見る人の脳を上手に錯覚させるのが映像構成の秘訣。
映像で伝える物語はすべて直前に見たものの影響を受ける、脳の仕組みを上手に使って組み立てられています。
動画制作に取りかかる前に知っておきたいのが「モンタージュ理論」です。
知っておきたい「 モンタージュ理論 」
モンタージュ理論とは、映像の組み合わせ方しだいで映像を見た人が心に描くイメージが変化するというものです。
押さえておきたい関連ワードは二つあります。
- 「戦艦ポチョムキン」
- 「 クレショフ効果」
さまざまな動画制作のシーンに応用できるので知識として仕入れておきましょう。
戦艦ポチョムキン
モンタージュ理論で有名なのが「戦艦ポチョムキン」(セルゲイ・M・エイゼンシュテイン監督)
45分ころに登場する「オデッサの階段」のシーンが知られています。
ライオンの像と階段を駆け下りる群衆、整列して降りてくるコサック兵、
母親が撃たれ階段を落ちて行く乳母車をカットバックという手法で編集が緊迫感を盛り上げています。
映像は、ただそれだけ見ただけでは受ける印象は変わりません。
しかし、意図的に映像を組み合わせることで、受け手が抱くイメージは変わるのです。
オデッサの階段シーンで使われたカットバックの手法は、のちの映画作品でも使われ続けた定番手法になりました。
ブライアン・デ・パルマ監督の「アンタッチャブル」ではオマージュとして使われています。
一種のマインドコントロールのようなものですが、私たちが見慣れた映像コンテンツは基本、このモンタージュ理論によって編集されているといって間違いありません。
クレショフ効果
モンタージュ理論をわかりやすく説明しているのが「クレショフ効果」です。
1920年代のロシアの映画作家レフ・クレショフが行った実験です。
彼は男の顔のアップと別の3種類の映像をカットで繋いで見せました。
モンタージュ理論とは、複数の映像をつなげることによって、後ろの映像は前の映像の影響を受けて新しい意味が現れる効果のことを言います。
3つの異なるカットの次に、俳優のイワン・モジューヒン氏の無表情のクローズアップのカットを被験者グループに見せて、それぞれどのような印象を受けるのかを実験しました。
モンタージュ1:スープの入った皿 ⇒ 俳優
モンタージュ2:棺に入った遺体 ⇒ 俳優
モンタージュ3:ソファに横たわる女性 ⇒ 俳優俳優の表情はどれも同じなのに、被験者たちは、モンタージュ1では「飢え」を、モンタージュ2では「悲観」を、モンタージュ3では「欲望」の演技力を褒め讃えたのでした。
カットを組み合わせることによって、人間の脳は前後の映像を関連づけて意味のある情報に結びつける性質があります。
モンタージュは映像の組み合わせにより受ける側に伝える側の意図を伝達できるというものだったのに対し、こちらは半ば強制的にイメージを想起させるものです。
クレショフ効果を応用すれば、演出家が意図したイメージを受け手に伝えることができます。
まとめ
私は映画評論家でも映像史研究家でもありません。
使える手法はどんどん使いますが、人間の心理を操作することができると聞いて注意するようになりました。
誇大広告などに使われる演出も、もとをたどればこの理論に基づくからです。
動画づくりは視聴者との信頼があって成り立ちます。節度を持って使うに越したことはありません。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 モンタージュ理論 を書きます。