初心者によくあるミスが、中級者~上級者向けの内容を狙いすぎて、ビギナー・初心者を置き去りにしてしまう事だといいます。
映像も同じです。
高度な内容であっても、ビギナーに伝える姿勢で編集しないと見てもらえません。
視聴者にわかりやすく情報を伝える映像づくりについて書いていきます。
わかりやすい動画とは何か、元NHKプロデューサーのまとめたこの本がわかりやすいのでお勧めです。
わかりやすく書くことが大切な理由
映像制作の魅力の一つは物語づくりです。
物語といっても難しいものではありません。
例えばこのツイート。
何気ない日常感だけど、ちゃんと構成考えてるよね
— 近々、改名する🤟グゥミン🐰🐥🐰🐭 (@me3mememe) 2019年5月10日
さすが🐰
pic.twitter.com/pLMfjAUnXS
ピザと食べる人。
数カットの映像を編集しただけのものですが、制作者のイメージが伝わってきます。
この映像クリップの場合使用した映像は数カットです。
普通テレビの情報番組では一分あたり10カット程度使います。
カット数が増えると映像の組み合わせはネズミ算のように増えます。話の流れも盛り込む情報も複雑になります。
次に、情報量が増えると、制作者の負担も増えます。
制作者自身も専門的な内容を学ばなければならないからです。
専門的な世界では厳密にものごとを定義しなければならないので、専門用語が標準語のように使われます。
勉強をしているうちに書き手自身が専門家の仲間入りしてしまい、ビギナー目線を失ってしまうのです。
実際に映像を見る人の多くは初心者です。
専門用語を知っているとは限りません。
例えるなら、基礎英語を学びに来た学生に、ビジネス英会話を教えるようなものです。相手のレベルに合わせて解説することが求められます。
ユーザーの数にも大きな開きがあります。
ピラミッドに例えるとわかりやすいのですが、圧倒的に母数が多いのは初心者です。
昇順をあわせるべき対象は母数の多いほうです。
少数の専門家に合わせるような内容では初心者の関心をつかむことはできません。
著名なブロガーほどわかりやすい言葉で語りかける人が多いのはこのためです。
初心者を大切にする姿勢を忘れてはいけないのです。
ではどうしたらいいのでしょうか。
ある程度長い動画を作る時欠かせないのが構成です。
放送局の制作者が日常使っている方法が参考になります。
“ペタペタ”です。
放送局のプロが使っているの解決策とは付箋紙を使った構成法です。
用意するのは名刺大のメモ用付箋紙です。
制作現場では「ペタペタ」と言います。
なぜかというと、裏に剥離しやすい糊がついている「ポストイット」という商品を使うからです。
貼ってはがす時のイメージがそのまま名前になりました。
構成とは話の流れ。視聴者に見てもらう映像を順番に並べることで理解を助ける基本技術です。
例えるなら建物の設計図です。
柱や梁などの構造物が構成の柱。
ここが簡単に倒れるようだと、いくら高級な外壁を作ってもその動画に価値はありません。
ペタペタを貼り付けるのは畳くらいの大きさの白い板。
番組づくりの現場ではポスターの裏張りに使うスチレンボードを板にします。
スチレンボードを使うのは持ち運びの利便性を考えてのことです。
スチレンボードがない場合は壁に直接貼って行きます。
「ペタペタ」の上に書くのは見出しと簡単な内容説明だけ。
例えばこんな情報を撮影した映像を見ながら太字のサインペンで書いていきます。
- 街並み全景 多摩川に面した世田谷区二子玉川
- ハナミズキ 二子玉川を代表する花として植栽されている
- 山田太郎さんインタビュー 「主催したイベントの狙い」
映像とその映像の意味付けを考えながら描くのがコツです。
編集ソフトで確認すれば済むことを編集ソフトを使わずに、カードのようなペタペタを使うかと言うとそれには理由があります。
映像のカットを付箋紙に切り出すことで、編集機を使わずに映像の流れを組み立てることができるからです。
- 全体を俯瞰できる
- 全員で共有できる
- 貼り替えが早い
番組で使う映像は1分あたり10カット。短い番組ならば編集に使うカットは捨てるカットを含めてもそんなに大した数ではないので覚えていらられます。
カットを並び替えてもバリエーションは限られます。
長い番組になると使うカットも増えますが、大変なのは組み合わせの数が爆発的に増えていくのです。
そうなるととうてい1人だけでは全体像を把握しきれません。
映像は組み合わせを一つ変えただけで違う意味が生まれてくるからです。
いちいち画面を見ているより、番組に関わる人たちと一緒に映像の使い道を考えた方が早いし、知恵も出るに決まっています。
つまりペタペタは生活の知恵、全員の意見を手っ取り早くいただくための超合理的な解決策だったのです。
ペタペタのルール
付箋紙のルールは二つ。カットごとにシーンの意味をまとめること。
見出しと内容のに項目に絞り、1メートル離れてみても内容がわかる大きい文字で書くことです。
例えば、景色の映像ならば見出しは「四万十川」、内容は「日本一の清流」。
働く人物ならば「主人公A働く」、内容は「一万人に1人と言われる手さばき」。
インタビューなら見出しは「人名」内容は「印象に残る至言の一言」などです。
制作者は、撮影構成表に基づき撮影したカットをカードに分解し、物語の筋立てを考えながら並べて行きます。
一目見てシーンの重要度やバランスがわかります
撮影した実際の日取りと並べた順番が入れ替わることを気にする人がいるかもしれませんが、まずは映像の持つ意味合いを優先します。
一枚の映像が持つ意味合いは、構成により変わってくることがあります。
四万十川の場合、日本一の清流が、話の展開によっては「生態系が壊される川」になることもあります。
並べて行くうちにいくつかのカットが一つの塊にまとまりはじめます。
意味のある流れになるからです。この意味のある流れをシーンといいます。
文章で言うならばシーンは段落に相当します。
段落がいくつか集まるとさらに大きな塊になります。文章で言うと節に当たります。
制作者はボード上に貼り付けた「ペタペタ」付箋紙の流れを何度か入れ替えながら映像の流れを頭の中で組み立てていきます。
中にはこの段階でナレーション原稿を作り始める人もいます。
使い方は人さまざまです。
まとめ
ペタペタを使うと頭の整理ができます。
しっかり組み立てた構成を元に編集作業を始めると作業が早くなります。
いちいち編集ソフトを立ち上げて映像を探す手間が省けるので効率的に進めることができるのです。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 ペタペタ を書きます。