駆け出し時代は、ひたすら地域の話題を数分の番組にしてました。修行ですね。
数分といっても、わかりやすく編集しないと叱られます。映像を触ったのは初めてでしたので短くするのは超難関でした。
やっているうちにわかってきたのは映像にはある一定の決まりがあることでした。
その方法を使うことで大抵のことは編集できるというのです。その決まりを四つのモンタージュと言います。
“モンタージュ”とは編集のこと
モンタージュとはフランス語で「(機械の)組み立て」と言います。
転じて映画用語で、視点の異なる複数のカットを組み合わせて用いる技法のことを意味するようになりました。
遅かれ早かれ、映像にたずさわった人間は編集(モンタージュ)に達するものなのだ。映画だけにしかできない、映画だけができる究極の醍醐味が、実は編集なのだ。
人間は最初に見た映像に引きずられて次の映像に特別な意味をつけてしまう癖があるようです。
この癖に目をつけてさまざまな表現方法を見つけ出してきたのが映像の歴史であり、進化であるように思います。
映像は並べ替えることでまったく違った意味を見る人に伝えます。[1]詳しいことは映像系の講座を受講すれば体系的に学ぶことができます。
四つの基本
その方法は大きく四つの型に分かれます。
- 直列モンタージュ
- 回想モンタージュ
- 並列モンタージュ
- 交差モンタージュ
これ以外にも対象、比喩、象徴、吸引などの特殊なモンタージュがありますが、基本形を頭に入れておくことで映像表現の幅が大きく広がります。
直列モンタージュ
出来事が起こった順番に並べる。基本的な編集法です。まだワンシーンワンカットが普通だった1900年代の早い時期に登場したノーマルな見せ方です。
回想のモンタージュ
映像の時間を前後して並べ替える主観的な繋ぎ方。時間を操作することから劇的な要素を含んでいます。
並列モンタージュ
並列モンタージュは非同時的カットバックとも呼ばれます。
違う場所・時間で起こった出来事を、関連付けて並べていく方法です。それぞれのシークエンスが同時に行われる必要はなく、またそれぞれが関連を持っていなくても、因果関係がなくても成立します。
交互モンタージュ
同じ時刻の、違う場所の出来事を並べていく方法です。並列が時間であるならば、交差は各々の出来事が同時に進行していなければならない制約があります。狭い意味のカットバックはこちらの方法をさします。ハラハラドキドキさせる緊張感がある編集法です。
モンタージュの要素
編集を進める上で頭に入れておきたいのが、手札である映像を使って作り手のイメージを最も効果的に伝える組み合わせを考えることです。
映画が発達するにつれ、様々な作家が実験を繰り返しながら新しい表現に挑んだのが1900年代初頭のことでした。
特にフランスではモンタージュを「目で見るリズム」と捉えていました。ものすごく短いカットをつなぐ「フラッシュ・バック技法」が生まれたのもフランスです。
モンタージュが理論的に発達したのが1917年のロシア革命で知られるソビエト連邦でした。映画は社会主義国家の建設に役立つものとして期待されたからです。
クレショフ、ティモシェンコ、ブドフキン、エイゼンシュタインといった作家たちは様々な文献を書き実践しました。
映像編集の”技のデパート”
その理論のエッセンスが結晶した作品が「戦艦ポチョムキン」です。
「戦艦ポチョムキン」の見せ場はオデッサの階段のシーンです。この詩篇は「吸引のモンタージュ」として知られています。吸引とは、あらゆるモンタージュを駆使して観客の心を掴むこと。つまり心を吸引することから「吸引(アトラクション)のモンタージュ」と呼ばれています。
その要素は
- 2,3秒の短いカット
- サイズの巧みな使い分け
- 上方向と下方向 葛藤のモンタージュ
- 躍動的な移動
- ワンカットの迫力
- 象徴のモンタージュ
- カットバック
発砲。すべて2、3秒のカット。転ぶ子供。撃たれる。驚く母、クローズアップ。逃げる民衆。クローズアップ、ロングの使い分け。移動ショット抗議する母。画面上方向へ進む。降りてくる兵隊。画面下方向へ進む。撃たれる。兵の影。乳母車を止める母兵士の足クローズアップ。撃たれる母アップ 空転する車輪。 乳母車の移動カット 暴走する乳母車
様々な映像を見慣れた私たちの目には「何をいまさら」と思えるかもしれませんが、初めて見た当時の人たちは衝撃的な印象だったのではないでしょうか。
まとめ
撮影してきた映像をラッシュで見るのは苦痛でした。なぜなら撮影前に思い描いていた映像と撮影した映像のできがあまりにも違っていたからでする。
要するに全然撮れていないのです。
しかし、放送に出すことができました。それは映像編集者の協力があったからです。優れた映像編集者ほど、過去の名作をよく見ていて数多くの引き出しを持っていました。
「この映像の次にあの映像をつなげば成立する」と励ましてくれたことが忘れられません。
References
↑1 | 詳しいことは映像系の講座を受講すれば体系的に学ぶことができます。 |
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こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 モンタージュ を書きます。