初心者がやりがちな 録音のミス 10選とその対策【プロが徹底解説】

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 初心者がやりがちな 録音のミスを書きます。

録音。たった一言で済まされるこの作業ですが、正直に言って、「地味に一番ミスが出やすい」のが音の世界。

映像編集に夢中になって、最後の最後に録音した音声を聞いてガッカリ…。
「ザザーッというノイズ」「なんかこもってる」「音割れてるし!」
…この流れ、初心者じゃなくても何度も経験する“あるある”です。

今回は、そんな“音の失敗”を最小限にするために、録音で初心者がやりがちな10の落とし穴と、その対処法をプロ目線で解説します。実体験に基づいた内容なので、ぜひあなたの録音にも活かしてください。

初心者がしくじる 録音のミス 10選

① マイクが「内蔵マイク」のまま

ノートパソコンやスマホに内蔵されたマイクでそのまま録音していませんか?
これは初心者が一番やりがちな大失敗。その理由は三つあります。

ノイズを拾いやすい
 内蔵マイクは周囲の環境音やキーボード音、風切り音などをそのまま拾ってしまい、雑音だらけになります。

音質がこもる・クリアでない
 マイクの性能が低く、声が遠く聞こえたり、こもって聞こえるため、プロっぽさが出ません。

録音レベルの調整ができない
 入力音量の調整が難しく、音割れや小さすぎる音になるリスクが高いです。

▶対処法:

  • USB接続の外付けマイクを使う
  • スマホでも、ピンマイクなど専用機器を使うと段違い

▶メリット:

  • 音質が一気にクリアになる
  • 雑音の入り方が大きく減る

② 録音環境がうるさい

エアコンの風音、キーボードのカチャカチャ、遠くの救急車…。
「意識していない音」が、録音にしっかり入り込むんです。

▶対処法:

  • 録音中は家電をオフに
  • できるだけ布製品が多い場所(音を吸う)で録音する

▶デメリット:

  • 完全な無音空間は難しい。後処理でノイズ除去も視野に

③ マイクの距離が近すぎ・遠すぎ

マイクを口に近づけすぎると「ポップノイズ(息の破裂音)」が、遠すぎると「音がこもる」ことに。

▶対処法:

  • 口からマイクまで15〜20cmがベスト
  • ポップガード(またはティッシュ1枚でも代用可)を活用

▶メリット:

  • 安定した音量とクリアな音質が得られる

④ 音割れがおきてしまう

録音中は「ちゃんと録れてる気がする」のに、再生してみたらバリバリに割れてる

音割れの原因は単なる録音ソフトの設定ミスだけではなく、マイクとオーディオインターフェース(またはパソコン)の相性=インピーダンスの不一致や機器の適合性に問題があることも多いです。以下に、より踏み込んだ解説と解決策をわかりやすくまとめます。

🎧「音割れに気づかない」原因と深掘り対処法

❌ 原因①:録音ソフトの音量メーターが振り切れている
録音中、メーターが0dB以上(赤色)まで振れていると、ほぼ確実に音割れします。これはソフト側の設定ミス。
▶対処法:
ピークは-6dB〜-12dBあたりに収めるのが理想
テスト録音して波形を確認する癖をつける

❌ 原因②:マイクの「ゲイン設定」が高すぎる
マイクのゲイン(感度)を上げすぎると、少し大きな声を出しただけで音割れします。
▶対処法:
オーディオインターフェースや録音ソフトでゲインを段階的に下げて調整
声の一番大きな部分に合わせてゲイン設定するのがコツ

❌ 原因③:マイクと機器の「インピーダンス」が合っていない
ここが見落とされがちな初心者の落とし穴です。
特にXLR接続マイクやコンデンサーマイクをオーディオインターフェースなしで直接つなぐなど、機材の組み合わせが適正でない場合、信号が過剰または過小になり、音割れやノイズが発生します。
▶対処法:
マイクの出力インピーダンスと、接続先の入力インピーダンスが適合しているか確認する
 (例:出力150Ωのマイクに対し、入力インピーダンスは1.5kΩ以上が理想)
必ずマイクの仕様書を確認し、適切なオーディオインターフェースやミキサーを使う
安価なUSBマイクは内部に処理が組み込まれており、初心者には扱いやすい(ただし限界もある)

❌ 原因④:マイクのタイプと電源が合っていない
特にコンデンサーマイクを使っているのに、ファンタム電源が供給されていない場合、信号が弱くなり、逆に録音ソフトでゲインを上げすぎて音割れする…という悪循環に。
▶対処法:
コンデンサーマイクを使用する場合は、48Vファンタム電源が必要
オーディオインターフェースのスイッチを確認(ONになっているか)

