プライバシーやコンプライアンスがますます厳しくなった昨今。一昔前ならOKだった街角のスナップ写真も、不用意に公開するとトラブルの種になります。
なので、人の顔や商品の看板、車のナンバーなど、個人が特定されるものを公開する際、”映っているものをモザイクで隠す”という動画編集のスキルは必須です。
ここでは映像にモザイクをかけることについてまとめます。
Premiere Proには見せられないものにモザイクをかけたり、被写体を自動追従する機能があるので、使いこなしましょう。
モザイクをかける基本の流れ
Premiere Proで動画の一部にモザイクをかける基本の流れは次の通りです。
Premiere Proに動画を読み込み、[エフェクトコントロール]を開きます
クリップ全体に[ビデオエフェクト][スタイライズ]にある[モザイク]エフェクトを適用します
※モザイクがかかって見えづらければ[水平ブロック][垂直ブロック]の数値を上げると見えるようになります
[マスク]で[モザイク]をかけたい範囲を決めます。円形のマスクを適用しました。
円の中だけマスクが適用され、モザイク効果が残りました。円の外側はマスクの効果が消えています。
モザイクの粗さの調整は[水平ブロック][垂直ブロック]を使って行います。
これで対象物にモザイクがかかりました。
なお、モザイクは複数設定ができます。設定したモザイクの数だけ[エフェクトコントロール]に[モザイク]がナンバリングされて表示されるので、それぞれ調整を行います。
さて、動画の場合困ったことがあります。それは動きです。
動画の場合対象物が動くとそのままではマスクの位置が変わらないためモザイクが外れてしまいます。
なので、動画の動きに合わせてモザイクを追従させます。
追記 対象物にはモザイクをかけず、周囲にモザイクをかけたい場合
対象物は見せてもいいけど、周囲のものはNGという場合があります。
近隣が特定されるとプライバシー的に問題になるような事件ものやお宅拝見ものなどです。
この場合は、被写体と背景の設定を逆転させることで簡単に対応できます。
方法は簡単。[マスクの拡張]の右下にある[反転]にチェックをいれるだけです。
モザイクを自動追従させる方法
対象物の動きに合わせてモザイクを追従させる手順は次の通りです。
- [モザイク]を始めたいタイミングまで[タイムライン]を戻します
- 始点が決まったら[エフェクトコントロール][マスクパス][トラッキング方法]を開いて[位置、スケール、回転]が選択されていることを確認し、[時計マーク]をクリックします
- これで始点に[キーフレーム]が打たれます
- 続いて[マスクパス]の「▶︎」ボタンをクリックします
- するとモザイクがかかった[マスク]が対象物を追従・トラッキングしはじめます
- 画像の状態によってはうまく追従しない場合があります。
- そんな時は以下のトラッキングのずれを修正します
- トラッキングが完了したら、モザイクマスクの自動追従の設定は完了です。
トラッキングのずれを修正する
Premiere Proで自動追従を設定すると、ケースによっては被写体の動きを捉えきれずに、自動追従にズレが生じることがあります。
その場合は手動でズレた箇所を指定することで修正ができます。
- ズレた時点で適宜トラッキングを止めます
- [マスクパス]の文言をクリックします
- するとモニター画面上に[マスクパス]の範囲が表示されるので、マウスを使って正しい位置に置き直し、キーフレームを打って補正します
- 誤ってキーフレームを打ってしまった場合はそのキーフレームをマウスでクリックして青色にアクティブにすることでデリートできます
- その後のモザイクのズレも1〜2の手順で全て修正します
- もしくは、ズレを直した位置から再びトラッキングを行います
モザイクを必要な時間だけかけたい場合 4つの解決策
以上の方法は、クリップ単位にかけることになるため、クリップの途中から特定の時間だけモザイクをかけたい場合は工夫が必要です。
方法は数パターンあります。
- モザイクをかけたい範囲だけクリップを分割し、その部分だけモザイクマスクをかける
- クリップ全体にモザイクマスクをかけるが、かけたくない部分はキーフレームで[水平ブロック][垂直ブロック]の数値を0にしてモザイク効果を消す
- モザイクをかけたい部分だけトラックの上に調整レイヤーを置いてその上にモザイクマスクをかける
- エフェクトコントロールの[マスクの不透明度]を増減する
ここでは③の調整レイヤーを使う方法と④の不透明度を増減する方法を解説します。
調整レイヤーを設定するには
- まず、トラックに[調整レイヤー]を適用します
- [プロジェクト]を選択の上、[メニュー][ファイル][新規]から[調整レイヤー]をクリックします
- すると[プロジェクト]に[調整レイヤー]が生成されます
- [調整レイヤー]をタイムラインの最上部にドラッグ&ドロップします
その下にある動画を見ながらモザイクをかけたい範囲だけ[調整レイヤー]の範囲を決めます。
[調整レイヤー]に[モザイク]エフェクトを適用しますあとは基本の流れに沿ってマスクをかけます。
すると、調整レイヤーを設定した区間だけモザイクが適用されることから、オンオフされたような効果を作ることができます。
モザイクのオンオフを切り替える方法
調整レイヤーを使わずにオンオフしたい時は、エフェクトコントロールの[マスクの不透明度]を利用する方法があります。
やり方はキーフレームを使います。
タイムライン上でモザイクをかけたい部分とかけたくない部分にキーフレームを設定します。
モザイクをかけたい部分は[マスクの不透明度]の数値を100%に設定します。
反対にかけたくない部分は0に設定します。
すると動画にモザイクをオンオフすることができます。
モザイクを消す方法
すでに動画に設定されたモザイクはもとの映像に戻すことはできるのでしょうか。
「動画のモザイクを削除する方法ってないもんですかねー?」という質問をよく目にします。
いったん画像にかけられたモザイクを元に戻すのは基本ムリです。
Premiere Proでモザイクをかけるということは、画像を粉々に砕くようなものだからです。
しかし、最近のAIの進歩から、元に戻すことはできなくても、元あった画像を類推してモザイクを消すことができるようになりました。
モザイクのかかった画像をモザイクのない画像に変える技術はこれまでも開発されてきましたが、新たに、人工知能アルゴリズムを使うことで、これまで以上に細部まで再現したリアルに近い画像をモザイク画像から作り出せる技術が開発されました。この技術を使うと16×16ピクセルの画像を数秒で1024×1024ピクセルに変換し、まるでHD解像度のように仕上げることが可能とのことです。
モザイク画像の解像度を64倍にして限りなく高品質の画像を生み出す技術が開発される – GIGAZINE
ディープラーニングを使って画像を復元するAIアルゴリズムソフトが、アメリカのデューク大学研究チームが作ったモザイク除去ソフトPULSEです。
使い方は次の通り。
- Google ColabでPULSEを開く→PULSEのデモページへ
- imageを1、factorを64にする
- 再生アイコンをクリック
- 警告が出ますが問題ないので、そのまま実行します。
PULSE: Self-Supervised Photo Upsampling via Latent Space Exploration of Generative Models
チュートリアル
まとめ
Premiere Proでモザイクをかける方法についてまとめました。
- Premiere Proでモザイクをかける基本の流れ
- モザイクを自動追従させる
- トラッキングのずれを修正する
- 「モザイク」ではなく「ブラー」エフェクトでぼかす
- モザイクを出したり消したりする
- モザイクを消す方法
個人情報保護やコンプライアンス遵守など情報管理がますます厳しくなっています。
素材を見て違和感を感じたら対応する癖を身につけましょう。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 モザイクで消す を書きます。