動画コンテンツとは何か考えてみた

こんにちは、フルタニです。放送局で番組づくりをしていました。

企画のたて方を学びたい。人に喜んでもらえる作品が作りたい。制作者なら誰もが抱く目標です。でも、優れた企画とは何か。誰に喜んでもらうのか。

誰でも映像制作ができるようになった今、悩みを抱える人も増えています。

なぜなら、動画はウェブの広報戦略や広告・マーケティングなどの道具として欠かせない手段になっているからです。とくに動画で「WEBコンテンツ」が作れるかどうかは非常に重要なスキルになりつつあります。

コンテンツとはなにかを考えておくことが表現の幅を広げる上でポイントになります。

この記事では、動画を作る上で頭に入れておきたい基本・コンセプトを考えます。

メディアの上で運ばれていくもの

映画プロデューサーで実業家の川上量生さんはコンテンツを次のように定義しています。

川上量生「コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと」【指針】

2019年4月1日
コンテンツはcontent(中味)の複数形。
邦訳すると「情報の中味」です。情報を伝える放送や印刷物はメディア(媒体)です。
メディアに載せて伝える情報の中味を指します。

コンテンツはメディアという容れ物に入った中身です。

メディアは最近、プラットフォームと言う言葉で例えられる事もあります。その場合、メディアは線路でありコンテンツは線路を走る列車です。

一昔前までは、放送という容器に入った”コンテンツ”は放送番組、紙という容器に入った ”コンテンツ”は 新聞・雑誌と棲み分けられていました。

ところが、放送だけでなく出版、キャラクター事業、イベント展開など、インターネットの普及によりコンテンツの境目があいまいになってきているのです。

ここでは、複製するためのマスターデータを制作することまでがコンテンツ作りであって、マスターデータがコンテンツそのものです。
放送番組は放送が目的なので、マスターデータがコンテンツになりますが、
展開を含めた場合は、パッケージや特典データも含めたものまでがコンテンツに含まれます。 川上量生 著「コンテンツの秘密」(NHK出版)

ガイドラインという制約を受けるもの

メディアにコンテンツを載せるためには、ある決まったフォーマットに従う必要があります。

媒体の多様化にともない、さまざまなメディアを意識することが制作者に求められます。

一見自由きままに見えるような番組であっても、 制作者はガイドラインの縛りから逸脱することはできません。

コンテンツをつくるということは、クリエィティヴなものをつくるのではなく、フォーマットに従って規格にあったものを作ることです。

放送局では番組制作者の行動規範を定めています。放送ガイドラインです。
ガイドラインはネットで見ることができます。

ガイドラインを開くと、放送が憲法および放送法によってその”かたち”が定められていることがわかります。放送番組における自由とは、視聴者の信頼があってこその条件付きの自由と見ることもできます。

商品としてのコンテンツ

コンテンツのほとんどは著作権を主張します。著作権の保持者から見るとコンテンツは資産だからです。

アリストテレスは「詩学」の中でこう述べています。

「コンテンツとは現実の模倣である」

「メディア(媒体)と対象、方法のどれか一つでも異なれば別のコンテンツである」

「コンテンツ論は今に始まったことではなく、アリストテレスの時代から議論され続けてきた大命題なのです」と川上さんは考えています。

世の中でクリエイティブとされている仕事の多くは、自分の脳の中にあるイメージをうまく見つけ出して、「こういうものだ!」と現実世界に差し出すことだ。

これはどういうことでしょうか。

物語好きは人間の本能

働き者のように見える人間の脳は、意外に怠け者なのだと考えられています。

例えば、暗記作業。

情報を頭のなかに取り込む単調な作業は脳にとって負担です。

楽しいことがあれば楽に覚えるのにと脳は常に考えています。

そこで編みだされたのが物語です。

アリストテレスは物語が持つ効果に注目しました

まず再現(模倣)することは、子どもの頃から人間に備わった自然な傾向である。しかも人間は、もっとも再現を好み再現によって最初にものを学ぶという点で、他の動物と異なる。「詩学」27頁

人間にとって、物語は現実世界の模倣であるとアリストテレスは考えています。
「人間は現実世界のシミュレーションとしてコンテンツから学ぶ」と

川上量生さんは指摘しています。1)「コンテンツの秘密」40p

そのことを端的に表現したのがアニメーターの宮﨑駿監督の言葉です。
宮崎監督は作品作りについて、

「アニメーションとは“世界のひみつ”を覗き見ること

2)「コンテンツの秘密」p90と語りました。

クリエーターは、”世界のひみつ”という宝物を追い求めて、創作活動を続ける人たちです。

彼らにとって作品を作ると言うことは”世界のひみつ”を探すことです。

川上量生さんは「クリエーターの脳の中にあるイメージを再現するのがコンテンツである」と言います。

クリエイターが探し求める”世界のひみつ”とは、無から有を生み出すものではなく、

“世界のひみつ”はあらかじめ人間の脳の中にあるというのです。3)「コンテンツの秘密」p96

クリエーターが行っている創作のプロセスを情報処理という観点から見ると、

すべての創作物はクリエーターの過去の経験が元になっているのだと川上さんは言います。

過去の経験とは人生経験だけでなく、クリエーターが過去に摂取した事象すべてを含みます。

ある時偶然、脳の中で因果関係がつながるとそれがきっかけとなって連鎖反応が始まります。

連鎖反応は物語となり強いイメージを生み出すのです。

私はこのことをを読んで、人間の頭の中に空いた無数の鍵穴を連想しました。

クリエーターは、膨大な鍵を手に、鍵穴を開けようとしています。

テーマを絞り、情報を選別し、並び方を変えることで穴に刺さる鍵をつくるという仕事です。

偶然その鍵穴に刺さる鍵こそが良質なコンテンツなのではないかと思いました。

まとめ

制作者の心中で「なぜ私はこのネタにこころを引かれたのだろう」と自問自答することがあります。

自分の心に響く物語を他人に伝える作業こそがものづくりの喜びなのかもしれません。

References   [ + ]

1. 「コンテンツの秘密」40p
2. 「コンテンツの秘密」p90
3. 「コンテンツの秘密」p96