番組制作費のことを聞かれることがあります。
ざっくりかかる経費は家一軒が買えるくらいかかる場合があります。
番組の制作費はあまり知られていませんが、NHK大河ドラマの制作費は15年前の国会答弁で明らかにされました。1エピソード平均6,000万円です。世界を相手にコンテンツを展開するネットフリックスが一億円規模と言われています。
— furutani (@kenfru3) 2019年6月4日
動画制作にかかるコストの話を、放送番組を査定する側から考えます。
映像制作のコスト は大半が人件費
放送局は編成枠を番組で埋めなくてはなりません。
自社制作できない枠は番組を購入したり、外部の番組制作会社に委託することで埋めます。
外部のプロに制作を委託すると制作費を要求されます。
制作費のわりと大きな部分を占めるのが人件費です。
番組費は人件費でできている
企画書には必ず予算書が付いています。予算書には経費の内訳が書いてあります。
制作費は番組の尺。
つまり長さと制作日数によって伸び縮みします。基本の構造がわかると制作費の査定ができます。
内訳の大半を占める人件費のポイントは4つあります。
- 映像制作のメインとなる撮影部分などを仕切るプロデューサーやディレクター。
- 撮影に携わるカメラマンや照明、音声。制作スタッフ側からはAP、AD。
- 番組によっては、デザイナー、衣装、美粧。
- 編集段階では編集、音響効果、収録エンジニアなどの費用がかかってきます。
番組の内容によって関わる人たちの構成はほぼ決まっています。例えばドラマには衣装や美粧といった出演者周りの要員は不可欠ですが、ドキュメンタリーには必要ありません。その代わりコーディネーターやリサーチャーなどの取材関連の業務が多くなると言う様なものです。
予算書には、スタッフの実働時間×人件費を積み上げていきます。
次に見るのが作業関連費、リソース費
作業関連費、リソース費とは撮影・編集時に使用する機材の費用をいいます。
ロケに際してはカメラや音声機材、照明機材がセットで必要になります。
撮影場所がスタジオならばスタジオ費が、ロケーションならばスタッフの旅費・宿泊費が人数に比例して必要になります。
編集時に使用する機材や居室の使用料、編集したあと完成品をつくる過程で必要になるスタジオ費も計上しなくてはなりません。
完成したコンテンツを公開する際は、ブルーレイディスクなどの媒体費なども見ておかなくてはなりません。
経費査定のツボ
予算書を査定する際は、その番組に必要な”人ともの”が適正に見積もられているかを見たてきます。
ロケ番組なのにセット費が計上されていたら不自然なのでその理由を確かめるといった調子です。
基本になるのが番組の尺、つまり正味時間です。
番組は時間が長くなるほど制作期間が長くなります。
したがって正味時間によって価格帯が変わってきます。
価格ゾーンと言うとアバウトな感じがしますが、過去の番組予算の蓄積から導き出されたもので、結構正確です。
番組は一つとして同じものはなく、制作体制もバラエティ系、報道系、ドラマ系とジャンルによって様々です。
制作に必ず必要なリソースや要員構成は決まった型まとまる傾向があるので、それを参考にしながら突出した部分だけシビアに見ていくと全体を見渡すことができます。
査定のポイントは人数×単価×日数です。
例えば30分のドキュメンタリーでは、ロケが一週間かかるとします。その場合、6泊7日となります。
ロケにかかる人数がディレクター、カメラマン、音声、照明とすると4人、1人の日当が仮に1日2万円とすると2万円×4人×7日でロケの人件費56万円が計算できます。
次に遠隔地ロケの場合、宿泊の日数×宿泊費を加えます。
ロケ先では移動用の車輌が不可欠なので車輌とドライバーの費用×日数を加算します。
こうして積み上げていくとロケだけで百万円規模の予算がかかることがわかるのです。
動画制作を外注する際押さえておきたい知識とは
外部に制作を委託する際は、価格だけを見るのではなく、企画提案者の実績を優先した方がうまくいく場合が多いです。
仕事は遅くとも丁寧な仕事に定評がある人、仕事が早くかっちりした内容に仕上げる人と様々です。
できれば過去の仕事ぶりを確認することが大切です。
映像制作には時間と手間がかかります。
必要な経費は制作に着手する前にあらかじめ見積もり、その見積もりにそって計画的に進めていくことが結果的に作品の品質を高めていく様に思います。
査定をする際の大まかな基準単価など気づいた点をまとめました。
- 基本的にはスタッフ1人当たり1日1~3万円といった計算が主流です。スキルや経験、撮影の規模、稼働日数によって、当然、必要な費用もアップします。
- 見積もりや請求項目は、映像制作会社により様々で、素材費などは編集費にインクルーズされている場合もあります。音楽やCGなどのデザインを施した場合には、素材費、演出費などもプラスされます。疑問に感じたことは制作日程と工程表を思い浮かべながら査定をしていくと正確な制作費に近づけることができます。
- 納品形式別のコスト 撮影→編集を経て完成した動画を納品する際に発生する費用です。
- 撮影データを保存する場合には、ブルーレイなどの保存メディア費用が計上されます。ウェブ動画の場合は、コーディング費用を見積もります。二次利用が想定される場合は別会計として予算から控除します。
