初心者が楽に作れる 街歩き動画の撮影術

街歩き撮影法
フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 街歩き動画の撮影術 を書きます。

先日こんな質問をいただきました。

「街歩き」を「どのように」「撮影」したらいいか。

手法としての街歩きがブームです。

私もよく撮影しますし、YouTubeでも人気チャンネルがいくつも生まれています。もちろん、テレビ番組の企画は数えきれないほどあって、安定した視聴率を稼いでいます。

街歩き動画の魅力

「街歩き」動画の魅力は、とにかく簡単に撮影を始めることができること。初心者の人にお勧めするのが、自分の家の中を撮影すること。それだけでも面白い絵が撮れます。

上記の映像はたまたま見に行った藝大祭の会場を撮影したものですが、空間の広がりや展示された作品の力もあって15分近くのミニ紀行になりました。

放送局員として、仕事目線で解説すると、「街歩き」は比較的予算をかけずに作ることができるというメリットがあります。段取りさえつけていれば、予定の時間内で撮影は終わります。

撮影時間がかからないということは、人件費が計算できるということ。カメラマンが一日三万円、機材費が音声・照明機材こみで一式5万円。バラエティのように出演者のリアクションを撮るためにマルチでカメラを運用する場合はカメラクルーが増えますが、それでもスタジオでセットを組んで収録するより経費を抑えることができます。

簡単そうに見えるかもしれませんが、テレビの街歩きは、編集にエネルギーを注ぎます。編集では、とにかく膨大な映像の中から使える絵を選んでいきます。

私が現役のころ、ビデオで撮影していた時代は、放送時間の5~6倍の素材を撮影しました。デジタルでマルチカメラでの撮影が普通の現在ではさらに素材は多いと思います。

撮影した素材はラッシュで確認しながら使えるシーンや使えるセリフをチェックします。編集マンは、上澄みのように残った使えるかっとを選びながら、複数のカメラが撮った膨大な映像をざくざくカットしていきます。

普通なら繋がらないシーンも、ベテランの編集マンなら瞬速で意味の通ったシーンにつなげてくれるのです。

街歩き動画の撮影法

「街歩き」を 「どのように」「撮影」 したらいいかという質問ですが、「編集を想定して撮る」というのが私の持論です。撮るべき絵をしっかり撮っておかないと編集ができないという単純な理由です。したがって撮っている時も頭の中で、この絵はどのシーンで使えるか常に考えています。

では、なぜ編集にこだわるかというと、編集は単に絵をつくぐだけではなく、話の流れを整理する機能があるからです。

映像の中には、撮影の際意図していなかった意味が隠されている場合が往々にしてあります。撮影の際気が付かなかった映像の秘密が、編集段階で絵をつなぐ際見つかることがあります。

街歩き動画の撮影は、絵の中に埋もれていた「興味深い」シーンがいくつ撮れているかが出来上がりを左右する場合が多いのです。

すみません。これでは答えになりませんね。

では、どのように撮影するかという視点で考えてみましょう。

二子玉川・桜紀行・上野毛~多摩川

どの番組でもいえるセオリーですが、「入り口」と「出口」を意識するのが物語をつくる秘訣です。入口とは、これから何をするのかという目標設定。出口とは目標達成とその評価といったらいいでしょうか。

上記の番組を例にとると、入り口は起点の駅、終点・出口は多摩川のほとりです。物理的な動線とは別に、沿線の桜を見て回るというサブテーマが物語を引っ張る仕掛けとなっています。

なぜ入口と出口を意識するかというと、

頭とおしりをしっかり結んでおけば、中身がどう変化しようと理屈をつけさえすれば着地できます。

たとえば「街歩き」の撮影で言うと、これからどこに行くのか、途中でどこに立ち寄ってどんな目的を果たすのかという決意表明をしてしまうのです。

ルートを事前に知ることで、視聴者は安心して動画を見ることができます。行き先があるていどわかっているから、途中の風景を楽しむことができるのです。

着地点をどう撮るかは街歩き動画の読後感を左右するポイントです。動画の冒頭で宣言した「これから見に行くもの」にあたるお宝です。

撮影は取りこぼしのないよう念入りに行いましょう。基本はアップをしっかり撮影すること。相手が動かないものであれば三脚を使うなどして、安定した絵を撮ることを心がけましょう。

相手がひとであれば、インタビューを録るなどして着地できるシーンを手に入れましょう。インタビューはとにかく撮影しながら自分の耳に集中することです。「いい話を聞けた」という瞬間が撮れたらそれが着地点。保険を兼ねてあと二つくらいの「いい話」を引き出しましょう。

頭とお尻を意識してから、中盤の構成を考えます。

すべての動画は起承転結の物語で成り立ちます。たとえ数秒の動画であっても見た人の印象に深く刺さるのは物語性のある動画です。

中盤にあたる部分の撮影は制作者の個性が出るところです。

物語を意識する

順番に物語を展開する人もいれば、クイズ仕立てで関心を引き付ける手法もあります。

被写体の印象をわざと高めるために、「これはいったいなんでしょう」と、わざと被写体を見せず被写体を見ている人々の表情を撮る場合もあります。

二子玉川・ビックリ・川の下を潜る川

上記の映像は撮影した後で物語の設定をいじりなおしたものです。街歩きでたどり着いた終点で、水の流れがトンネル上になっていることを発見。そこからタイトルを変更して再構成しました。

大切なのは、動画の撮影に集中していても、客観的な視点をどこかで保っておくことです。醒めた目線で撮れ高を計算する姿勢といっていいかもしれません。

大切なのは撮影をしながら常に現場に注意を払い続けること。そして、事前に組み立てた構成であっても、現場の動きに発見があれば事前の構成にこだわらず、目の前の動きを優先させて撮ることです。

事実は小説より奇なりというように、偶然であれ予測しない動きには頭の中で考えたアイデアを軽かる゛と破壊するほどのパワーがあるからです。

撮影のコツ

二子玉川「第41回 世田谷区たまがわ花火大会」

街歩きの撮影に際しては、自分の目線が観客の目線になることを意識することを忘れてはなりません。

撮影する際は撮影している自分の立ち位置がわかるように「いつ」、「どこで」「何が起きているのか」わかるように撮りましょう。時間を短縮するためにカットを割ることは避け、カメラのスイッチを入れたら多少のことには動じずに長回しすることです。

撮影中はキョロキョロとカメラを振り回さず、習字で筆を走らせるようにカメラの視線を動かすことを心がけます。

見せたいものがあったら立ち止まり、見せたいものに視線を合わせ5秒間静止することを心がけましょう。

5秒間は撮影する際結構長く感じる時間です。間が持たずつい動かしてしまうと、編集の際尺が足りずに苦労します。

撮っているときの時間経過と、見ている時の時間経過は同じではないのです。

まとめ

やって試してちょっと失敗するというPDCAを何回か繰り返すうちにカメラの動かし方を呼吸するように身に着けることができます。

動画制作は、制作者自身が楽しむものではなく、あくまで見た人の立場に立ってつくることが大切なのです。