動画制作者がMVを作ろうと思った時、必ずぶつかるのがミュージシャンの世界の仁義とルールです。
「この曲みたいな雰囲気のオリジナルが、自分でも作れたらなぁ…」
Sunoを触り始めると、絶対一回はこう思うんですよね。
でもここでそのまんま真似しちゃうと、「パクリ現行犯認定」で、普通にアウト寄りです。
特定の曲や歌詞に「似すぎる」と、権利的にグレーどころか真っ黒に近づいていきますし、実際にSunoは訴訟の真っ只中だったりもします。(RIAA)
だからこの記事では、
好きな曲の“いいところ”だけを抜き出して、
Sunoでオリジナル曲に昇華するための、超・実践的なやり方
を注意深く解説していきます。
0. Suno で「似た曲」を作るときの前提
まずは、サクッと前提整理。
Sunoの今どきの機能ざっくり
- テキストプロンプトだけで、高品質な曲を生成
- v5世代では最大8分・高音質・複雑なアレンジにも対応(CometAPI)
- 作曲については、Upload Audio(Audio Inputs / Sample to Song)で
自分の音声やフレーズをアップして、そこから曲を伸ばせる機能がある(Sunoヘルプ) - ボーカルについては、Personasで、自分好みの声やサウンドの「キャラ」を保存して、別の曲にも適用できる(Suno)
著作権まわりのざっくり常識
- 無料プラン:基本的にSuno側が楽曲の権利を持ち、非商用利用のみ可(Sunoヘルプ)
- 有料(Pro / Premier)プラン:Sunoが保有する権利を、あなたに譲渡する仕組みが用意されている(ただし「必ず著作権が発生する」とまでは保証していない)(Suno)
- 一方で、Sunoは「学習に著作物を使っているだろう」として、大手レーベルから訴えられている真っ最中。AIと著作権をめぐる裁判は世界各地で進行している状況です。(RIAA)
なので、
「○○のこの曲をそっくり作って」とか
「△△の歌詞を真似して」
みたいな指示は、権利的にも倫理的にもかなり危険ゾーンです。

くれぐれも不用意に原曲や歌詞をアップロードしないように!!
1. ステップ1:元曲を「分解」してメモする
ここから実践。
まずやることは、
元曲を“そのまんまコピーする”のではなく、“要素に分解して理解する”こと。
チェックしたいポイント
再生しながら、ざっくりでいいのでメモります:
- テンポ感
- 速い?ゆっくり?
- だいたいBPM何くらい?(ノリで「ゆったり」「中くらい」「速い」でもOK)
- リズム・ノリ
- 4つ打ち?
- スイングしてる?
- ドラムはどっしり?軽め?
- 楽器構成
- メインはギター?ピアノ?シンセ?
- ベースはタイト?うねうね?
- ストリングスとかパッドはいる?
- 雰囲気・色
- 明るい/暗い
- 夕方/深夜/朝焼け…どの時間帯が似合いそう?
- どこの場所が浮かぶ?(都会/海辺/自分の部屋/電車の中)
- 曲構成
- イントロ長め?
- サビ前で一回ブレイクする?
- ブリッジ(Cメロ)ある?
- ボーカルのキャラクター
- 声は太い?細い?やさしい?
- 感情は抑えめ?エモ全開?
- コーラスは厚い?シンプル?
具体的なシーン例
たとえば、あなたが大好きなシティポップっぽい1曲があったとして:
夜の首都高を走ってるみたいなシンセの音
BPM 105くらい、ちょっとタメのある4つ打ち
エレピのコードが甘くて、女性ボーカルが少しハスキー
…みたいに、「自分の言葉」で書き出すだけでOKです。
この「言語化」が、Sunoに投げるプロンプトの“タネ”になります。
2. ステップ2:ChatGPTで「音楽の設計書」にしてもらう
ここで、またAIの出番です。
さっきメモった要素を、ChatGPTに渡して「音楽の設計書」に整えてもらいます。
ChatGPTへの例プロンプト
この曲の雰囲気をSunoでオリジナルとして再現したいです。
下のメモをもとに、
・ジャンル
・テンポ感
・よく使われそうな楽器
・曲の雰囲気(時間帯・場所・感情)
・ボーカルの特徴
を整理して、日本語と英語の両方で「Sunoに渡せる説明文」にして下さい。
【メモ】
・BPMは105くらい、タメのある4つ打ち
・夜の首都高を走ってるイメージ
・エレピとシンセベースが気持ちいい
・女性ボーカルが少しハスキーで、切ないけど前向き
・シティポップ寄りだけど、モダンなLo-Fi感もある
実際にLofi音楽を作ってみました。
ジャンル
Lo-Fi / Chillhop
Ambient Pop(アンビエント寄りのポップ / エレクトロニカ)
軽めのシンセウェーブ系(Soft Synthwave)
テンポ感
90〜110 BPM あたりの“ゆったり系”。
使われそうな楽器は:
エレピ(Rhodes系)
パッド(暖色系のソフトシンセ)
軽いドラムキット スネアは軽め・乾いた音 キックは深くなく、丸い質感
サブベースではなく中低音寄りのベース
単音シンセリードか、ベル系の小さなメロディ
曲の雰囲気(時間帯・場所・感情)
夕方〜夜 室内(部屋 / カフェ)都会の夜景が似合う どこか“温かい孤独感”
感情 落ち着き ノスタルジック リラックス 少し切なさあり
ボーカルはなし
するとChatGPTが、英語のSuno用プロンプトに整えてくれます。
A warm, nostalgic lo-fi / ambient pop track.
