白背景に白い被写体は怖くない: Affinity Photo切り抜き完全手順【保存版】

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 Affinity で白背景に白い被写体を切り抜く方法を書きます。

今日は「白背景の前にある白い被写体を、Affinity Photoでちゃんと切り抜く方法」を、初心者さんにもストレスなくできるようにガッツリ解説していきます。

これ、やったことある人はわかると思うんですが——白×白って地獄。境界が見えない。

髪の毛や布のフチが消える。気づけば“のっぺり幽霊”。

でもね、手順を分解して丁寧にやれば、ちゃんと立体と質感を保ったまま切り抜きできます。落ち着いていきましょう。

Affinity Photoで白×白を切り抜く!ブレンド範囲とチャンネルで“消えない輪郭”を作る方法

白×白の切り抜きには手数がかかります。初心者には知らない用語やツールも出てくるかもしれません。工程が多いので流れを先に頭に入れて下調べをしてから開始しましょう。

  1. 作業の土台づくり(露出とコントラストを“見える化”に振る)
  2. 粗選択は「選択ブラシ」+「スナップトゥエッジ」
  3. 決定打はRefine(境界調整)でフチを救う
  4. ブレンド範囲(Blend Ranges)で白背景だけを消す裏ワザ
  5. チャンネル法で“最強のマスク”を作る(白×白の最終兵器)
  6. マスクで微調整(にじみ、欠け、色かぶりを直す)
  7. 仕上げ:輪郭の質感を戻す小技(内側シャープ・逆フリンジ補正)

効果的なシーン例も最後にまとめます。

1) “見える化”の下ごしらえ

白と白の境界は見えないから難しい。まずは見えるようにする

  • 調整レイヤーカーブを追加。
    画面全体のコントラストを一時的に強める(S字)。白背景の微妙なムラが浮いてきたらOK。
  • 白レベルを少し下げる(ハイライトを抑える)と、被写体の白がわずかにグレー寄りになり、境界が見やすい。
    ※これらはあとでオフにします。目的は“輪郭の可視化”。

2) 粗選択:選択ブラシでザクっと囲う

  • Selection Brush Tool(W)を選択。上部のSnap to Edgesにチェック。
  • 被写体の内側を大きめブラシでススーッと塗る。はみ出たらAlt/Optionで減算。
  • 影まで切るか迷ったら、今は影も含めて選んでOK。はみ出した部分は後で切ればいいんです。のちほどマスクで整理します。

ここまでで“目分量の輪郭”が取れました。まだきっちり切り取れなくて大丈夫。甘くていい。

Selection Brush Tool(選択ブラシツール)は、Affinity Photoで選択範囲を“塗って作る”ための道具です。
つまり、「どこを編集したいか」をブラシ感覚で指定できるツールなんです。
マウスやペンタブでサッと塗ると、その部分を自動的に選択してくれます。
特徴的なのは、“Snap to Edges(エッジに吸着)”という機能。
これをONにすると、明るさや色の差をAI的に判定して、輪郭に沿ってピタッと選択してくれます。たとえば:
・人物だけを選んで背景をぼかす
・商品の形に沿って切り抜く
・空だけを選択して色を変える
みたいなときに大活躍。
要するに、「写真の中の必要な部分をハケでなぞるだけで選べる魔法のブラシ」です。

3) Refine(境界調整)でフチを救出

上部のRefineをクリック。別画面になります。

  • Viewは「黒地」や「白地」「オニオンスキン」を切り替えつつ確認。
  • Border Width:1〜3px程度。境界の“どっち側まで含めるか”の幅。
  • Smoothは0〜3でうっすら。Featherは0.5px前後。
  • Rampは±1〜2の範囲で微調整(境界を内外どちらに寄せるか)。
  • 髪の毛や布のフリンジ部分はRefineブラシでなぞる。毛先の微細な透けを拾ってくれます。
  • OutputNew Layer with Mask(新規レイヤー+マスク)を選んでOK。

ここで「おっ、境界が見える!」という手応えが出てるはず。ただ、白背景に溶けたハイライトは、まだ残ってます。次の一手へ。

4) ブレンド範囲(Blend Ranges)で白背景を飛ばす

Affinity Photoの強み。レイヤーのブレンド範囲で「この明るさは透明にする」を作れます。

  1. マスク付き被写体レイヤーを選択し、レイヤーパネル右上の歯車アイコン(Layer Effectsの隣)Blend Optionsを開く。
  2. Source Layer Ranges右側(ハイライト側)の三角を、右から左に少し引く。
    → 画面の純白に近い部分が薄く透ける
    ので、背景の白だけが消えやすくなる
  3. Alt/Optionを押しながら三角を割って、なだらかに(滑らかなトランジション)。
  4. 行き過ぎると被写体のハイライトまで飛ぶので、プレビューを見ながらほどほどに

この段階で、背景の白がかなり抜け、被写体の白は残る、という方向に寄ります。便利!

