脳をダマす映像テクニック「 モンタージュ理論 」

モンタージュ理論
フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 モンタージュ理論 を書きます。

放送局に入った新人はいろいろな研修を受けます。映像をさわることが多いディレクター職がまず学んだのが編集の基礎となる「モンタージュ理論」です。

それまでは観客として楽しんでいた映像が、理屈を知ることで急に楽しめなくなりました。だましのテクニックを知ってしまったデメリットなのでしょう。

脳を錯覚させる「 モンタージュ理論 」

人は、常に直前に見たものの影響を受けます。目に入ったものを素早く認知しないと生存にかかわるからです。そして脳は目で見えた情報をもとに次のシーンを解釈します。次に起こることを予想しないとこれもまた命にかかわるからです。

映画という新しいメディアが生まれたことで、この仕組みを利用して人の関心を操作できると考える人が現れました。これが「モンタージュ理論」です。

知っておきたい「モンタージュ理論」

モンタージュ理論とは、異なる映像を組み合わせることで、観客に新しい意味や感情を生み出す技法のことです。これにより、視覚的に同じ映像であっても、前後の文脈次第で全く異なる印象を与えることができます。

押さえておきたい関連ワードは次の2つです。

1. 「戦艦ポチョムキン」

2. 「クレショフ効果」

これらの概念は、様々な映像制作に応用できるため、知識として持っておくことが重要です。

戦艦ポチョムキン

モンタージュ理論でよく知られている例が、セルゲイ・M・エイゼンシュテイン監督の映画『戦艦ポチョムキン』です。

この作品の「オデッサの階段」のシーン(45分頃:ダイジェスト版では6分頃)は、カットバックの手法を巧みに使い、緊迫感を生み出しています。

たとえば、ライオンの像、階段を駆け下りる群衆、母親が撃たれて階段を転がり落ちる乳母車などのシーンが交互にカットされることで、観客の感情が操作され、映像に強い意味が付加されます。このような編集技法により、ただ映像を見るだけでは生まれない感情や意味を視聴者に与えることができます。

このシーンで使われたカットバックは、その後の多くの映画で定番の手法となり、ブライアン・デ・パルマ監督の『アンタッチャブル』でもオマージュとして登場しています。

クレショフ効果

モンタージュ理論を理解するためのもう一つの重要な概念が「クレショフ効果」です。これは、ロシアの映画作家レフ・クレショフが行った実験に由来します。

彼は、俳優の無表情な顔のカットと異なるシーンを組み合わせることで、観客がそれぞれのシーンに異なる感情を抱くことを発見しました。

例えば、スープの皿のあとに俳優の顔をつなげると、俳優さんはお腹が減っているような感じになります。ところが繋ぎ方を変えてみるとまったく別の印象になることがわかります。

1. スープの皿 ⇒ 俳優の顔 → 「飢え」

2. 遺体の棺 ⇒ 俳優の顔 → 「悲しみ」

3. ソファに横たわる女性 ⇒ 俳優の顔 → 「欲望」

この実験は、カットの組み合わせが観客の感情や解釈に与える影響を示しており、映像制作においてモンタージュの効果を応用する重要性を証明しています。

まとめ

モンタージュ理論を使いこなすことで、映像制作者は観客に意図したメッセージや感情を効果的に伝えることができます。ただし、その強力さゆえに、誇大広告やミスリーディングな演出にも使われることがあり、映像制作においては視聴者との信頼関係を損なわないためにも、節度を持った使用が求められます。