【しごと】FAQ「 成果物のマスターデータ ください」と言われた時の対処法など

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 成果物のマスターデータ を書きます。

動画制作を請け負うと、たまに委託元から「成果物のマスターデータください」といわれることがあります。

こうした要望に簡単にOKしない方がいいです。

なぜなら、納品物と成果物のマスターデータとは別物だからです。

この記事では、「成果物のマスターデータ ください」といわれた時の対処法など仕事を進めるうえでの困りごと対策を紹介します。

「成果物のマスターデータ ください」といわれた時の対処法

商用で動画制作を行う場合、仕事は委託元と委託先の関係になります。

委託元と委託先とは、言い換えると動画制作を発注する側と受注する側(私のような動画制作者)の力関係にもよりますが、「成果物のマスターデータ ください」といわれてしまう場合があります。

この場合「成果物のマスターデータ」というのは、PremiereProやAfter Effectsのプロジェクトファイルのことをさします。

成果物は書き出した動画ファイルで、テロップやエフェクトの改変は基本的に難しいのに対し、プロジェクトファイルはソフトさえあれば改変可能なこと。

さらにプロジェクトファイルの中に素材がある場合は、その素材を第三者が自由に使えてしまうことを意味します。

なので、委託先である動画制作者からみると、

  • 必死こいて積み上げたキーフレームやエフェクトが使われてしまう
  • 使用した素材が目的外利用される恐れが発生する

などのリスクがあります。

よくあるケースは

「ついでにマスターデータもつけてね」とか「動画に使用した静止画を印刷したいので」という相手側の軽い依頼です。

委託元の担当者の中には、著作権のルールについて初心者同然の人も数多くいます。

しかし、世の中そんな人ばかりではありません。

無知な相手からできるだけふんだくってやろうという業者も紛れています。

駆け出しの動画編集者などは、仕事が欲しいということなどから、仕事の発注元に頭が上がりにくいケースがよくありますが、相手の言い分をそのまま受け入れてしまうとタダ働きになりかねません。

そのため、仕事を受注の際は成果物とマスターデータの扱いは明確にしておくことが肝心です。

最強の解決策 契約書もしくは覚書を交わす

トラブルを未然に防ぐには契約書もしくは覚書を取り交わしておくことをお勧めします。

具体的には「成果物(納品する動画のこと)」の項目に「マスターデータ」の扱いについて下記のような文言を追加することです。

業務委託契約(請負型)の(成果物の帰属)
本契約における成果物にマスターデータ(乙が甲に引き渡す本契約の成果物となるデータ以外の編集が可能なデータ)は含まれない。なお、甲がマスターデータの引き渡しを希望する場合は、甲は乙と協議して、支払う対価を別途決定するものとする。

こうしておくことで、成果物とマスターデータに別々の対価を発生させることができます。

業務委託契約と準委任契約

動画制作の仕事は幅広く、コンテンツ納品で終わる場合もあればプロジェクト全体を長期間にわたり見ていく仕事もあります。

その時結ばれるフリーランスとクライアントとの契約は業務委託契約と呼ばれ、この契約は法律上では請負契約と準委任契約のどちらかに分けられます。

契約を結ぶ際、業務委託や準委任など契約の違いを理解しておくことが重要です。

準委任契約とは

準委任契約の特徴は「仕事の完成ではなく、受託業務そのものを行うこと」にあります。 この契約では、欠陥や不具合があった場合に負う瑕疵担保責任は発生しません。一方、請負契約とは、当事者の一方が業務の結果により生じる成果物を完成させることを約束し、相手がその成果物に対して報酬を支払うことを約束する契約のことをいいます。そのため、請負契約では、「仕事を完成させる義務」が発生します。 この契約は仕事の目的物に対して不具合や欠陥があった場合、瑕疵担保責任を負うことになるため注意が必要です。 つまり、請負契約は準委任契約とは異なり、仕事を完成させる義務があり、完成させた仕事に対して報酬が支払われます。 また、瑕疵があった際には瑕疵担保責任を負うことになります。

準委任契約のメリット・デメリット

準委任契約では請負契約よりも負うべき責任が軽いため、受託者にかかる心理的負担が少ないというメリットがあります。 そのため「準委任契約>請負契約」のイメージになりがちですが、売上視点では、案件毎の請負契約の方が高いといったケースがありますので、 このあたりのバランスは正直難しいところです。

基本的には、クライアントから提示される業務委託契約に沿って締結をすることになりますので、こちらが契約形態を決めることは難しいですが、ルーチン化している運用・更新作業等については、「準委任契約」で必要な時のみ専門的な業務を任せるなどの方法があります。

業務内容によっては、メリット・デメリットを理解した上で、そのことをフリーランス側から提案することも良いかと思います。

免責事項の書き方

取引内容を補足する形で責任や基準を明確化するためによく使われるのが免責事項です。

一般的には、契約書や見積書に記載して、当事者間の責任の範囲を限定したり、品質基準を定めたり、誤解や誤用による問題回避を予防するために使われます。

書き方の参考例をご紹介します。

見積書によく書く免責事項

例1)修正の回数や内容を詰めきれてない場合
  →修正作業の対応範囲については、事前に相談の上決定させていただきます
  →記載業務以外が発生した場合には、別途お見積りをさせていただきます
   
例2)納期が曖昧になっている場合
  →制作スケジュールに記載した納品月末を検収日とさせて頂きます

例3)打合せやロケハンなど実費経費がかかりそうな場合
  → 交通費等諸経費は別途実費請求させていただきます

例4)ざっくり見積もりをしてほしいと言われている場合
  → 最終の制作内容に応じて、費用は変動する前提です
  →詳細内容が決まり次第、最終御見積をご提示いたします

まとめ

私も含めてですが、制作現場の人の多くは「つくること」に関しては興味があるけれど、法律のことになると「避けて通りたくなる」人が多いです。

悩むことがあったらお薦めするのがプロに助けてもらうことです。

私の場合は、商工会議所とか行政に近いワーキングスペースなどのサービスを受けることでいざという時頼れる連絡先を持つようにしています。

士業の方に仕事を依頼すると結構な出費を覚悟する必要がありますが、相談するだけなら無料の窓口もかなりあります。

一人で悩まず、頼りになる相談相手を持ちましょう。