最近TikTokで見かける「やたら 高画質 なアニメ風AI動画」実は“動かさない”のが正解でした【動画生成・編集編】

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 やたら 高画質 なAI動画の作り方を書きます。

最近TikTokで増えている「普通の生成AI動画より明らかに高画質」なアニメ風動画。

https://www.tumblr.com/crookedphantombread/803370903407837184

動きの速い映画品質の画像とはちょっと違う
髪の毛や服のシワが肉眼でも分かる絵画的な動画です。

前回、その正体を分析して“元絵”をどうやって作るかを検証しました。

高画質 なAI動画のつくり方(後編)

この記事では、元絵を動画にするまでを解説します。が・・・・!!

後編で言いたいことを
いきなり結論で言います。

元絵ができたら、クリエイティブの9割はもう終わってます

動画生成は“作業”であって、
クリエイティブの主役じゃないってどういうこと。

ここを勘違いすると、
一気に“よくあるAI動画”になります。

ほぼ動かさない。これが最大のコツ

「普通の生成AI動画より明らかに高画質」な動画を作りたいなら、
あえてImage to Videoで動画を動かさない。
これが秘訣です。

なぜかというと、まず、みんなが一番やらかすポイント。

Image to Videoを開いた瞬間、
こう思いませんか?

「せっかくだから、ちょっと動かそうかな…」

これ、
9割の人がやらかす失敗の始まりです。

実際にやっていること(プロ側)

「すごい高精細な動画」と思った画面を
注意して見てください。

高画質に見える生成動画で
本当に動いているのは、以下の部分だけです。

  • 髪の毛の「揺れてる気がする」感じ
  • 空気がゆらっとする雰囲気
  • 太陽光が微妙に変わる感じ

逆に言うと…高画質に見える生成動画は
人物はほぼ固定
背景もほぼ固定
カメラは絶対に動かない

という特徴があることがポイントなのです。

なぜ動かすと一気に安っぽくなるのですか

なぜ動かすと安っぽくなる理由はシンプルです。

  • AIは「時間方向」がまだ弱い
  • フレームごとに再解釈が入る
  • 結果、ディテールが壊れる

派手な動きで映画みたいに見える動画も
止めてみると動きの部分の表現が荒いことがわかります。

つまり、

動かせば動かすほど、
解像度は下がる

画質を上げたいのであれば、
Image to Videoをする際細部が再現しにくい動きを捨てること。
真逆のことをすればいいんです。

想定ツール(どれでもOK)

静止画から動画を生成するツール
どの動画生成AIを選べばいいかというと。
現時点では正解はありません。

なぜならこの分野は激戦区。各社が競っている最中なので
Runway、Pika、Luma、Klingなど、正直、
ツールの差はそこまで大きくありません。

今回は今いちばん「TikTokで超高精細に見える動画」を再現しやすい
鉄板ツールである有料のmidjourny、veo3、sora、Adobe FireFlyを使って検証します。

結論から言うと下記の組み合わせが一番安定しています。

  • 元絵:Midjourney
  • 静止画 → 動画:Veo3 / Sora / Adobe Firefly
  • 編集・仕上げ:DaVinci Resolve

アクションが主体の映画風の生成動画と違って、
超高画質な動画を作る上で重要なのは
「どのAIを使うか」より「どこで何をさせないか」です。

完成させた元絵を100とすると、
動画にしていくうちにどんどん減点されて行ってしまいます。

Midjourney(超高精細な元絵)

Veo3 / Sora(ほぼ動かさない動画化)

DaVinci Resolve(画質を作る・完成させる)

AIにはそれぞれ得意分野があるので、
画質を壊さずに動画にする組み合わせを見つけることが重用です。

元絵を用意します。元絵の作り方は前編で書いた通りです。

① Veo3(最有力・本命) Goofle社の動画生成AI

向いている理由は主に次の通りです。

  • フレーム間の整合性が非常に高い
  • 「何も起きない時間」を作るのが得意
  • 微細な光・空気変化が自然

Veo3でやるべきこと

  • 人物:完全固定
  • 背景:完全固定
  • 動き:
    • 空気の揺らぎ
    • 髪のハイライト変化
    • 光量の微変化

Veo3用の考え方(超重要)

