
ドラマや映画などでよく見る路上撮影。投稿動画などでもあまり気にせずに撮影することがあります。しかし、道路での撮影は交通の妨げになることなどから、事前に許可をとる必要があると言われます。(事件や事故などの緊急報道は事前に許可を得ることが不可能なので、結果的に許可のない撮影が許される場合もあります)
道路で撮影する場合、気をつけなくてはならない注意点をまとめました。
目次
道路の撮影許可とは
道路での撮影許可は、道路交通法では「一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」と規定されています。
私たちは、スマホなどを使って撮影するYouTube動画も、映画やテレビなどの撮影もひっくるめて”撮影”とイメージしがちです。しかし、道路など公共の場を管理する側から見ると、境界線が引かれているのです。
どういう行為に許可が必要かは、各都道府県の道路交通規則によって定められています。特に注意すべきなのは例示として挙げられている「ロケーション」です。
ロケーションとは

その境界線を示す言葉が「ロケーション」では一体ロケーションとはどういうものをいうのでしょう。
ロケーションとは道路を占有したり、人が集まったりする撮影行為をさします。具体的なイメージとしてはドラマ撮影や数十人規模のスタッフが関わる番組のロケなどです。つまり、ロケーションとは「管理上支障を及ぼすおそれ」のある行為をさすのです。
放送局時代、地方選挙の事務所中継に携わったことがあります。事務所中継とはいわゆるバンザイ中継です。当選した候補者の喜びの声、落選候補事務所の敗戦の弁を生中継するものです。
選挙事務所はだいたい駅前の賑やかな場所に設営されていて駐車場もない場合が少なくありません。放送局の中継車は事務所近辺の路上に止めざるを得ない場合がほとんどです。そのため選挙が始まると、私も何度か所轄の警察署まで道路使用許可を申請をしに行きました。
警察の窓口もよくわかっていて、申請もあっけなく済みました。先輩からは「大都市の交通量が極端に多い路上などでなければ問題なく許可は下りる」と言われた記憶があります。
著しい影響
反対に、道路使用許可申請が曖昧なケースもあります。曖昧というのは、黙認されるケースです。どういうケースかというと、情報番組などのようにカメラとリポーターだけで三脚もつけずにインタビューするような内容です。
番組を作る側からすると、仕事の内容は同じなのに使用許可が必ずしも必要ではないケースは判断に迷います。経験を積むにつれわかってきたのが路上撮影には見えない線引きがあることでした。

ポイントは「一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」です。例えば路上であっても交通量がゼロに近い過疎地の路上で撮影をする場合、所轄の警察署にいちいち許可願いを持って行ったとしても嫌な顔をされるだけです。影響が及ぶ一般交通がないからです。
多少の通行がある路上でインタビューする行為についても同じです。手持ちのカメラで撮影するロケクルーの立ち居振る舞いは通行人と同じです。数人のロケクルーが通行人と同じ動作で行う規模のものは「一般交通に著しい影響を及ぼす」ことには当たらないとされます。
ただし注意しなくてはならないのがカメラを固定する三脚です。
道路交通法第76条では、何人もいかなる場合にあっても、交通の妨害となるような方法で物をみだりに道路に置いたり、道路上の人や車を損傷させるおそれのある物を投げるなどの行為を行うことは禁止(絶対的禁止行為)されています。
道路使用許可の概要、申請手続等|警察庁Webサイト
三脚を置く行為は「物をみだりに道路に置く」行為に該当します。
カメラを三脚に載せることは通行の邪魔になる撮影に当たる可能性もあります。判断するのは管理者の側なので迷ったら確認した方が安心です。
申請について
通行の邪魔をしないということが大原則の許可願い。規制ばかりでシュリンクしてしまいがちですが、撮影をする側がしっかり持っておきたいのが、なんのために撮影するかという明確な理由です。
ガイドラインにはこんなことが明記されています。
地域活性化等に資するという社会的な意義があり、地域住民、道路利用者等の合意に基づいて行われるイベント等については、道路使用許可手続が円滑に行われるよう配意した運用を実施しています。
道路使用許可の概要、申請手続等|警察庁Webサイト
申請にあたっては使用許可の理念を踏まえた上で配慮を持って行うことが大切です。
- 許可が下りるには3営業日程度はかかるので早めに申請する
- 撮影にあたっては許可条件を遵守する
- 地域や周辺住民の理解が得られるよう心がける
- 当日は申請した現場責任者が必ず立ち会う
まとめ
撮影の日時、場所や照明機材の扱い方、階段やエスカレーターなどでの撮影など、許可を受ける際の注意すべき事項は東京都のフィルムコミッションの「東京ロケーションボックス」ホームベージなどに記載されています。公共の場所を使っての撮影には事前に説明をよく読み、十分な注意を払って行いましょう。