95-105 bpm. Soft electric piano chords, warm synth pads,
light lo-fi drums, mellow bass, gentle pluck synth melodies.
Cozy night atmosphere, emotional and dreamy, slightly melancholic.
Soft airy female vocal with reverb, blended into the background.
これで、
「特定の曲名やアーティスト名を出さずに、ムードだけを移植する」準備が整いました。

この曲は自分の頭に浮かんだイメージをテキストにした上で具現化したものなので、特定の曲のコピーとは違います。(と、何かの場合に抗弁できます)
3. ステップ3:Sunoの「Upload Audio」で“自分の音”を起点にする
ここから、いよいよSuno本体。
「Upload Audio」って何者?
Sunoの「Upload Audio」機能は、
自分で録った音やメロディ、短いフレーズをアップして、
それを元にAIが曲を伸ばしてくれる機能
です。(Sunoヘルプ)
公式ヘルプによると、
- 「Library」や「Create」ページから「Upload Audio」を選び
- 6〜60秒の音声/動画クリップをアップロード
- その後「Extend」などを選んで、ジャンルや歌詞を指定して曲を展開
という流れになっています。(Suno)
ここで超重要な注意
商業リリースされている他人の曲を、そのままUpload Audioに突っ込むのはNG寄りです。
権利的にグレーどころか、将来的に普通に問題視される可能性が高いです。
なので、安全なやり方としては:
- 自分で弾いたギターフレーズ
- 自分が鼻歌で歌ったメロディ
- 自分で作ったビートループ
など、あくまで「自分の音」やロイヤリティフリー素材を音源ファイルにした上で、そのファイルをアップロードするのが基本です。
実践フロー
- 元曲の雰囲気を参考にして、
- それっぽいコード進行をピアノで弾いて録音
- それっぽいリズムのドラムループを自作
- 鼻歌でメロディを録音
- 6〜30秒くらいの短いフレーズにまとめて、WAV/MP3で用意
- Sunoの「Upload Audio」でアップロード
- 「Extend」か「Sample to Song」的な機能で、
- ChatGPTからもらった英語の説明文
- 曲の長さ(例:2分30秒)
- 歌詞(オリジナルの歌詞)
を指定して曲を生成する。
ポイントは、「ムードは元曲から借りるけど、素材は自分のものにする」こと。

生成した楽曲のオリジナルはあくまで「自分の音」やロイヤリティフリー素材であるという物証を残しましょう。
4. ステップ4:Persona(ペルソナ)で“自分のサウンド”を固定する
Sunoには「Personas」という機能があって、
簡単に言うと、
「この声・このサウンドのキャラで、今後も曲を作りたい」
という「AI上のアーティスト像」を保存しておける仕組みです。(Suno)
ペルソナはボーカリストの権利とイメージするとわかります。楽曲は権利の集合体なので、作曲者だけでなくボーカリストや演奏者の権利侵害に注意という点も考慮しましょう。
公式ブログでも、
好きな音楽の“エッセンス”を抽出して、
その魂を引き継ぐ新しいサウンドを作れる
というニュアンスで紹介されています。(Suno)
Persona活用の流れ(ざっくり)
- まずはSunoだけで何曲か作る
- さっきのUpload Audio+プロンプトで作った曲
- 似た雰囲気の別曲を2〜3本
- 気に入った曲をプレイリストにまとめる
- そのプレイリストを元にPersonaを作成
- 新しく曲を作るときに、
- プロンプトでそのPersonaを指定して生成
こうすると、
- ボーカルの質感
- ミックスの雰囲気
- サウンドのキャラ
が、ある程度「自分専用のアーティスト像」として固定されていきます。
ここでも大事なのは、
Personaの元になる楽曲は、
あくまで「自分がSunoで作ったオリジナル」を使うこと。
5. オリジナリティを確保する3つのコツ
「いや、それでも似ちゃいそうで怖いんだけど…」
というあなたのために、オリジナリティを上げる具体策を。
① BPMとコード進行を少しズラす
- 元曲:BPM 105 → 自分の曲:BPM 95 or 115
- 元曲:王道進行(Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵm) → 自分の曲:サブドミナント始まりに変える など
同じテンポ・同じ進行・同じ長さにすると、
