著作物の使用料 (権利料)はどう払う?YouTube/テレビ別の実務フローと相場

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 著作物の使用料 (権利料)はどう払う?を書きます。

「YouTubeであの曲を使いたいんだけど、どうやってお金払えばいいの?」
「出演した人にギャラは必要?」

……制作や撮影の現場で、こういう質問を受けることが本当に多いです。僕も最初は、情報の断片だけが飛び交っていて混乱しました。でも理解のコツはシンプル。“誰に・何を・どう使うか” をちゃんと特定すれば、支払い方は見えてきます。

まず最初に一言:

著作物の利用に関する支払いは「法律+慣習」。制度的には著作権や近接権(録音物の権利など)に従い、実務では直接交渉や管理団体の料金表に沿って支払います。(JASRAC)

権利に伴う“おカネ”(使用料)の支払い方 — 現場で困らないための実践ガイド

最低限の基本ルール(これさえ押さえればまず安心)

  1. 何を使うか(楽曲、録音、写真、出演者の声や顔か)を特定する
  2. 権利者を特定する(作詞作曲者/出版社/レコード会社/演奏者/出演者 等)
  3. どの権利が必要か判別する
    • 楽曲(作詞作曲)の利用 → 作曲者や出版社(JASRAC管理曲はJASRACへ)への使用許諾。
    • 録音物(マスター音源)の利用 → レコード会社等の許諾(原盤権)。
    • 演奏・歌唱の放送・配信 → 実演家の近接権や肖像権も関係する場合あり。
  4. 管理団体(例:JASRAC)か個別交渉かを決め、契約・請求・支払いを行う。(JASRAC)

具体例で覚える:ケース別フローと相場感

A)YouTubeで「楽曲」をBGMに使う(作詞作曲の権利)

  • 確認:その楽曲がJASRAC管理か?(JASRACの検索で確認できる)
  • もしJASRAC管理曲:JASRACの定めるインターネット配信の料金表に準拠して許諾を得る。個別の配信形態(ライブ配信、録画配信、商用か否か)で算定方法が変わります。JASRACはオンライン配信の計算シミュレーションや早見表を提供しています。(JASRAC)
  • もし管理外(インディーズ等):版元(出版者)や作詞作曲者に直接交渉して「シンクロ(映像用使用)」許諾を得る。料金はワンタイムの“シンクロ料”か、収益の%(レベニューシェア)などで決定。海外曲は出版社→作家へ連絡することが多い。(tatsuyaoe.com)

相場感(参考)

  • JASRACのインタラクティブ配信は1曲1リクエストあたり情報料の4.5%または4.5円など、配信形態で細かく規定。短時間の録画配信や商用配信は別計算。詳細はJASRACの料金表を参照。(JASRAC)

B)「既存のレコーディング(マスター音源)」を使う場合

  • 必要:①作詞作曲の許諾(作曲権)+②原盤権(録音物の権利:レコード会社等)
  • 窓口:原盤はレコード会社へ。日本レコード協会(RIAJ)等で各社の窓口がまとまっているので問い合わせ。(riaj.or.jp)
  • 支払方法:直接見積→契約書→銀行振込(一般的)。場合によっては売上の一部をロイヤリティとして分配。

C)実演家(奏者・歌手)の演奏を使う(ライブ録音など)

  • 必要:演奏者の近接権(演奏者が権利を持つ場合)やレコード会社の同意。
  • 注意:演奏家の肖像や名前、人格権も配慮。現場での同意(出演同意書)が重要。

D)有名人の短い“街頭インタビュー”や数秒のコメント(ニュース系)

  • 実務上:街頭インタビューやニュースでの短時間コメントは、通常「取材の一環」として無償で行われることが多い(街頭インタビューは謝礼ゼロが多数)。ただし、まとまった出演(VTR出演、専門家の長時間コメント、密着取材等)では謝礼や出演料が発生する場合がある。参考の相場例として、テレビの短時間VTR出演は1万円〜3万円、街頭インタビューは0円という例が現場の相場感として報告されています。(EDiT.)

結論(出演料):ニュース性の高い短いインタビュー→原則不要。バラエティ/密着/CM・商用用途→明確に契約して出演料を支払うべき。

🎵 実演家の音源や楽曲を使う場合のコスト感

初心者の方が一番「えっ、そんなにするの!?」ってびっくりするポイントです。実際、「趣味で作った動画」でも、YouTubeで広告がつく=収益化コンテンツになると、権利者側からは商用利用とみなされます。なので、料金の相場感を知っておかないと後で青ざめることになります。

1. JASRACやNexTone管理曲の場合

  • YouTubeで使うだけなら、基本的にはYouTubeと包括契約しているので追加料金は発生しません。
  • ただし、自分で演奏したりカバーする場合は別途許諾が必要なことがあります。

