今日は「Affinity Photoでブラシツールの使い方&使い道」を、初心者さんでも“すぐ触って気持ちよく仕上がる”レベルまで、一気に連れていきます。
ブラシはね、ただ“塗る道具”じゃない。
選択、マスク、レタッチ、光の演出、質感作…ぜんぶの入口。動画編集で言えば“カット&テロップ”くらい、出番が多い最重要ツールです。
さぁ、筆を持とう。
Affinity Photoのブラシ&マスク最速ワークフロー
まずは基礎:ブラシツールの“核心”だけ
- Paint Brush Tool(B):色を“描く”基本の筆。
- Erase Brush Tool:ピクセルを消す/マスクでは“黒を塗る”のと同義。
- Smudge Brush:既存の色をこすって混ぜる。
- Paint Mixer Brush:色をブレンドして“絵の具っぽく”混色。
- Clone/Healing系:コピーや修復用の“特殊な筆”(今日は主役から一歩引くけど、要は“塗って直す”仲間)。
覚えるべき操作は4つだけ。
- サイズ…細かい所は小さく、面は大きく。
- 硬さ(Hardness)…固い→クッキリ/柔らかい→ふんわり境界。
- 不透明度(Opacity)…一筆の“濃さ”。
- 流量(Flow)…一筆の中でのインク量。弱くすれば“何度も重ね塗り”が自然に。
コツ:Opacity 100 / Flow 10〜30で“にじむように乗せる”と仕上がりが上品。
タブレットなら筆圧をFlowやサイズに割り当てると、もう一段うまくなる。
使い方①:マスクに塗る(“破壊しない編集”の門)
ブラシは“色を塗る”より**“マスクに塗る”**のが本番。
- レイヤーにマスクを追加(レイヤーパネルのマスクアイコン)。
- マスクを選択し、白で塗る=見せる/黒で塗る=隠す。
- グレーで塗れば半透明。柔らかい筆+低Flowでエッジが自然。
例:人物だけ明るくしたい
- カーブ調整で+0.3EV上げる。
- 調整レイヤーに黒マスク。
- 白ブラシ(柔らかめ/Flow 20)で顔や手だけ塗る。
→ “どこを見せたいか”を絵を描くように指定できる。これが最強。
使い方②:選択を整える(Refineの後は“手で仕上げる”)
自動選択やRefineだけでは毛先・布端・ガラスが甘いことが多い。
ブラシでマスクを微修正すれば、仕上がりが一段プロっぽくなる。
- 硬さ 40〜70 / Flow 15〜30で少しずつ。
- エッジは“カッターのように切る”より、“紙ヤスリで面取り”の感覚。
- 白フチ(ハロー)が出たら、内側に向かって黒で1〜2px分スッと撫でる。
使い方③:光を描く(ドッジ&バーンの筆)
写真の立体感は光と影。
調整は“数値で動かす”だけじゃもったいない。筆で描くと別物になります。
ドッジ&バーン(非破壊)
- 新規レイヤー → 50%グレーで塗りつぶし → 描画モードOverlay。
- 白で光/黒で影をFlow 5〜15でゆっくり重ねる。
- ハイライトは細筆、影は大筆。
→ 頬の丸み、鼻筋、髪のツヤ、プロダクトのエッジ…立体が生きる。
※初心者はソフトブラシ×低Flow“だけ”でOK。やり過ぎたらレイヤー不透明度で戻せる。
使い方④:色を“置く”(カラーグレーディングの筆)
カラーの調整レイヤーを“カラー描画で使う”のが便利。
- 新規レイヤー → 描画モードColor → 肌に赤み/背景に青みなどを、低Flowで筆塗り。
- もしくはGradient MapやSolid Color + マスクで、空だけ色を足す/地面だけ温度を下げる。
- スプラッシュ的に色を配置して、全体の空気をコントロール。
「数値で全体をいじる→局所で筆補正」この二段構えが、“自然で強い色”に着地します。
使い方⑤:ビネット・ボケを“塗る”
- 周辺減光はフィルターでも作れるけど、ブラシで塗ると形が自由。
- 新規レイヤー(Multiply)に黒をFlow 5〜10で“ぐるっと”描く。
- 主役の周囲は薄めに残して視線誘導。
- レイヤーマスクを使えば、ビネットの形をあとで整えられる。
被写界深度っぽい擬似ボケも、レイヤーを複製→ガウスぼかし→マスクに黒白で塗るで実現。