👉 「動画を生成する」ではなく
👉 「静止画を“時間付きJPEG”にする」

これができるのが Veo3 の強みです。

② Sora(表現力は高いが欲張ると崩れる)

向いている使い方

  • Veo3より「情緒」を足したいとき
  • ただし制御が甘いと一気に壊れる

Soraでの注意点

  • カメラ移動はさせない
  • 被写体の行動はさせない
  • 「cinematic」「dramatic」を多用しない

👉 Soraは“味付け役”
👉 主役にはしない

③ Adobe Firefly(保険・補助役)

Fireflyは「安全」「破綻しない」が強み。向いている用途は

  • ゆっくりした空気変化
  • 企業案件・炎上回避
  • 「とにかく壊れない動画」

👉 Fireflyは「無難枠」

初心者向け・鉄板設定

googleのVeo3を使うには、Flowを使います。
Flowを起動して、画面下にあるプロンプト枠を開き
画像から動画生成を選択します。

続いて、元絵をドラッグアンドドロップしてアップロードします。

Image to Videoの作業をする際の設定について、
やるべきことは「何も言わない」。

つまり、プロンプトに余計な注文をしないことがポイントです。
こういうことは書きません。

❌ 風が吹く
❌ カメラが寄る
❌ ドラマチックに動く

逆に、覚えるのはこれだけ。

  • motion strength:最低
  • camera motion:off
  • subject consistency:最大

もしスライダーがあったら、
「ほぼ0」に寄せ、 静止画を“壊さず”動画フォーマットにするようにしましょう。

右下の矢印アイコンをクリックすると動画生成が始まります。

具体例:田舎駅の女子高生シーン

出来上がった動画を確認しましょう。
Image to Videoが終わった時点で
こう思うはずです。

「あれ?
思ったより普通だな…」

でも、動画を確認してみてください。

  • 女子高生は動かない
  • スカートも揺れない
  • 電車も動かさない

それでも、

  • 空気が少しだけ揺れる
  • 髪のハイライトが微妙に変わる
  • 雲が「止まってるけど生きてる」感じになる

以上のような仕上がりになっているはずです。
このような動画ができれば、あとは編集で仕上げをするだけです。

【STEP3】編集で“高画質に見せる”

使用する編集ツールでよく使われているのはこれ。

  • DaVinci Resolve(Studio)

もし持っていなければ、Topaz Video AI → ResolveでもOK。
重要なのはAI出力をそのまま投稿しないということです。

DaVinch Resolveを起動したら、新規プロジェクトを作って生成した動画を読み込みましょう。

高画質に見える生成動画は、
・軽いノイズリダクション、
・ミッドトーンのディテール強調、
・シャープは弱く・
・局所的に、微量のグレイン追加
ほぼ確実にこの4つをやっています。

① 軽いノイズリダクション

AI特有のザラつきを消す処理です。
ノイズを「消す」ではなくAIっぽいザラつきを“整える”処理です。

ノイズを含んだまま後工程をやると全部が破綻するため、最初に行います。
やりすぎるとプラスチック感が出るので注意です。

クリップを指定したまま[カラーページ]を開きます。(Resolve Studio限定機能です)
Alt+sで新規ノードを追加してノードラベルを[NR_Basel などとします。

インスペクタを開いて、[ノイズ除去]探し、
それをドラッグアンドドロップで新規ノードに追加します。

すると上記画像のように[ノイズ除去]が編集できるようになります。
画像では[ノイズ除去]の中の

  • 時間的ノイズ除去(Temporal)
  • 空間的ノイズ除去(Spatial)

が両方表示されている状態です。

時間的ノイズ除去については

  • 前後のフレーム数:2 高画質に見える動画は「止まって見える」ので2で十分
  • 動き推定:画質優先
  • 動きの範囲:小

空間的ノイズ除去については初期状態が正解です。
「ほぼ使わない」「使うならクロマだけ、弱く」とします。

空間的ノイズ除去

まず下記のようになっていることを確認します。

  • 空間的ノイズ除去
    • モード:速度優先
    • 範囲:小
    • しきい値:0.0 (ブレンド0含む)
    • Split Luma Chroma:OFF

