作業の中心となるのがナレーション入れです。
最後の関門 ナレーション
番組作りの最終盤をポスプロ作業と言います。
ポスプロとはポスト・プロダクション (Post-production) [1] … Continue readingの略です。
ここでは同時進行に近い形で様々な工程をこなすことになるのでひと時も気の抜けない作業が続きます。
動画を繋ぐところまで行っても、最後に待ち構えている難関があります。それはナレーションやスーパーに使うのコメント原稿です。活字だけのメディア
— furutani (@kenfru3) 2019年5月14日
と違って映像が主役の世界ではコメント原稿の書き方にはルールがあります。視聴者に伝わる良い文章の書き方とは何でしょうか。https://t.co/bkuyU4DKAT
つなぎ終わった映像を完成素材といいます。はたから見ると、説明が一切入っていないため、他人が見ても何が言いたいのかわからない映像です。
映像だけでは意味が伝わらない映像の余白に、音声で説明を入れ動画コンテンツを作り出す最後の関門がナレーション入れです。
今回は”ナレーション”入れに避けて通れないコメントについて見ていきます。
一行十秒がナレーションの基本
編集が終了した完成素材には、音声が入ったインタビュー部分を除いてスキマのような空間が残されています。
一般的なドキュメンタリーなどではカットの隙間はおよそ10秒から15秒。ここにコメントをつけていきます。
NHKが推奨するナレーションのスピードは1分間で600字。
つまりナレーション原稿の分量は十秒間で15文字と言うことになります。
この速度は耳に馴染む速さだと言われています。
ニュース原稿やドキュメンタリーのナレーションの早さもだいたいこの速度です。情報番組など慌ただしい時間帯の番組はやや早めです。
放送局では、ナレーションのために特別な原稿用紙を使います。
一行が15文字。1ページ1分で読み切るための原稿用紙です。
この原稿用紙、一般のものと違うのは上に余白があること。
この場所は映像のカットを書き込むための余白です。
この余白はこのように線で区切り、カット毎の尺。つまりカットの持ち時間を割り振ります。
勘がいい人ならお分かりかもしれませんが、余白が映像なら、マス目は音声。
つまりこの原稿で動画作品の構造を二次元的に再現しているのです。
この原稿のオープニング部分のマス目と、インタビュー部分のマス目は実線で閉じられています。
実線の部分にはテーマの音楽とインタビューの音声があるのでコメントを乗せることができません。
限られた余白の中にコメントを隙間なく盛り込めるよう、視覚的にもわかるようにしているのです。
No.117
コメントは制作者自身が書きます。なぜなら全ての情報を把握しているのは制作者自身だからです。
コメントはあくまで映像の補足です。映像を見てわかることはコメントに書き込むことはありません。
映像製作はとかく映像をどう編集するかに制作者の意識が集中しがちです。
映像の持つ意味を視聴者に伝えきることができないと、宝の持ち腐れになってしまいます。
そのため、編集段階ではナレーションバックに使う映像にどのような意味を持たせるのか、誰がどのような語り口で語るのか、説明的な情報はどの程度まで踏み込んで書き込むのか。
コメント要素を計算しながら、この空間の”あるべき隙間”を用意するのです。
ナレーションの長さ
映像作品は時間という制約を抱えています。
書籍などの出版物では文字数を費して語ることができますが、映像作品の主役は映像と音声。
その隙間に作られた僅かな時間がナレーションに使うコメントの舞台です。
では一体どれだけの時間がコメント用に残されているのでしょうか。
一般的なドキュメンタリーを分解して見ると、カットの時間は僅か十数秒。
つまり原稿用紙一行から二行でコメント原稿を用意しなければいけないことがわかります。
もちろん、入り組んだ説明や、引用文など長い時間を取るシーンがないことはありません。
しかし、それは特殊なケース。ほとんどの場面でナレーションに使える時間は制約されているのです。
ナレーションとカット
ナレーションを書くとき注意しなくてはならない点がもう一つあります。カットとの関係です。
カットはそれぞれ意味を持ちます。そのためナレーションがカットをまたいでしまうと、カットに集中していた視聴者の意識を混乱させることがあります。
ですから、コメントは可能な限りカットの中で完結させるような書き方を取るのが普通です。
わかりやすい言葉
映像作品の主役は何度も言うように、映像です。ナレーションがわかりにくいと視聴者は映像に集中することができません。
そのためナレーションは平易な言葉遣いをするように気を配ります。
コメントによく使われるのが大和言葉です。
洗練された大和言葉のなかには、気持ちが伝わりやすく、丸みのある表現で相手に優しく伝わるという特徴があります。
「感動しました」は…
https://shabonyukuro.com/yamatokotoba/
・心を打たれました
・心に響きました
・心に沁みました
「期待します」は…
・心待ちにします
「感動で泣けます」は…
・目頭が熱くなります
標準的な番組。例えば30分番組がポスプロ作業かける時間は二日間程度かかります。
ナレーション入れはその半分近くの時間をかけます。原稿の直しが入るからです。
前後のつながりや表現の過不足、事実の確認など終盤にきてコメント直しで悪戦苦闘するケースも数多くあります。
当然制作担当者1人では直しができませんので、上司やナレーターも含めての共同作業で答えを探します。
番組制作とは共同作業であることを実感する瞬間です。
まとめ
ナレーションに欠かせない書籍を二冊紹介します。
番組づくりの最終盤、時間と競争しながらコメントを書きます。
この時、違った情報や誤解を招くような表現は徹底的に直されます。
この時役に立つのが放送用語辞典と日本語発音アクセント辞典です。
日本語の用法やイントネーションなどの直しには欠かせない助っ人です。
References
↑1 | 放送やパッケージメディアなどの映像作品、映画の製作における撮影後の作業の総称。
この作業を担当するスタジオないし制作会社のことを指す場合もある。 |
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