【法律】 建物の外観撮影 はセーフですか、アウトですか

模写と著作権
フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 建物の外観撮影 を書きます。

撮影をしているとき気になるのがさまざまな許諾のこと。

通行人の顔や広告、キャラクターなど不用意に公開すると、あとあとトラブルの種になることがあります。

建物の外観撮影 はセーフか、アウトか

こんな質問がありました。

最近工業地帯の夜景写真を良く目にします。工場の壁にはたいてい 「撮影禁止」と看板があります。工場に限らず、一般的な建物の外観は「著作権」や「肖像権(肖像パブリシティー権)」はあるのでしょうか。

カメラマンの知り合いに相談して確認しました。

建物の外観の撮影とその権利について

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結論から言うと、「公的空間から施設を撮影する場合は、法的には全く制限を受けないし、その根拠もない」です。

例えば、工場の外観を道路から撮影しているところを工場の人から咎められたとします。

この場合、取材者が相手の管理区域内(敷地内)に肺って撮影していたならば制限を受けるのも理解できます。

著作権というよりも敷地管理権に触れるからです。

しかし、公的な場所。道路などから撮影する場合は相手の主張にはまったく根拠がなく、正当性もないのです。

著作権の規定をおさらいします

【著作権法第2条】著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文学、芸術、美術または音楽の範囲に属するものを言う。

【同 第10条】「建築の著作物」も著作物の一つとして例示されている

一般的な建物の場合には、著作権法第2条に記載がありません。

つまりそもそも著作権がないのです。従って撮影しても著作権には触れません。

では、10条にある「建築の著作物」とはなんでしょう。

【著作権法第10条1項5号】では〔著作物の例示〕具体例の一つとして〔建築の著作物〕を例示しています。(例)宮殿、城郭、寺院、凱旋門、橋、塔、博物館など

著作権法のくくりの中にあるように、建築の著作物には、創作性の有無という条件があります。

つまり建築芸術としての創作性が評価できるようなものでなければ「建築の著作物」とは言えないのです。

工場の外観に建築芸術としての創作性があるかというと、到底思えません。

よって「建築の著作物」とはいえないので、著作権はないことになり、撮影したものを自由に公開できるのです。

次に「肖像権」についてですが、肖像権とは他人から無断で写真を撮られたり、撮られた写真が無断で公表されたり利用されたりすることがないように主張できる権利です。

肖像権には、人格権の一部としての肖像権と、財産権としての肖像権があります。

一般的な建物には肖像権はありません。理由は人間ではないからです。ついでに言うとペットにも人格権はありません

以上の理由から、敷地の外や公道上から撮影するのであれば、法的にまったく問題がないのです。

スカイツリーの場合はどうなのか

「建築の著作物」 を巡っては東京タワーや東京スカイツリーを巡る議論が参考になります。

東京タワーや東京スカイツリーの写真を無断で商業媒体に掲載すると、冗談抜きでいきなり使用料の請求書が送られてくる場合もある


商用利用で東京タワーを勝手に写真に撮っちゃいけないのはなぜ? – 著作権法 など – シミルボン

営利を目的とした撮影に対して網をかけた事例です。

著作権法はもともと金銭的な利害を調整することを目的としたものといえるので、作る側も創作と営利とを切り離し整理して考える姿勢が大切です。

単純に「商用利用で東京タワーを勝手に写真に撮っちゃいけない」わけではない、ということは頭に入れておいたほうがいいだろう。商用利用すべてがダメ、というわけではない。


商用利用で東京タワーを勝手に写真に撮っちゃいけないのはなぜ? – 著作権法 など – シミルボン

人物の撮影は受忍限度が尺度になります

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人物の撮影にあたっては、撮影の主旨と扱い方など十分な説明を行い、了解を得る必用があります。肖像権には”財産”と”人格”の二つの柱があります。

通行中の人を撮影した際に注意が必要なのは人格としての肖像権です。

単純に「勝手に自分の写真を撮影されたり公表されたりしない」という人格的利益を保護するのが目的で、モザイク処理が必要になるケースはこの人格権に配慮してのことです。

肖像権侵害があるかどうかについては、基本的に、その撮影や公開が被写体の受忍限度を超えるかどうかによって判断されるので、権利者である被写体が撮影や公開について許可をしている場合には、肖像権侵害になりません

まとめ

受忍限度とは相手のガマンの限界ということです。

ガマンの限界には金銭的な限界と、モラルとしての限界の二つがあります。

撮影する側に立つと相手のことが見えなくなりがちです。

可能な限り中立的な第三者を間に置くなりして危機管理に注意を払う姿勢が肝心です。

著:梅田康宏, 著:中川達也
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