Affinity Photoで強い色かぶりを直す!WB→カーブ→HSLの分業レシピ【保存版】

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 Affinity Photoで“強い色かぶり”を直す方法を書きます。

オレンジ照明で真っ黄っ黄、蛍光灯で顔がゾンビグリーン、海の中みたいに青…あるあるだよねぇ。撮影現場では“仕方ない”ことも多い。でも編集で気持ちよく自然な色に引き戻せます。

今日はね、「Affinity Photoで“強い色かぶり”を直す方法」を、初心者さんにもわかりやすく、でもガッツリ実務目線で解説します。

Affinity Photoで“強い色かぶり”を直す方法

“強い色かぶり”の補正は手数がかかります。初心者には知らない用語やツールも出てきます。工程が多いので流れを先に頭に入れて下調べをしてから開始しましょう。

  1. まずは“診断”──ヒストグラム&スポイトで何色に転んでるか掴む
  2. RAWならDevelop Personaで白バランス(WB)から立て直す
  3. Photo Personaでグレーポイント法(カーブの中間点)
  4. HSL/カラーバランス/選択カラーで二次補正(肌・背景を別々に)
  5. マスクで部分適用──混在光のときは“分けて直す”
  6. LUT/トーンで“雰囲気は残しつつ正す”仕上げ術
  7. バッチ・プリセット化で時短

「強い色かぶり」を“ねじ伏せる”というより、不自然さだけ抜いて空気感は残すのがプロっぽい仕上げです。

1) まずは“診断”:どっちに転んでる

  • 画面右のHistogramInfoを表示(表示 > スタジオ)。
  • スポイト(I)で“本来ニュートラルな場所”(白い壁、グレーの机、黒いシャドウ)をつつく。
    • たとえばR=240 / G=220 / B=210 みたいにRが強い暖色(黄〜赤)に転び
    • R<G<B の並びが続く→青寄り…など、おおよそ当たりがつく。
      この「どっちに転んでる?」の把握が、後の調整を迷子にしない鍵です。

どっちに転んでる?」というのは、
写真の色のバランス(ホワイトバランス)や色被りの方向を確認する、いわば“色の偏りチェック”のことです。たとえば──
全体が黄色っぽい・オレンジっぽい → 「暖色側(赤・黄)に転んでる
青白く冷たい印象 → 「寒色側(青)に転んでる
顔や壁が少し緑がかってる → 「グリーンに転んでる
ピンクやマゼンタっぽく見える → 「赤紫方向に転んでる
つまり、「色がどの方向にズレているか(=転んでいるか)」を見極める、という意味なんです。写真編集ではまずこの“転び”を見つけないと、
「どの色をどれだけ引き算・足し算すれば自然に戻るか」がわからない。なので、最初のステップとして「この写真、どっちに転んでる?」=「今どの色に偏ってる?」
と診断するわけです。イメージ的には、“色の天秤がどちらに傾いてるかを見ている”感じですね。

2) RAWならDevelop Personaで“根本治療”(白バランス)

RAWの人はDevelop Personaから。JPEGでも後段で直せるけど、まずは白バランス(WB)が強い。

  • 右側のWhite BalanceでTemperature(色温度)Tint(色かぶり)を調整。
  • スポイト(WB Eyedropper)で“グレーに近いもの”をクリックすると、一発でニュートラルに近づく。
  • それでも強いときは、Tintでマゼンタ↔グリーン方向を微調整。
  • 仕上げにExposure / Highlights / Shadowsを軽く整え、Develop

※ここで「完璧に真っ白」にしなくてOK。大ズレを真ん中へ戻すイメージです。

3) Photo Personaで“グレーポイント法”──カーブのピッカーが神

WBを当てても残る“クセ色”は、Curves(カーブ)の中間灰色スポイトが効く。

  1. 調整レイヤー > カーブを追加。
  2. パネル上部の灰色スポイトを選択して、画像内の中間調(コンクリ・グレー布・白黒の中間っぽい部分)をクリック。
  3. これでRGB別の曲線が自動で動き、ニュートラルへ寄ります。
  4. 調整が強すぎたら不透明度を70〜90%に落として馴染ませる。

“ニュートラルになりすぎて雰囲気が死ぬ”ときは、描画モードを“カラー”に変えると色のみ補正できてトーンが崩れにくい。これ、地味に効く小ワザ。

4) 二次補正:HSL・カラーバランス・選択カラーで“狙い撃ち”

全体が整ったら、気になる色域だけを抜き取り補正。

A) 肌色の救出(ゾンビ対策)

  • 調整 > HSL
    • レッド/オレンジを選び、色相をわずかに赤寄り彩度+5〜+15輝度+2〜+6
    • 範囲スライダーで肌の色域をピンポイントに。
  • 仕上げに調整 > カラーバランス
    • 中間調グリーンを-2〜-8、ブルーを-2〜-6など、顔色が“血の通った色”に戻るポイントを探す。
    • ハイライトは**イエロー+/ブルー-**で健康的に、シャドウは少しだけシアン/ブルー寄せで締まりを。

B) 背景の色被りだけ消したい

  • 選択ブラシクイック選択で背景を取って、HSLで該当色(グリーンやブルー)を彩度-10〜-40
  • あるいは選択カラー(Selective Color)でホワイト/ニュートラル/ブラックの各スライダーを触り、“白/灰/黒に残る色成分”を微調整。
    • 例:ホワイトのシアン-、イエロー-で白を純化、ニュートラルのマゼンタ-で赤み抜き…など。