映像制作の費用は大きく二つに分けられます。
一つは制作に携わるスタッフの「人件費」、もう一つは撮影や編集の「機材費」です。
人件費については、依頼する作業が増えるほど関わるスタッフの数が多くなり、当然費用も高くなるのですが、どんな場合も「プロデューサー」「ディレクター」「構成作家」「カメラマン」「編集スタッフ」はマスト。
制作する映像の尺(長さ)や内容にかかわらず、プロジェクト全体を企画・管理し(=プロデューサー)、人を動かし(=ディレクター)、シナリオを書き(=構成作家)、撮影し(=カメラマン)、編集する(=編集スタッフ)というプロセスは欠かせないからです。
この5人の人件費をベースに、映像にナレーションを加える場合はナレーターの人件費、さらにモデルを起用したりする場合はヘアメイクやスタイリストの人件費も必要になります。
一方の機材費は、基本的に撮影に使う機材のグレードによって決まります。
カメラ一つとっても、業務用ハンディカメラ、ENGカメラ(肩に担いで使用するマニュアルレンズ搭載の放送用カメラ)、デジタルシネマカメラ(映画撮影などに使われる高性能カメラ)など、種類や性能はさまざま。
照明や三脚も含め、一般的にハイグレードな撮影機材を使っている制作会社ほど機材費が高くなる傾向があるようです。
【企画構成、ディレクション】
映像制作には納品までいくつかのプロセスがありますが、その土台となるのが、企画構成(3万円~15万円)と、ディレクション(5万円~25万円)です。
発注者と打ち合わせを行い、映像をつくる目的や利用方法をヒアリングしたうえで、どんな内容の映像をどの程度の長さで制作するのか決定。
必要な制作スタッフを集め、具体的な撮影方法や撮影場所、スケジュールに落とし込んでいきます。
「映像制作費用の算出方法」でご紹介した区分では、プロデューサーとディレクターの人件費にあたる部分です。
【台本作成、撮影】
次に行うのが台本作成(5万円~10万円)と撮影(8万円~35万円)。
台本作成はシナリオを書く構成作家の人件費。
撮影費にはカメラマンのほか、機材の運搬やセットを担当するスタッフの人件費も含まれます。
また、遠方で撮影を行う場合は、出張費(現場への交通費など)が加算されることも。
ロケハン(撮影場所の下見・選定)については、屋外でwebムービーやプロモーション映像を撮影する場合は必要となりますが、インタビュー撮影や会社紹介ビデオの制作など、だいたいの撮影場所が決まっている案件では省かれるケースもあるようです。
【編集】
撮影が終わったら次は編集作業(5万円~25万円)。
撮影データから無駄な部分をカットしたうえで、シナリオに沿ってカットをつなぎ、適宜テロップなどを盛り込みながら、視聴者に伝わりやすいよう一つの映像作品に仕上げていきます。
進め方は制作会社によってそれぞれですが、まずは大まかな編集(=ラフ編集)を行い、クライアントに全体的な流れや仕上がりイメージの相違がないか確認したうえで、細かい調整を重ねていくのが一般的です。
ちなみに近年注目を集めているVR(仮想現実)コンテンツの制作では、複数のカメラで撮影したパノラマ映像をつなげ、つなぎ目が目立たないように処理する細かい作業(ステッチング)が必要。
そうした作業もこの編集工程に含まれます。
【音響効果】
音響効果の制作・収録(3万円~15万円)には大きく二つの方法があります。
一つは一般に公開されている効果音やBGMを利用する方法。
最近では無料のダウンロードサイトも増えてきましたが、音源によっては料金がかかるものも。
また、JASRAC(日本音楽著作権協会)などが管理するアーティストの楽曲を使う場合も、同様の使用料(目安として5,000円~)が必要です。
もう1つは、制作会社のスタッフがオリジナルの音源を作成して収録する方法。
こちらの場合は、制作スタッフの人件費+機材費や収録スタジオの利用料が費用として計上されます。
最近では機材の進化によって音響効果の制作と映像の編集作業が並行して行われることが増えてきました。
【ナレーション】
最後はナレーションの作成・収録(3万円~10万円)です。
主な内訳はナレーターやスタッフの人件費+収録スタジオの利用料。
当然有名なナレーターを起用すれば人件費は高くなり、ナレーションの長さ(=制作・収録時間の長さ)によっても料金が変わってきます。
ナレーションは会社紹介のプロモーションビデオや製品紹介動画では欠かせない要素ですが、簡易的なインタビュー映像などでは省くことも可能です。
映像制作を外注する際によくありがちなのが、企画構成と修正作業における制作会社との認識のズレ。
「企画費にはシナリオ作成まで含まれると思っていたのに、自社で用意する必要があった…」、「修正回数の制限があって、別途費用を請求された…」というケースが多いようです。
こうした認識のズレがあると直接的な出費はもちろん、制作プロジェクト全体の進行が滞り、さらに費用がかさんでしまうことがあります。
どこまで制作会社に任せることができ、どこから自分たちで対応する必要があるのか、事前にしっかり確認しておきましょう。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 映像制作のコスト を書きます。