【選書】作曲する弁護士が書いた 権利 の本「音楽・動画クリエイターの権利とルール」

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 権利 を書きます。

作った動画を投稿する際、著作権に悩むことありませんか。

使用した写真や音楽の権利。人物の映り込み。フォントやロゴ。

自分が作ったものでなければ、無断で動画に使うと訴えられるかもしれません。

仲間内や趣味でいるうちには問題にならなくても、コンテンツをビジネスにしたとたんにシビアになるのが著作権です。

プロのクリエイターの中には創作は得意でも「権利はわからない」人が少なくありません。

「クリエイターにわかりやすく著作権や契約について学べる本があればいいのに」と立ち上がった人がいます。

弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール

本を書いたのは、動画・音楽関係の会社やゲーム会社などの法務を行いながら、アイドル向けの作曲活動を続けている弁護士の高木啓成さん。

弁護士 高木啓成⚖️🎼さん (@hirock_n) / Twitter

仲間のクリエイターからちょくちょく著作権問題や契約相談を受け続けるうちに、「これではいかん」と相談内容を一冊にまとめました。

活字が多く、表現もわかりにくいのが一般的な法律の専門書です。

著作権自体が複雑な上、業界になじみのある法律関係者が多くないこともあり、著作権トラブルに悩まされる人も少なくありません 。

この本では、クリエイターがよく落ちる”落とし穴”を中心に、直感的にわかることを優先して解決策がまとめられています。

メロディやフレーズをマネしたら「著作権」侵害です。・・・たとえ一秒しか使っていないとしても、ピッチ変更やエフェクトをかけて原型がまったく分からなくなるまで加工したとしても「著作隣接権」侵害になると考えられます。

「ピッチ変更やエフェクト」という表現は類書では省略されるようなディテールです。

でもこうした事例があることで、クリエイターは直感的になにがアウトなのか知ることができます。

音楽と動画の権利とルール

本書は大きく二つに分かれています。第一章が音楽クリエイター編、第二章が動画クリエイター編です。(第三章は契約・トラブル編と題して契約書の締結の仕方やトラブルの事例、そして巻末にはモデル契約書のひな形が掲載されています)

動画の権利だけ勉強したい人は99ページ以降の映像クリエイター編(~195ページ)を開きましょう。撮影から制作、YouTube投稿や契約、委託業務まで、よくあるトラブルとその解決法がイラスト付きで解説されています。

一例をあげます。

・道路や公園など、撮影の場所について注意すべきことは?
・撮影中に通行人が写り込んでしまっても問題ない?
・撮影中に看板やポスターが写り込んでしまっても問題ない?

音楽まで手がける人には第一章の音楽クリエイター編を開くと、基本的な著作権の考え方からはじまり、楽曲の使用料まで学ぶことが出来ます。

友だちとバンドを組んで作品を出したらそこそこ売れて、レコード会社から誘いの声がかかった時にどうするのか。楽曲が売れて対価が支払われる時の契約は。放送局などで使われたときの支持使用料の請求方法はなど、具体的です。

難しい法解釈用語を使わず、ビギナーむけにわかりやすく著作権の疑問に答えているのがこの本の特徴ですが、他の本にはないのがビジネス支援の視点です。個人事業者として制作にあたられる人に役に立つのが巻末のモデル契約書です。

chapter 4 モデル契約書集
・楽曲提供契約書
・仮歌業務委託基本契約書
動画制作委託契約書
・脚本執筆委託契約書
・出演契約書

契約書は当事者間で交わされるため、参考にしようとしても初心者はなかなか参考例を見る機会がないと思うので助かります。

まとめ

他人の楽曲を使って動画を作る場合。作った動画を使って収益を上げる場合など、ビジネスにしたとたん制作に権利の問題はついてまわります。

著作権の世界は広いので一度に学ぶことは出来ませんが、知識として全体像を押さえておくとトラブルに巻き込まれたとき慌てずに対応することが出来ます。

ざっくり見渡して、気になるところを掘り下げる姿勢で学ぶためにはガイドになる本です。

高木啓成さん

動画・音楽関連企業、ゲーム会社、タレント事務所、デザイン事務所などをクライアントとし、著作権法を中心とするエンターテイメント法務を取り扱う。
テレビ出演、新聞・雑誌・インターネットメディアへの寄稿、企業・団体の勉強会やクリエイターのイベントなどでの講演も積極的に行う。第二東京弁護士会所属。作曲家として、主にアイドルへの楽曲提供を行っている。