美術作品を撮影してSNSで発信という人がいます。
この場合、美術品を撮影した写真は著作権的にセーフなのでしょうか、アウトでしょうか。
結論から言うと”平面はセーフ、立体はアウト”。
二次元の作品を撮影した写真は作品の著作権の保護期間が切れた作品であれば。
使ってもセーフ。
しかし、立体物を撮影した写真はアウトです。
写真と著作権の関係をざっくりと頭の中に入れておくのが無難です。
著作権の保護期間とは
著作権には保護される期間が定められています。日本では作品を作られた方が亡くなられてから50年。海外(アメリカやヨーロッパ)などでは70年です。
著作権の保護期間が過ぎると著作権は消滅し、保護されなくなります。
ですから、北斎の浮世絵だとか伊藤若冲の絵画などは自由に使えるのです。[1]原本を棄損しない限りで撮影する行為,撮影したものをインターネットで公開する行為は認められます
競売にかけられたルノワールの画に関する動画をつくりたい。ついては、その作品を画集から接写して使用することができるか?
画集から接写することに問題がないか気になる人もいるかと思います。
画集のような、もともと「平面である著作物」を平面として撮影・接写した場合。
撮影に関してアングルなどの創作性が働かないので、撮影した写真に著作権は発生しません。
このケースでは、ルノワールの絵は著作権の保護期間を過ぎているため自由に使うことが可能です。
古い仏像に関する話題を動画にしたい。仏像が映った写真を使用することができるか?
同じ美術作品でも立体の作品は注意が必要です。
まず作者の権利についてですが、古い仏像そのものは製作者が亡くなられて歳月が経過しているので仏像の著作権は消滅しています。
しかし、仏像を撮影した写真について著作権が発生します。
なぜなら、仏像や彫刻のような「立体の著作物」を撮影した場合は、撮影に関して写真家の創造性が働いているからです。
創造性とはカメラの角度やレンズの使い方、照明の当て方などです。
その写真について撮影者に著作権が発生することがあります。
したがって、この場合のような仏像の写真を利用する際は、撮影者に権利処理をしなくてはなりません。
例えば出版物を撮影する場合、作品に正対して撮影した写真は、出版物の権利は発生しますが、撮影者に対しては権利処理する必要はありません。
ところが、対象を斜めから撮ったり、光を当てて撮ったりした写真があった場合は、その写真を撮影した撮影者の権利が認められるのです。
平面か立体か
ここから先はおまけ情報です。次に美術作品と著作権について見ていきます。
美術作品の撮影に際してよく聞くのが、公の場所に展示されている立体著作物の撮影についてです。
屋外のモニュメントなどの立体造形物を自由に撮影すること。
撮影した写真を自由に使うことができるかという相談です。
自由な往来が可能な屋外に置かれた美術作品は自由に撮影ができます。
企業などが作成した商標やロゴなどを除いて撮影した写真はブログなどで自由に公開することもできます。
美術作品であっても、平面の作品か立体の作品かで扱いに差が出てくることがわかります。
ゆるキャラを撮影する際の注意
屋外イベントで元気に愛想を振りまくゆるキャラ。撮影に関しても権利が発生します。
ニュースの特例
著作物の利用に際して特別な扱いを受けられるのがニュースなどで使用する場合です。別のルールが適用されます。
著作権の第41条にある「時事の事件の報道のための利用」という扱いや、第32条「引用」に該当するケースと考えられるためです。
いずれも条件を満たしていれば、写真の著作権者に承諾を得ずに使用が可能です。
問題になりやすいのは写真を二次利用して作った作品が営利を目的としていた場合です。
撮影者の金銭的な利益を損なうことに繋がりかねないので要注意です。
美術館の撮影禁止と著作権
さて、作品を自分で撮影する場合はどうなのでしょう。
美術館では,必ずといってよいほど,「撮影禁止」という告知が行われています。
展覧会場でよく見られるのが
- 特定の場所にある作品の撮影のみOK
- カメラの撮影は禁止、携帯電話での撮影のみOK
- スマホの撮影はOKだがスマホでの動画撮影は禁止
- フラッシュや三脚の使用禁止
著作権的に撮影ができないという意味なのでしょうか?
細かい制約がある場合が普通です。
しかし、規則に違反した場合でも著作権の侵害には当たりません。
また所有権の侵害もなりません。
所有権は、写真を撮影したり、書籍やグッズにしたりという無体的な利用(情報価値の利用)をコントロールする権利ではないからです。ただし、態様や結果によっては、不法行為責任を追及される場合があります。
禁止の理由は,おそらく絵画に「フラッシュ」をあてることで絵画が劣化することを怖れてのこと。
さらに大勢の観覧者が撮影をはじめることによる混雑を嫌ってのことだと思われます。
撮影禁止とは、美術館の管理者が設定したルールです。
館内のルールに違反するということは,美術館の管理者の施設管理権を侵害するという別の法的問題が発生するのです。
まとめ
動画制作という仕事は他人の権利を侵害する可能性とされる可能性を同時に抱える仕事です。
トラブルを未然に防ぐためにも「権利の所在」を頭に入れ、自分の身を守るためにも権利について知っておくべきだと思います。
今の時代に則して「デジタルコンテンツ」を中心に、著作件とは何か、「侵害」するとは何か、契約上抑えておくべきポイントなど、作り手として知っておくべき著作権・権利について分かりやすくまとめられています。判断の基準となる判例について、ネット等で検索できるように事件名だけでなく事件番号まで掲載されていました。
References
↑1 | 原本を棄損しない限りで撮影する行為,撮影したものをインターネットで公開する行為は認められます |
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こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 写真の権利 を書きます。