👉 ここで大事なのは、「YouTubeにアップするだけならOK」と思い込んで、他の用途(DVD販売や企業案件)にも流用するとアウト、という点です。

2. プロ実演家の音源を直接使う場合

  • これは一気に商用扱いになります。
  • 数十秒~1曲まるごと使うだけで数万円〜数十万円請求されることも珍しくありません。
  • 有名アーティストなら、最低10万〜100万円以上が相場感。

👉 例えば、街の映像を撮っていてカフェのBGMに有名アーティストの曲が入っていた場合、後から権利者に見つかれば高額な請求が来ることがあります。

3. 映像に出る実演家(俳優・声優・演奏者など)

  • 数秒の出演でも「出演料」は発生します。
  • 地域のアマチュア演奏家なら 1〜3万円程度の謝礼
  • プロの俳優やミュージシャンなら、最低でも5〜10万円以上
  • 有名人なら、出演料だけで数十万〜数百万円

👉 つまりテレビでよく見る「数秒のインタビュー」も、裏ではきちんと出演料が支払われているケースがほとんどなんです。

💡 じゃあ初心者はどうするべき?

  • フリー音源・効果音・BGMサイトを活用する(Epidemic Sound、Artlist、Audiostockなど)。
    → 年間1〜2万円で使い放題のサービスが多い。
  • 出演者は友人や自分で
    → 笑顔で「ちょっと撮らせて!」はOKでも、後で収益化すると揉めやすいので、できれば書面やLINEで一言了承をもらうのが安心。

🎬 まとめると…

初心者が「趣味だから大丈夫」と思ってプロの実演家の作品を使うと、最低でも数万円〜、場合によっては100万円以上の請求につながる可能性があります。

だから、最初のうちは フリー素材や定額サービスを使うのが一番安全でコスパがいい。
「いつかは本物を使いたい!」ってなった時に、初めてプロに正規料金を払うイメージですね。

支払いの“実務フロー”(現場でハマらないためのテンプレ)

  1. 使用申請(書面):誰が、何を、どの期間、どの媒体で使うかを明確にして申請。
  2. 見積・許諾書(契約書):権利者または管理団体から見積もり→許諾条件(範囲・期間・地域・媒体・対価)を契約書に明文化。
  3. 請求と支払い:契約に従い請求書が発行される。支払は銀行振込が一般的。電子決済やクレジット決済に対応する事業者もあり。
  4. 領収書・記録保存:支払証明や許諾書は5年程度(案件に応じて)保管。万が一の問合せに備える。
  5. 配分処理:管理団体経由なら団体が権利者へ分配。個別契約なら受領者(著作権者等)へ直接支払う。(JASRAC)

契約チェックリスト(契約書に必ず入れるべき項目)

  • 使用の目的・媒体(YouTube、テレビ、映画など)
  • 使用期間・地域(国内のみか全世界か)
  • 使用範囲(サムネ、BGM、挿入映像など)
  • 対価(固定額 / ロイヤリティ率 / 収益分配)
  • 再許諾の可否(サブライセンス)
  • クレジット表示の有無と文言
  • 責任・保証・免責(権利侵害があった場合の負担)
  • 解約・権利停止条件

よくある誤解と現場の“裏”話(リアル例つきで)

  • 「YouTubeに上げるだけなら黙認される」 → ×:黙認されることもあるが、広告収益化など商用性が生じると通告→削除→賠償リスクに発展する。
  • 「レコードの音源を使えばOK」 → ×:マスター音源の権利(原盤権)と作曲権は別。両方の許諾が必要。
  • 現場の話:ある小さな制作会社は「音楽は全部フリー素材」で済ませようとして、後で高額の請求(未許諾使用)を受けたことがあります。経験者は言います。「ケチらず初めにちゃんと許諾と契約を取れ」と。これは本当に正しいアドバイスです。

まとめ(現場で使える超簡潔チェック)

  • 楽曲を使う → 作曲者(出版社)+原盤権者の両方を確認。JASRAC管理曲はJASRACで算定可能。(JASRAC)
  • 出演(短時間ニュース) → 原則謝礼不要だが、商用・密着は契約と謝礼を。現場相場は1万円〜数万円(案件により大差あり)。(EDiT.)
  • 支払い方法は「契約→請求→振込」が基本。領収の保存は必須。
  • 分からなければ権利関係の専門家(音楽出版社、レコード会社、弁護士)に相談。複雑化したらプロに任せるのが一番のコスト削減です。(riaj.or.jp)

最後に

昔、僕の友人ディレクターがミュージシャンの了承を得てBGMを使ったんですが、マスター権の確認を怠ってしまい、後でレーベルから請求が来たことがあります。幸い交渉で和解できましたが、その時の彼の顔は今でも忘れられません。「ちゃんと聞いてよかった…」って。
現場で笑っていられるのは、細かいところをちゃんと押さえているから。面倒に見える手順も、結局はあなたの作品と信用を守るための保険なんです。

著:梅田康宏, 著:中川達也
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