HSL調整とは、
H = Hue(ヒュー)=色相(何色に見えるか:赤をオレンジ寄りにしたり、青をシアン寄りにしたりして調整します)
S = Saturation(サチュレーション)=彩度
L = Lightness(ライトネス)=輝度(明るさ)
この3つをそれぞれ調整して、
「色味の方向・鮮やかさ・明るさ」をコントロールするのがHSL調整です。つまり──
色の性格を作り替えるパネル、と思ってOKです。

5) 混在光は“分けて直す”が正義(マスク運用)

室内の白熱灯+窓からの青光、看板LED+街灯…混在光は一括補正が地獄。「あちらを直せばこちらが変」というイタチごっこが続きます。

正しい治し方は、手間はかかりますが、いったん三原色に分類して一つずつ修正することです。

ここはレイヤーを複製&マスクゾーンごとに補正しましょう。

  1. レイヤーを複製(Ctrl/Cmd+J)。上レイヤーにHSL/カラーバランスで“窓側の青被り”を直す。
  2. そのレイヤーに黒マスク白ブラシで“窓側”だけ塗る。
  3. もう一枚は“暖色エリア”用に別調整→逆マスクで塗り分け。
  4. ブラシは硬さ30〜60 / 不透明度20〜50%で境界をなじませる。

部分補正=現場の光を尊重できる。これが“自然に見える”近道。

6) 雰囲気は殺さない:LUT&トーンの活かし方

すべてを真っ白・真ニュートラルにすると、写真の“空気”が消えることも。
ここで少し戻すのがセンス。

  • 調整 > Apply LUT微暖色系LUTを不透明度20〜40%だけ。
  • カラーの調整レイヤーをグループ化し、グループ不透明度で“ちょうどよいところ”に着地。
  • トーンカーブ全体コントラストを1タッチ(軽いS字)。色が締まって見える。
  • 背景に軽いビネット(ライブフィルター)を-0.1〜-0.2EV。当たってほしい被写体に視線を誘導。

時短技:プリセット&バッチ

  • HSL・カラーバランス・カーブの組み合わせをプリセット登録しておくと次回からワンボタン。
  • 同条件の写真が大量にあるなら、ファイル > 新規バッチジョブで一括適用(レシピはマクロに録っておくと便利)。

シーン別・具体例(ここ効く!)

例A:居酒屋の天井照明で真っ黄っ黄(オレンジ/黄被り)

  1. DevelopでTempを青側/Tintをマゼンタ側へ少し戻す
  2. カーブの灰スポイトでグレー皿や壁をクリック
  3. HSLでイエローの彩度-10、色相をわずかに緑側に倒して黄ばみ中和
  4. 肌はオレンジ彩度+8/輝度+4で血色プラス
    「温かさ」は残して「黄ばみ」だけ抜くのがコツ

例B:蛍光灯で顔がグリーン(学校・オフィス)

  1. DevelopでTintをマゼンタ方向+5〜+15
  2. Photoでカラーバランス(中間調)グリーン-5〜-12
  3. 肌だけHSLで赤/橙 彩度+5〜+10緑 彩度-5〜-15
    → 目の白目&歯が青緑化しがちなので、選択カラー(ホワイト)でシアン-、イエロー+少しで健康的に

例C:海や青空の下で人が青い(青被り)

  1. DevelopでTempを暖色側へTintを少しマゼンタへ
  2. カーブ灰スポイト→中立化
  3. HSLで青/シアンの彩度-10〜-25背景だけに(マスク)
  4. 肌はオレンジ輝度+でふっくら、シャドウに赤+少し(カラーバランス)
    → 背景の空は彩度を少し返す
    と“旅の気持ちよさ”が戻る

例D:ネオン街やステージ照明(色かぶりは“作品”)

  1. 全体はカーブ灰スポイトで極端な転びを中和
  2. ネオン色自体はLUT 20〜30%で雰囲気を統一
  3. 肌だけHSL/マスクで自然寄せ
    空気は残す、肌は守る。これで“作品の色”と“人の色”が共存

失敗あるある&レスキュー

  • 肌が紙粘土みたいに白い:HSLのオレンジ輝度上げすぎ。彩度を少し戻すか輝度-2。
  • グレーが紫っぽい/緑っぽい:カーブ灰スポイトの打ち所が悪い。別の“中間調”で再指定。
  • 全体が眠い:色補正でコントラストが落ちがち。トーンカーブS字か、“カラー”モード適用でトーンを守る。
  • バラつく:混在光はゾーンごとマスクが正解。全体一括でいじらない。
  • 色むらが出る:HSLの範囲スライダーを狭めて、必要な色域だけ触る。

仕上げと書き出し

  • Web用:sRGB埋め込み、長辺2000px、JPG品質85〜90。
  • 印刷用:色補正後にソフトプルーフ(印刷プロファイル)で過飽和をチェック。
  • 連番処理はバッチジョブ+マクロで一括。

まとめ(気持ちの話)

色かぶりは、現場の空気が写り込んだ証拠
ぜんぶ消すんじゃなくて、不自然だけ取り除く

白バランス(WB)で大ズレを戻す → カーブ灰スポイトで中立 → HSL/カラーバランスで狙い撃ち → 必要ならマスクで分ける」。

この流れを覚えれば、どんな強い色かぶりも“なかったこと”じゃなく“気持ちいい写真”に変えられます。今日もいい編集でした!