今日はAffinity Photoの「オブジェクト選択ツールの使い方」を、初心者さんでも“今日から手が迷わない”レベルまで一気に解説します。
切り抜きや部分補正の入口は、いつだっ正確な選択。ここをサクッと決められると、編集がいきなり楽しくなる。じゃ、いきましょう。
Affinity Photoのオブジェクト選択ツール完全ガイド
この記事でやること(全体像)
- オブジェクト選択ツールの基礎(どこにある?何ができる?)
- 3つの選び方:ドラッグ一発/なげなわ補助/加算・減算の微調整
- Refine(境界調整)で“フチを救う”
- 被写体だけ明るく・色だけ変える——選択を活かす実践
- うまくいかない時のレスキュー(白×白、髪、ガラス)
- シーン別レシピ(人物/商品/風景)
- 作業を速くする小ワザ(ショートカット&思考法)
どこにある?
ツールバーの選択系ツールのグループに入っています(四角い点線アイコン付近)。
名称はObject Selection Tool(オブジェクト選択)。
似た名前でSelection Brush(選択ブラシ)やFlood Selectもあるけど、今日は“範囲を囲むだけで被写体を推定して選んでくれる”お利口さんが主役。
何ができる?
- ドラッグでザッと囲むと、AIが被写体の輪郭を推定して選択
- さらにドラッグで足し算(加算)/Alt/Optionで引き算(減算)
- Snap to edgesが効いて、背景と被写体の境目に吸着
- 選んだ後にRefineで細かいフチ(髪・布)まで拾える
ポイント:完璧を最初から狙わない。まずは「80点を一瞬で」、その後Refineとマスクで100点に寄せます。
3つの選び方
① ドラッグ一発(長方形で囲う)
- オブジェクト選択ツールを選ぶ。
- 被写体全体が入るように長方形でドラッグ。
- ツールが境界を推定して、だいたいの形で選択してくれます。
使いどころ:人物、商品、コントラストがそれなりにある物体。
② なげなわ補助(自由な形で囲う)
- コンテキストバーのモードを「なげなわ(自由選択)」に。
- 被写体の近くをざっくりなぞると、やっぱりAIが境界に吸着。
使いどころ:形がいびつ/長方形だとはみ出しやすい場合。
③ 足し算・引き算で仕上げる
- Shift=加算、Alt/Option=減算。
- 迷ったら小さめブラシでちょい足し/ちょい引きを繰り返す。
- 画面上の「スナップ(Snap to edges)」ONで境界沿いにピタッ。
コツ:拡大100〜150%でエッジ確認。Flow低めの選択ブラシを併用すると失敗が少ない。
Refine(境界調整)で“フチを救う”
選択後、上部のRefineをクリック。別画面で微調整します。
- View:黒地・白地・オニオンスキンを切り替えて確認
- Border Width:1〜3px(拾いたい境界の“幅”)
- Smooth:0〜3でギザ減らし
- Feather:0.3〜0.8pxで“紙ヤスリ的になじませ”
- Ramp:±1〜2で境界を内外へ微移動
- Refineブラシ:髪・ファー・レースなど細かい透けをなぞって拾う
- Output:New Layer with Mask(新規レイヤー+マスク)が鉄板
やりすぎ注意:ハロ(白フチ)が出たらFeatherを下げる/Rampを内側へ。最小限の処方で。
選択の“使い道”が本番
被写体だけ明るく・色だけ変える
- 選択が生きているうちに調整レイヤー(カーブ/露出/HSL)を追加
→ 自動で選択がマスクに。被写体だけに効く! - 色だけ変えたい時は調整レイヤーの描画モード=Colorに。トーン崩れにくい。
背景だけぼかす・暗くする
- 選択を反転(Ctrl/Cmd+Shift+I)して背景側へ適用
- **ライブフィルター > ぼかし(ガウス/レンズ)**で背景を少しだけ
- Vignetteで-0.1〜-0.2EV、視線誘導が一気に洗練
切り抜き・合成の土台に
- Copy(Ctrl/Cmd+C)→Paste(V)で別ドキュメントへ
- Export PNG(透過)でサムネやEC画像の素材にも
うまくいかない時のレスキュー
白背景に白い服(白×白)
- 一時的にカーブでS字強め→境界を“見える化”
- オブジェクト選択→Refine
- それでも甘い場合、レイヤーのBlend Rangesでハイライト側を軽く削って白背景だけ透過寄りに
髪の毛・ファー
- 選択→RefineでRefineブラシを毛先に優しく
- Featherは0.3〜0.6px、Rampを+1で内側寄せ→フチが浮きにくい
- 仕上げにマスクを1px縮小(Select > Grow/Shrink)でハロ隠し
ガラス・半透明
- オブジェクト選択→Refineのマット(Matte)弱め
- 出力をマスク付きレイヤーにして、マスクのグレーを筆で調整(半透明を残す)
シーン別レシピ(ここ効く!)