✅ 補足:波形を見れば一発で分かる

録音した音が割れているかどうかは、波形を見ればすぐ分かります。山が平らにつぶれている(クリップしている)状態は、完全に割れている証拠です。

✅最終的なおすすめ対処フロー

  • 録音ソフトの入力メーターを見ながら調整
  • テスト録音を必ず実施
  • マイクの種類と必要な電源(ファンタム等)を確認
  • 機器同士のインピーダンス適合を調べる(特にXLR接続)
  • 最初は扱いやすいUSBマイク+Audacityなどから始めるのも◎

音割れは「耳で聞く前に、機材の設定で防ぐもの」。初心者のうちは「音量よりも、まず歪ませない」ことを最優先にしてください。

⑤ 録音レベルが小さすぎる

逆に、小さすぎて「何言ってるか聞こえない」ケースもあります。
編集で音量を上げると、ノイズも一緒に目立つので要注意。

▶対処法:

  • 目安は-12dB〜-6dB付近でピークを維持すること
  • テスト録音して調整するのが確実

⑥ エコーやリバーブがかかっている

録音ソフトの設定や部屋の反響で、声がやたらと響いてしまうことがあります。

▶対処法:

  • 録音時は「エフェクトOFF」が基本
  • 鳴りが強い部屋では、クローゼットの中などもアリ

⑦ 録音中にマウスやキーボードをいじってしまう

ナレーションやボイスオーバー中に「カチカチ…」と操作音が入るのも意外と多い。
無意識でやりがちなんですよね…。

▶対処法:

  • 録音中はキーボード・マウスは完全に触らない
  • 台本は紙に印刷か、タブレットでスクロール音無しに

⑧ ノイズキャンセリングが逆効果に

Zoomやスマホアプリにある「ノイズキャンセル」は便利ですが、声そのものを不自然に削ってしまうことも。

▶対処法:

  • 録音段階ではノイズキャンセルは使わず、後処理で調整
  • Adobe PodcastやAudacityなど、専用ツールで除去する方が自然

⑨ 録音ファイルの形式が不適切

MP3で録音したら「音がこもってる?」と感じたことありませんか?
圧縮形式では音質が犠牲になることがあります。

▶対処法:

  • 録音はWAV形式で(非圧縮)
  • 編集後にMP3やAACで書き出せばOK

⑩ テスト録音をしない

地味ですが、これが最強の落とし穴
一発本番で録って、後から「あれ?録れてない…」となること、実は多いです。

▶対処法:

  • 毎回、短くテスト録音して確認
  • 音量・音質・ノイズの入り方をチェックしてから本番へ

まとめ 録音は「見えない編集」。でも、聞けば一発でバレる。

録音の失敗は、カットやBGMでごまかせないことが多いです。
だからこそ、「録る前のひと手間」が、プロとの差を決定づけます。

映像がどれだけ綺麗でも、音が悪ければ「なんか素人っぽい」印象に。逆に、音がクリアなだけで、全体がワンランク上の作品に見えるんです。

録音は難しい。でも、確実にうまくなります。

今回紹介した10の落とし穴、あなたが1つでも事前に回避できれば、それだけで音の世界はクリアになります。

どうか、音の大切さを軽視しないでください。
音が整ったとき、あなたの動画は“作品”に変わります。

【参考】読んでよかった録音のトラブル解決「録音ハンドブック」

音声マンの視点から書かれた、動画のクオリティを上げる秘伝書をご紹介します。

動画制作をする人はどうしても映像に関心が向きがちです。

持てるパワーやリソースの八割方を映像に費やしてしまいがちです。

ところがそんな映像の専門家にかぎって、マイクの指向性などの知識や使い方に疎い人が目立ちます。

ちょっと勉強すれば映像のクオリティを格段に上げてくれるのが音の世界です。

壁にぶち当たる前に一読をお勧めしたい本です。

音づくりの秘密

本書の評価のポイントは、実戦で働いてきた音声担当者が、その体験談をもとに音作りの工夫をまとめた所にあります。その場その場で最適解が異なる録音の現場では、機材や録音技術を生身の人間が経験で身につける職人の世界です。言語化されることの少ない職人の知恵と工夫がこの本に凝縮されています。

妥協の許されない音の世界にも、最低限これだけ押さえて置けば失敗しないという合格ラインは存在します。そうした合格ラインを知らないでいると苦労します。初心者向けに撮影の勘所を解説してくれます。

桜風 涼さん

1965年生 慶応義塾大学卒 日本児童文芸家協会会員 映像・録音M Aの会社・株式会社ナベックスを経営。録音技師。童話アニメーションでソネット・クリエーターガレージの最優秀賞。 劇場映画「ベースボールキッズ」で2003年文部科学省選定作品。テレビ番組、Vシネなどで活躍中。著書に、EDIUS Pro 3 マスターブック(ソフトバンククリエイティブ)、 Premiere6テクニックバイブル(ソフトバンク)、LightWave3D テクニックバイブル(ソフトバンク)など多数。