「どうしても残る色ノイズ」がある時だけ使う
使うケースはこれだけ👇
空の影部分がザラザラ
制服の影に色チラつき
肌の暗部が汚い
ディテールではなく「色の汚れ」が気になる時。

使う場合は、Split Luma Chroma をONにすると「輝度のしきい値」「クロマのしきい値」「ブロンド」の値が入力できるようになるので基本クロマを3.0〜6.0の範囲内で動かします。

② ミッドトーンのディテール強調

シャドウでもハイライトでもない“情報量が多く見えるゾーン”を持ち上げます。

ミッドトーンのディテールを“増やす”というと、
「シャープ」にしたり、解像度を上げることを思い浮かべる人がいるかもしれませんが、
目的は「人間の目が“高精細”と錯覚するゾーンを強調する」ことです。

人間の目が「情報量が多い」と感じるのは、ほぼミッドトーンです。

シャドウを持ち上げすぎると画面が白っぽくなります。
ハイライトを触りすぎると画面全体がギラつくので、
ミッドトーンだけを太らせるのが正解です。

①の 軽いノイズリダクションで作った[NR_Base]をAlt+sして新規ノードを追加して、
ノードラベルをMid_Detail などにします。
(必ず新規ノードを作らないと元に戻れなくなるので注意)

カラーページ左側「カラーホイール(Primaries)」を開き、
上の列にある[ログホイール]をクリックするとカラーホイールの画面が切り替わります。

画面左下の[ミッドディテール]の値を調整します。

ミッドディテールの正しい使い方(実践手順)

カラーページ左側の
[カラーホイール(Primaries)]→[ログホイール] を開くと、
画面左下に [ミッドディテール] という項目があります。

STEP1|まずは“効き方”を確認する

ミッドディテールの値を
初期値の「0」から、一度 80〜100 まで一気に上げてみましょう。

すると、

  • 色味に一気にメリハリが出る
  • 面の情報量が増え
  • 画面が「目覚めた」ような印象になります

この段階で、

「あ、これが高画質に見える正体か」

と感じられればOKです。

STEP2|100の状態で“破綻ポイント”を観察する

次に、100にした状態をよく観察します。
注目するポイントは次の通りです。

  • 髪の毛が ザラつきすぎていないか
  • 肌や制服が 粉っぽくなっていないか
  • 空のグラデーションが 割れていないか
  • 輪郭が 硬くなりすぎていないか

ここで起きている現象は、

情報量が増えすぎた結果、
品が落ち、AIっぽさが強調されてしまっている状態

です。

STEP3|“破綻寸前”から最適値を探す

ミッドディテールは
効かせすぎると一気に下品になります。

そのため、

  1. 一度 80〜100 に上げて
  2. 「ここから先は危ない」というラインを目で確認し
  3. そこから 10〜15 まで下げる

という使い方が正解です。

実運用での目安値

  • +5〜+15
  • 多くの場合は +8〜+12 で止めるとベスト

この範囲であれば、

  • 情報量は増える
  • 立体感は出る
  • しかし加工感は出ない

という、一番おいしい状態になります。

なぜ「一度100にする」のか?
初心者の方はよく、「最初から10くらいでいいのでは?」と思いますが、それだと
何が強調されているのかが分かりません。
一度100にすることで、どこが強調されるのか。どこから破綻が始まるのかを目で理解できます。
100は“使う値”ではなく、
“限界を知るための確認用”