前ボケは柔らかい白や暖色を筆で置くと映画みたいになる。楽しい。
使い方⑥:質感レタッチ(テカリ・小キズ・粉感)
- テカリ抑え:新規レイヤー(Color)で肌色を拾い、Flow 5でテカる部分だけ**“薄化粧”**。
- 粉吹き・白いほこり:クローン/ヒーリングが基本だけど、最後の微調整は色を拾って軽く塗る。
- 布のケバ:Smudgeで1〜2pxをそっと撫でる。やりすぎ注意。
ブラシ設定:これだけ覚えればOK
- 硬さ:切り抜きのエッジ、文字の縁→硬め/肌・空・光→柔らかめ。
- Spacing:小さめ(密)だと滑らか、筆運びが点々になったら上げすぎ。
- Stabilizer(手ブレ補正):線を綺麗に引きたいときオン。
- Dynamics:筆圧でサイズ/Flowを連動。繊細さが段違い。
- ブラシプリセット:よく使う硬さ・Flow・モードを保存。現場は速さが正義。
ブレンディングモードの“推し”
- Normal:基本。
- Multiply:影を描く、色を濃く。
- Screen/Overlay/Soft Light:柔らかく光を足す。
- Color:色だけ載せたいときの神モード。
- Luminosity:明るさだけ塗りたい上級技。
「何が正解?」じゃなくて、“塗って気持ちいい”モードを体に覚えさせるのが近道。
ステップ別チュートリアル(3本)
1) “人物だけ明るく、肌はつるん”仕上げ
- カーブ調整+(全体が明るくなる)
- 調整に黒マスク → **白ブラシ(柔/Flow20)**で顔・手だけ塗る
- 新規レイヤー(Color)で肌色を拾い、小鼻や頬の赤みをFlow10で薄くなでる
- 仕上げにドッジ&バーンで目元・髪に立体プラス
→ “塗って選ぶ→塗って整える→塗って立体”の三段ロケット。
2) “空だけ濃い青・地面はそのまま”
- HSLでブルーの彩度+、輝度−
- HSLに黒マスク
- 白ブラシ(大/柔)で“空だけ”を塗る
- 雲の輪郭は筆を小さくしてFlow 10でなじませ
→ 自然で“映える空”はマスクの筆圧に宿る。
3) “商品写真の影を足して接地感”
- 被写体レイヤーの下に新規レイヤー(Multiply)
- 柔らか筆×黒×Flow 5で、接地面に楕円の影を薄〜く
- 物の真下だけもう一度重ね塗りして芯を作る
- 不透明度で微調整
→ たった30秒で“浮いて見える”が解消。ECのクオリティが一段上がる。
実戦シーンでの“効く設定”
A. ポートレート(肌・髪)
- 肌:硬さ20〜40 / Flow 10〜20
- 髪のハイライト:細筆 / Overlay / Flow 8で一本ずつ“光を拾う”
- 眉毛の乱れ:Eraseを細筆 / Flow 20で端だけ整える
B. 物撮り(質感・影)
- エッジ強調はSoft Lightに白でスッ…
- 影はMultiply×黒 / Flow 5で何度も重ねる
- ホコリはHealing→最後の色ムラをColor筆で均す
C. 風景(空・手前ボケ)
- 空:HSL+マスクを大筆で
- 前ボケ:暖色の円形を柔筆でふんわり。ガウスぼかしを少し足すと映画。
失敗あるある → こう直す
- 塗りムラがバレる:Flowを下げる(10前後)。一気に塗らず重ねる。
- エッジが汚い:硬さを上げる or エッジだけ別レイヤーに塗る。
- やり過ぎた:そのレイヤーの不透明度で戻す。消しゴムではなくマスクで戻すのが基本。
- 色が濁った:色を置く時はColorモード。輝度が崩れない。
- 進みが遅い:よく使う“柔筆/硬筆/光/影”をプリセット保存。時短は正義。
まとめ
ブラシは“数字で作る”から“手で仕上げる”へ切り替えるスイッチ。
うまくいかない日は、Flowを下げて、音楽でもかけて、深呼吸。
“塗った分だけ良くなる”のがブラシ編集のいいところ。
失敗してもレイヤー不透明度で救える。
安心して手を動かそう。













こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 Affinity でブラシツールの使い方&使い道を書きます。