どうしても似た曲になりやすいです。
② 歌詞の「視点」と「具体例」を自分のものに
- 元曲が恋愛ソングなら、
→ 自分は仕事の挫折やクリエイターの苦悩をテーマにしてみる - 元曲が「君と夜のドライブ」なら、
→ 自分は「一人で終電逃した帰り道」とか、生活感のある状況に変える
誰の人生にもその人だけの細かいディテールがあるので、
そこを書けば書くほどオリジナリティは勝手に上がります。
③ ジャンルを“交差”させる
- 元曲:シティポップ
→ 自分:Lo-Fi hip hop×シティポップ - 元曲:ロックバラード
→ 自分:ピアノとストリングスだけのシネマティックバラード
Sunoは「ジャンルミックス」にも強いので、
「Japanese city pop + modern lofi hip hop, nostalgic night drive」
みたいに、掛け算の指定をすると、
元曲から一歩離れた世界観を作れます。(The Verge)
6. Suno用のプロンプト例(“似てるけど違う”ライン)
最後に、実際に使えそうなプロンプト例を。
例:夜のシティポップを参考にしたオリジナル
(英語プロンプト)
A nostalgic Japanese city pop song with modern lofi elements.
Medium tempo (around 100 BPM), groovy but relaxed four-on-the-floor beat.
Warm electric piano chords, smooth synth bass, gentle drums, and airy synth pads.
Female vocal, slightly husky, intimate and emotional but hopeful.
The song feels like driving alone through Tokyo at night after a long winter,
watching the city lights and quietly deciding to move forward.
No reference to any existing artist or song.
(日本語でSunoの説明欄などに)
・ジャンル:日本のシティポップ+Lo-Fi
・テンポ:ミドルテンポ(約100BPM)
・楽器:エレピ、シンセベース、優しいドラム、シンセパッド
・雰囲気:長い冬が終わって、夜の東京を一人でドライブしているような、切ないけど前向きな感情
・ボーカル:少しハスキーな女性ボーカル、親密で感情的だけど希望がある
・特定のアーティスト名や曲名は使わない
ここまで細かく書いておけば、
「誰の曲かは連想するかもしれないけど、あくまでオリジナルの範囲」
に収まりやすくなります。
7. 公開前の「セルフチェックリスト」
最後に、YouTubeやサブスクに出す前に、
最低限チェックしたいポイントをまとめておきます。
- □ 特定の曲名・アーティスト名・歌詞の一節をプロンプトに書いていないか
- □ イントロやサビのメロディが、あの曲とほぼ同じになっていないか
- □ コード進行やテンポを少しでも自分なりに変えているか
- □ 歌詞は自分の体験や視点がきちんと入っているか
- □ 商用利用するなら、Sunoの有料プラン+利用規約を最新のものまで確認したか(Suno)
まとめ:好きな曲は「設計書」に変換して、自分の歌にしよう
- 好きな曲をそのままコピーしようとすると危険だけど
- 好きな曲を要素に分解して「設計書」にすると、安全に“系統の近いオリジナル”が作れる。
- Sunoの
- Upload Audio:自分のフレーズから曲を伸ばす
- Personas:自分好みのサウンドを固定する
を組み合わせれば、
「あの曲が好きなんだな…って伝わる、でもちゃんと自分の作品」が作れるようになります。
AI時代の作曲って、
「パクリとの綱渡り」じゃなくて、
好きな音楽のDNAを、
自分の物語と混ぜて再構成する遊び
だと思うんですよね。
似たような例は先行例があります。マンガの世界で有名なイベント「コミックマーケット」です。出品される作品には商業誌の作品を模倣したような同人作品が見受けられますが、原作者や出版社、同人作者との長い歴史が新しい秩序を生み出し、今に至っています。
もし「この曲を参考にしたいんだけど、どう分解すればいい?」みたいな具体例があれば、
曲の雰囲気だけ教えてもらえれば、一緒に“設計書”作っていきましょう。








こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 suno で「似てるのに違う」曲を作るコツを書きます。