映像制作の”設計図” 構成表 をつくろう

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 構成表 を書きます

「何を撮ればいいのかわからない」や「たくさん撮ったけどどう繋げればいいのかわからない」という悩みをよく耳にします。その解決策の一つが、撮影する要素を小さなパーツに分けて整理することです。

パーツをグループにまとめることで、撮影する内容や映像のつなぎ方が自然に見えてくるはずです。

今回は、番組制作の基本メソッドである「構成表」について解説します。特にビジネス動画、例えば商品説明や企業紹介などで多くのシーンやカットを使う際、構成力が求められます。ここでは、NHKプロデューサーが大学生向けに行った実習を基に、実際に役立つテクニックを紹介します。

映像制作の設計図「構成表」をつくろう

動画作りの基本は「構成」です。構成とは、要素を順序よく並べて全体像を導き出すこと。少ない要素ならパターンは限定されますが、要素が増えるにつれて組み合わせは無限に近くなります。これが、編集作業で行き詰まる原因です。

テレビ局では、ホワイトボードにシーンの短文を書いた付箋を貼り、ディレクターと編集者がシーンの順序をあれこれと考えながら、最適な流れを見つけ出しています。しかし、現場ではその方法は使えないため、構成表が必要です。

構成表は、映像作品の流れを一枚の紙で可視化したもの。これにより、企画説明や情報共有、スケジュール管理、ナレーション台本、予算管理など、すべての関係者との共有ツールとなります。

構成表の作り方

構成表

構成表は、映像の内容や時間をまとめた表です。全体を俯瞰しやすくするために、シンプルに数枚にまとめるのがポイント。構成表を企画段階や編集前に作ることで、動画の品質を支えます。

構成表は「映像」「内容」「時間」の三つの要素で成り立ちます。映像の並べ方次第で、全く違う意味を持つことがあるため、シミュレーションを行いながら撮影のイメージを固めます。

コンテンツプロデューサー吉田稜(東京・中野)の 企画メモがわりblog より
コンテンツプロデューサー吉田稜(東京・中野)の 企画メモがわりblog より

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構成を練る

動画制作では、必要な映像を過不足なく集めることが大切です。どの順番で並べれば自然な流れになるかを考えながら、シーンをブロック化していきます。

構成表を作ることで、次の三つのメリットがあります。

1. 必要な素材が整理できる

2. チームで情報を共有できる

3. スケジュール管理がしやすくなる

構成表は映画やアニメの絵コンテに似ていますが、ドキュメンタリーでは、予測不可能な出来事が多いため、撮影前の想定を基にした構成表が重要になります。

構成力の磨き方

動画は活字で書かれた作品のように読み返しができません。したがって、ひと目見ただけで流れが頭に入るように設計しなくてはなりません。

構成力を磨くには、その流れのパターンを自分のものにすることが重要です。放送局では新人のうちに5分程度の企画番組を休むまもなく作らされます。

構成にはパターンというものがあり、テーマを伝えるためにはどのように素材を並べたらいいか自分自身の力で発見できるようになって初めて一人前のディレクターになれるのです。

鉄板方程式 CAMS でつくる動画構成

CAMSとは、CATCH、APPEAL、MOTIVATE、SUGGESTの頭文字を繋げたものです。つかみ、紹介、やる気、行動という流れは人間がものを発見してから行動に映るまでの心理に重なります。

主に広告宣伝で使われている方程式ですが、動画作りにも応用できます。この言葉順に素材を並べていくことで、ざっくりした構成ができます。

CATCH(つかみ)

お笑い芸人が舞台で観客をひきつけるために最初に放つギャグのことです。つかみはターゲットの興味を引きつける効果があります。

動画でよく使われるのが、動画の中の印象的なシーンの一部を先に見せる演出です。「アバン」とも言います。結論を先に見せられると視聴者はそのシーンの続きが気になります。

視聴者にとっても、最後まで見ないと中身のわからない動画は時間を無駄遣いするリスクを感じます。つかみで印象的なシーンをチラ見せすることで、視聴者は直感的にこの動画が誰に向けて何を訴えようとしているのか理解します。動画の冒頭にパンチの効いたシーンを持ってくることで動画全体にリズムも生まれます。

動画の冒頭の短い時間の中に効果のあるつかみを入れることは、制作者だけでなく視聴者にとってもメリットがある構成の一つです。

APPEAL(自己主張)

いったん興味を持ってもらった観客向けに、自己主張するシーンです。先を急いでいる通行人の足を止めたのですから、つかみに続いて間髪入れずに訴求することが肝心です。

この動画を見ることで何が得なのかを明確に伝える部分です。つかみで見せた映像は説明がありません。商品であれば効能やサービスの中身など、動画に関心を持った人にとって解決策や回答になるような内容が展開される場面です。

MOTIVATE(動機)

動画を見終わった後、観客が行動を起こすための動機づけを行う場面です。具体的な事実や評価などを例示しながら、観客が持つ不安や疑問を解決する補足的な情報を伝えます。

SUGGEST(行動の提案)

視聴者に向けてメッセージを提案する場面です。

コマーシャル動画なら売りたい商品のアピール。イベントや旅番組ならアクセス方法などが当たります。

重要なのは、期待する行動について、何をどのようにして行うのか。どのような結果が得られるのか具体的に示すことです。

動画編集のコツは、カット単位の映像に目を奪われるのではなく、数カットをまとめて作ったシーンを元に構成の流れを考えることです。このことを裏返すと撮影した動画の中で最も印象的で強いカットを見つけ、そのカットに意味を与える事かもしれません。

型を使うことのメリットは、視聴者から期待する行動を引き出しやすくなることです。構造をブロックのように分けることで、作る側にしても評価や改善がしやすくなります。

チュートリアル動画

まとめ

映像制作では、思いがけない事態に直面することが多々ありますが、構成表を見直すことで問題点が明らかになります。構成表を作る習慣を身につければ、映像クリップ作りがよりスムーズになるでしょう。

撮影現場では、予測不能な出来事が発生したら、構成表を忘れて現実を優先してください。目の前にある現実こそが、リアリティを映し出します。

参考

ビジネス用途の動画、例えば商品説明や企業紹介など、シーンや項目、カット数が多い動画は構成力が必要になります。元NHKプロデューサーの著者が大学生向けに開いた実習を元に書かれた実用的なテキストです。