の悩みが解決するかも?
例:編集が終わるのが、いつも夜中になってしまう人へ
※例文は説明のためのものです。ご自身の実際の出来事に合わせて書きかえてください。
この4つは、あくまで使いやすい「引き出し」です。伸びている動画がすべてこのどれかに当てはまるわけではありませんし、言葉を使わず映像だけで引きつける方法もあります。台本の横にメモしておいて、迷ったときに開く。そのくらいの気持ちで使ってみてください。
■30秒のVlogを組み立ててみよう
流れは「気になる場面 → いきさつ → 結果 → ひと言」。休日に机を片づけるVlogを例にすると、こんな構成になります。
0〜2秒
映像:片づいた机から、散らかった机へ切り替え
言葉:この机、今朝までは物が置けませんでした
2〜6秒
映像:コップやコードが積み重なった様子
言葉:作業するたびに、物をどかしていたんです
6〜20秒
映像:仕分け、コードの整理、途中のちょっとした失敗
言葉:まずは、毎日使う物だけ残してみます
20〜27秒
映像:片づいた机で作業している様子
言葉:やっと、ノートを広げられるようになりました
27〜30秒
映像:片づけ中に出てきた、同じコード3本
言葉:……これ、3本とも持ってたんですね
最後に、その人らしいちょっとした発見がある。それだけで、ただの片づけ術の説明ではなく、日常のひとこまを切り取った「物語」になります。
長いVlogの場合は、この冒頭を短い予告として使い、そのあとは会話やその場の音、寄り道をゆっくり楽しんでもらうのもいいと思います。最後まで大きな声で引っぱり続ける必要はありません。
■狸穴図書館のランキングショートでは、こう使っています
私が運営している「狸穴図書館」では、ミステリー小説をランキング形式で紹介するショート動画を作っています。10位から順に紹介して、最後に1位を発表する、いわゆるカウントダウン型です。
ランキング動画は、それ自体に「1位は何だろう?」という仕掛けがあります。答えを最後まで取っておくことで、自然と最後まで見てもらいやすくなる形です。
ところが、ここに落とし穴があります。
最初に「ミステリー小説ランキング10選!第10位は……」と始めると、見る人はまだ、このランキングが自分に関係あるのか分かりません。1位が気になる前に、スワイプされてしまうんです。
そこで、冒頭の1〜2秒にだけ、4つの型を使ってみます。
・失敗から始める
「この中の1冊、ネタバレを見てから読んで後悔しました」
・完成形から始める
1位の表紙をぼかして見せながら
「1位は、最後の1ページで全部ひっくり返ります」
・予想を裏切る
「いちばん怖かったのは、幽霊が出てこない1冊でした」
・相手をしぼる
「どんでん返しで、一度もだまされたことがない人へ」
どれも、そのあとのカウントダウンにつながる入口です。ランキングの仕掛けは本編に任せて、冒頭では「自分に関係ある話だ」と思ってもらうことに集中します。
約60秒のランキングショートなら、たとえばこんな流れです。
0〜2秒
映像:ぼかした1位の表紙
言葉:どんでん返しで、一度もだまされたことがない人へ
2〜5秒
映像:10冊の表紙が並ぶ
言葉:この10冊なら、きっとだまされます
5〜50秒
映像:10位から2位まで、表紙とひと言紹介をテンポよく
言葉:第10位、【作品名】。【ひと言紹介】
50〜58秒
映像:ぼかしが外れて、1位の表紙
言葉:そして第1位は、【作品名】
58〜60秒
映像:表紙のアップ
言葉:……最後の1ページは、絶対に先に見ないでください
冒頭で「だまされたことがない人へ」と呼びかけたなら、最後はその約束に答える。入口と出口がつながっていると、見終わったあとの満足感も変わってきます。
■まずは「最初のひと言」だけ書きかえてみよう
もし今、編集の途中なら、全部をつくり直さなくても大丈夫です。
冒頭のセリフだけを、4つの型でひとつずつ、計4案書いてみてください。そして、映像にいちばん自然につながるものを選びましょう。
選んだら、次の3つを確かめます。
1.最初の画面とひと言で、何の動画か伝わるか
2.冒頭で「気になる」と思わせたことに、本編でちゃんと答えているか
3.長い説明や、読みにくいテロップで入口を重くしていないか
投稿したあとは、YouTube Studio(YouTubeの管理画面)で「スワイプされずに見てもらえた割合」と「どこまで見てもらえたか」をあわせて確認してみてください。同じくらいの長さ・テーマの自分の動画と比べると、どこを直せばいいかが見えてきます。
あいさつを全部やめる必要はありません。ただ、ショート動画の始まりが「こんにちは、今日はですね……」なら、その先にある面白い場面を、一歩だけ前に出してみましょう。
せっかく撮ったその場面。スワイプされる前に、ちゃんと見てもらいたいですものね。