A. 人物ポートレート(背景ぼかし)
- オブジェクト選択ツールで人物をドラッグ一発
- Refine:Border 2px / Feather 0.5 / Ramp +1、髪はRefineブラシ
- 反転して背景へレンズぼかし(半径3〜8)
- Vignette -0.15EV、Color Balanceで背景を寒色寄り→主役が前に出る
B. EC商品(白ホリで切り抜き)
- 商品をドラッグ選択→Refine弱め
- Blend Rangesでハイライト側を少しカット(Altで分割)
- PNG透過出力、影は別レイヤーでMultiply黒×ガウスの疑似影を薄く
C. 風景で“空だけ差し替え”
- オブジェクト選択で空を囲む(雲のエッジはRefine)
- 空レイヤーにHSLで青だけ彩度+輝度−、または別の空を下に配置
- 地平付近はグラデーションマスクで馴染ませる
速く・キレイに仕上げる小ワザ
- Shift=加算/Alt=減算は“無意識で押せる”まで練習
- 100%拡大でエッジ確認→50%に戻して全体の自然さを再確認
- Refineは最小限:まずBorder 1〜2px、Feather 0.3〜0.6pxから
- 選択が崩れたらSelect > Smooth(1〜2px)で角を丸める
- 仕上げにマスクへUSM(ライブフィルター)微量でエッジの芯を戻す(Radius 0.6 / Amount 0.3)
ミニチュートリアル(5分で“おっ”となる)
① 被写体だけ露出+色温度↑
- オブジェクト選択→被写体を一発選択
- 露出 +0.2EV/HSLでオレンジ輝度+5
- 描画モードColorならトーン崩れにくい
② ロゴ入りTシャツのロゴだけ色替え
- オブジェクト選択でロゴ付近をなげなわ→加算で足していく
- **HSL(対象色)**の色相を回す→彩度+でポップに
- はみ出しはAltで減算、最後はマスク筆で手仕上げ
③ 背景の人だけ消す(擬似的)
- オブジェクト選択で後ろの通行人をサクッと選択
- 塗りつぶし(内容に応じて)またはぼかし+暗くで目立たなく
- 細部はクローンで整える(選択があると事故りにくい)
失敗あるある → こう直す
- フチがギザギザ:RefineのSmooth +1〜2。またはSmooth Selection
- 白フチが出る:Ramp +1で内側寄せ→マスク縮小 -1px
- 選択が暴れる:Snap to edges ON、なげなわで囲い直す
- 被写体の一部が欠ける:Shift加算で“欠けた所だけ”小さく塗り足す
- 時間が溶ける:80点でRefine→マスク筆で5分仕上げ。完璧主義は沼!
まとめ(気持ちの話)
オブジェクト選択ツールは「迷いを飛ばす」最初の一手。
ドラッグ一発で80点、Refineとマスクで100点。
“選ぶのが速い人=仕上がりも安定”です。
最初はうまくいかなくても大丈夫。手が覚えるまで3本編集すれば、もう戻れない快適さになります。今日も良い選択を!













こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 Affinity Photoのオブジェクト選択ツール完全ガイドを書きます。