この考え方が身につくと、
色調整や質感調整が一気に安定します。

③ シャープは弱く・局所的に

まず結論から。シャープは「最後」「局所」「弱く」
全体にかけた瞬間、今までの努力は全部壊れます。

カラーページでノードを追加します。ノードラベルを[Sharp_Local]などとします。

インスペクタから[シャープ](OpenFX)を見つけて
→ Sharp_Localノードにドラッグ&ドロップします。

OpenFX「シャープ」を Sharp_Local ノードに適用したら、
まずシャープニングの量を「1.0」に設定します。

これは「最終値」ではなく、
ディテールの効き方を確認するための基準値です。

STEP1|しきい値(小)で“拾うディテールのサイズ”を決める

次に [しきい値(小)] を調整します。

  • 推奨範囲:0.03〜0.08(セーフティゾーン)

この値を下げることで、

  • ノイズではなく
  • 本当に細かいディテールだけ

を拾うようになります。

👉
ここは「半径」の代わりになる項目です。
まずここを決めてから、量を触るのが鉄則です。

STEP2|ディテール(小・中・大)で“どこに効かせるか”を決める

OpenFX「シャープ」では、
シャープの効き方を ディテールのサイズ別 に制御できます。

対応関係は以下の通りです。

  • ディテール(小)
    髪の毛・布の繊維・細い線
  • ディテール(中)
    輪郭・建物・構造物
  • ディテール(大)
    面(空・壁・肌など)

AI生成動画の場合の基本設定は次の通りです。

  • 小:1.0
  • 中:0.8〜1.0
  • 大:1.0〜1.3(基本は下げる

👉
「大」を効かせすぎると、
一気に CG感・AI感が強調 されるため注意が必要です。

クロマシャープニング:1(触らない)

それ以上は 基本NG

色をシャープにしたい場合は
👉 そもそもシャープでやらない

色の締まりが欲しい場合は、

  • 彩度
  • コントラスト
  • ミッドディテール

で調整します。

④ 微量のグレイン追加

これ、超重要。

グレインとはフィルムで撮影したような
ザラザラした粒状の質感(フィルムグレイン)をデジタル映像に加える
視覚効果のことです。

TikTokの圧縮に耐える
人間の目は“少し荒れた映像”を高級に感じる

不思議ですが、映画もCMも
必ずグレインを足しています。

ノードを追加して、ノードラベルを[Grain_Final]とします。

インスペクタから、OpenFX「フィルムグレイン」を検索Grain_Final ノードに
ドラッグ&ドロップします。

  • プリセットを35mm 400Tまたは16mm 500T(粒が細かい、デジタル臭が出にくい、スマホ表示と相性がいい)
  • 合成の種類:オーバーレイ(粒が自然で、コントラストを壊しにくい)
  • 不透明度:0.15〜0.25
  • テクスチャー:0.5〜0.7(粒のランダム感、高いほど“有機的”)
  • グレインのサイズ:0.000
  • グレインの強度:0.12〜0.20
  • オフセット:0.500
  • 対称性:0.500
  • ソフトネス:0.234(0.3前後でもOK👉もう少し上げても問題なし。)
  • 彩度:0.000

書き出しで全部台無しにしないために

最後の罠がこれ。

「もう完成!
とりあえず書き出そう」

TikTok用の基本は、

  • 縦 1080 × 1920
  • ビットレートは高め
  • 圧縮はTikTokに任せる

自分でギチギチに圧縮すると、
せっかくのディテールが
一瞬で消えます。

https://www.tumblr.com/crookedphantombread/803367164214214656

なぜこの方法がTikTokと相性がいいのか

理由は明確です。

  • スマホは細部が目立つ
  • スクロールは一瞬
  • 「違和感」があると即スキップ

だから、

  • 大きな動きより
  • 小さな“質感の良さ”

これが
再生維持率に直結します。

まとめ:高画質生成動画の正体

最後に、
全体を一言でまとめます。

高画質な生成AI動画は、
「動画を作っていない」

  • 元絵を作る
  • 壊さず動画にする
  • 編集で“映像”に仕上げる

この順番を守るだけで、
TikTokで見かける
「あれ、なんか綺麗…」
に一気に近づきます。

前後編まとめ

  • 前編:元絵が8割
  • 後編:動かさない+編集

もしこれからAI動画を作るなら、
派手な動きより
“完成度の高い1枚”を信じてください。

それが、
今いちばん伸びている
TikTok生成動画の作り方です。