5) チャンネル法:白×白の最終兵器

どうしても境界が甘いときはチャンネルでマスクを“物理的に”作る。

  1. Channelsパネルを開く(表示 > スタジオ > チャンネル)。
  2. 各チャンネル(Red/Green/Blue)を順番に表示して、被写体と背景のコントラスト差が一番出るチャンネルを探す。
    例:白陶器ならBlueで模様が浮くことが多い、白布ならRedが効く…など被写体次第。
  3. 見つけたらそのチャンネルを右クリック→Create Spare Channel(予備チャンネル作成)。
  4. そのSpare Channelをダブルクリックで開き、Levels/Curves白背景は白、被写体の輪郭はグレー〜黒になるよう追い込む。
  5. 完了したらSpare Channelを右クリック→Load to Pixel Selection(選択範囲として読み込み)。
  6. 被写体レイヤーのマスクに戻って、**選択を反転(Ctrl/Cmd + Shift + I)**し、白で塗りつぶし

背景は透過、被写体は残る。このマスクがいちばん“芯が強い”です。Refineの結果にチャンネルマスクを合成するイメージ。

6) マスク仕上げ:にじみ・欠け・色かぶりをケア

  • ブラシ(B)でマスクを手塗り。硬さは40〜70%、不透明度20〜50%で少しずつ。
  • 白背景の色かぶり(白のにごりや青み)が出たら、被写体レイヤーの上に調整レイヤー > HSLまたはカラーバランスを作ってクリッピング(被写体のみに適用)。青やシアンを少し下げると馴染みます。
  • 裁ち落としっぽく見えるところは選択 > ぼかし境界(Feather)1〜2px相当を手塗りで。
  • “影は残すか?”問題:プロダクトなら薄く残すと置かれているリアル感が出る。影レイヤーを別途作るなら、コピーした被写体を黒で塗りつぶし→ガウスぼかし→不透明度10〜20%で床にうっすら

7) 輪郭の質感を戻す:内側シャープ&逆フリンジ

切り抜き後は輪郭が柔らかくなりがち。やり過ぎ注意で復元。

  • 被写体レイヤーにUnsharp Mask(ライブフィルター)をクリッピング。
    Radius 0.6〜1.2 / Factor 0.3〜0.6 / Threshold 2〜4くらいで“内側だけ”微シャープ
  • 逆に白いフリンジ(白フチ)が出たら、
    1. マスクを選択→Select > Grow/Shrinkで-1px縮小、
    2. もしくはレイヤー > 新規レイヤー効果 > 外側シャドウを極薄グレー/サイズ1〜2px/不透明度5〜10%にして“なじませ”てもOK(ケースバイケース)。

シーン別・具体的プリセット(ここ効く)

A. 白Tシャツの人物を白ホリから切り抜き(髪あり)

  • 下ごしらえ:カーブS字強め、白レベル少し下げる
  • 粗選択:選択ブラシ(Snap to Edges ON)
  • Refine:Border 2px / Feather 0.6 / Ramp +1、髪はRefineブラシで丁寧に
  • ブレンド範囲:ハイライト側を10〜20%だけカット、Altで分割
  • チャンネル:BlueでSpare作成→Levelsで白背景を飛ばし、毛先を残すよう調整
  • 仕上げ:USM Radius 0.8 / Factor 0.4、白フチが出たらマスクを-1px縮小

白ホリ(しろホリ)っていうのは、撮影スタジオでよく使われる専門用語で、
正式には 「白ホリゾント(White Horizon)」 の略です。簡単に言うと——背景も床もまっ白で、どこまでが壁でどこからが床かわからない、
“無限に白が続いているように見える背景セット” のことです。
📸 よくあるシーンで言うと、
・ファッションモデルの全身撮影
・商品の物撮り(カメラや靴、家電とか)
・ミュージックビデオでアーティストが真っ白な空間に立ってる
みたいな、「どこにも影が落ちない・スッキリした白背景」の撮影空間がそれです。
「白ホリで撮る=背景をあとで自由に合成したり、切り抜いたりしやすい」という意味でも、デザインや映像業界ではめちゃくちゃ重宝されるんですよ。でも、白ホリって実際には「完全な白」じゃなくて、照明の当て方で微妙なグラデーションが出るんです。
だからこそ、白い服や白い被写体を撮るときに境界が溶けちゃう——という、あの“白×白問題”が起きるんですね。

B. 白磁のカップを白背景から切り抜き(プロダクト)

  • 下ごしらえ:カーブで反射のムラを見える化
  • Refineは控えめ。チャンネル法(Green or Blue)メインでマスク作成
  • ブレンド範囲で白背景をさらに透過→カップのハイライトは残す
  • 仕上げ:内側シャドウで底部に1%の接地感、床影は別レイヤーでガウスぼかし

C. レースのウェディングドレス(超絶むずい)

  • 下ごしらえ:白レベルを大胆に下げ、レース柄を視認
  • Refineのマット(Matte)を弱く使いながら、レースの穴抜けを拾う
  • どうしても白飛びする部分はチャンネル+部分手塗りで救出
  • 最後にカラーかぶりをHSLで弱く補正(白が灰色化したら彩度-5%/明度+2)

失敗あるある & リカバリ

  • 境界がギザギザ:RefineのSmoothを+1〜+3、またはマスクにガウスぼかし0.5pxをほんの少し。
  • のっぺり幽霊化:被写体内側にClarity +5〜+10(調整レイヤーをクリッピング)で微コントラスト。
  • 白フチ(ハロー):マスク縮小-1px→輪郭に乗算の薄グレー1〜2pxでなじませ。
  • 背景が完全に抜けない:ブレンド範囲のハイライトスライダーをもう1〜2%だけ追い込む。Altで分割、なだらかに。
  • 時間が溶ける:迷ったらチャンネル法一本化。精度が高く、修正も効きやすい。

仕上げのエクスポート(Web想定)

  • PNG-24(透過)で書き出し。
  • Web表示サイズにリサイズ(長辺2000px程度)してからUSMを微調整すると“輪郭の芯”がきれい。
  • sRGBプロファイルを埋め込むのを忘れずに。

まとめ(気持ちの話)

白×白は“見えない敵”との戦い。だけど、

  1. 見える化(一時的なコントラスト)
  2. Refineで拾う
  3. ブレンド範囲で白を飛ばす
  4. チャンネルで決める
    この4枚刃で、ちゃんと勝てます。手塗りの地味な作業もあるけど、フチがスッと立った瞬間の快感はクセになる。大丈夫、あなたの被写体はちゃんとそこにいる。引っ張り出してあげましょう。