NHKの『ブラタモリ』と民放のバラエティで雑踏のモザイクのかかり方が違うのはなぜ? | 街かど撮影 と通行人の権利の境界線

通行人 肖像権
フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 雑踏の撮影 を書きます。

NHKの『ブラタモリ』で大須商店街をろけしてましたが、通行人にモザイクがかかっていませんでした。対して民放のバラエティや情報番組ではモザイクだらけに見えることが多いのはなぜですか?

NHK番組で通行人にモザイクがあまりかかっていないのに対し、民放のバラエティや情報番組ではモザイクだらけに見えることが多い背景には、「法律上のルール」ではなく「取材・編集のプロセスや番組の性質の違い」があります

具体的には、大きく分けて3つの理由が存在します。

1. 事前の「写り込み同意(許諾)」の取り方の違い

テレビ放送におけるプライバシー権や肖像権の配慮は、法的な一律のルールがあるわけではなく、各局・各番組の自主基準(ガイドライン)に基づいています。

  • NHK(ブラタモリなど)の方式:NHKのロケでは、事前にロケ地の商店街や警察への道路使用許可を取るだけでなく、「本日〇〇の撮影を行っています」という看板や告知を出したり、1人ひとり書類を書いてもらう時間がない街頭ロケでは、カメラを回しながらスタッフが「NHKの『〇〇』という番組ですが、放送で使わせていただいても大丈夫ですか?」と尋ね、「大丈夫です」という本人の承諾コメントを映像として残すことで同意の証拠とする運用も広く行われています。

    さらに、カメラの画角に大きく映り込んだ人や立ち止まって見ている人に対しては、ロケ隊のスタッフが後から追いかけて「NHKの番組撮影ですが、放送してもよろしいですか?」と個別に口頭・書類等で許諾を取るケースが非常に多いです。

    許諾が得られた(あるいは明確な拒否がなかった)映像を中心に編集で繋いでいるため、モザイクをかける必要がなくなります。
  • 民放(情報・バラエティ番組)の方式:民放の街角インタビューや街歩き番組では、少人数のスタッフでスピード重視で撮影・編集を行うことが多々あります。

    1人ひとりに許諾を取る時間的・人手的な余裕がない場合、クレームや肖像権トラブルのリスクを避けるための「安全策」として、後から一括してモザイク処理を施します。

2. 「風景の一部」か「個人の特定」かの法的・ガイドライン的解釈

判例や放送ガイドライン上、「公共の場所で、特定の個人をクローズアップせず、街の風景(群衆)の一部として映り込んでいる場合」は、肖像権の侵害には当たらないという解釈が一般的です。

  • ブラタモリの場合:タモリさんやアナウンサー、ガイドの解説がメインであり、背景に映る通行人はあくまで「大須商店街の賑わいという風景」として撮影されています。

    NHKのガイドラインでは、このような「公道での背景としての写り込み」に関しては、公の関心事や地域紹介という文脈において一定の許容度をもって編集されています。
  • 民放のバラエティなどの場合:民放では、通行人のリアクションを拾ったり、演出として街の人にスポットを当てたりすることが多いため、「風景」か「個人のクローズアップ」かの境界線が曖昧になりがちです。

    視聴者からの「勝手に映された」という後日の指摘や炎上リスクを極力ゼロにするため、最初からリスクを避けてモザイクを多用する傾向が強まっています。

3. 番組の品格・視聴体験へのこだわり

演出・編集上のこだわりも大きく影響しています。

  • 『ブラタモリ』のような旅・歴史・ドキュメンタリー番組では、画面がモザイクだらけになると「街の空気感や歴史ある商店街の情緒」が損なわれてしまうため、現場スタッフが手間(事前の撮影周知や事後の許諾確認)をかけてでも「モザイクのないクリアな映像」を作ろうとします。
  • 一方で、民放のドタバタバラエティやワイドショーでは、映像の美しさよりも情報の速報性やテンポが優先されるため、効率的にリスク回避できるモザイク処理が選ばれやすくなります。

まとめ

NHKがモザイクをかけていないのは「法的に許されているから」ではなく、ロケ現場でスタッフが手間をかけて通行人に許諾確認・事前周知を行っているから、そして**「街の風景」として自然に見せるための編集努力をしているから**というのが真相です。

私たちがYouTubeやSNSで動画投稿を行う場合は、テレビ放送のように影響が大きいわけではありませんが無用なトラブルをさけるため両者の違いから学ぶべき点は多いです。

街角を撮影していると通行人が映り込んでしまう場合があります。

私の場合、許諾が取れればOKですが、取れなければ画面を加工します。

街頭撮影と肖像権:YouTube・SNSでトラブルを防ぐための基礎知識

YouTubeやSNSでの動画投稿において、街角の雑踏や通行人の映り込みに関するトラブルを防ぐには、法律上の「肖像権」と「受忍限度」の考え方を理解することが重要です。

1. 雑踏撮影と肖像権の基本原則

  • 不特定多数の映り込みは原則セーフ 公共の場所で不特定の人々が背景として映り込んでいるだけの場合、通常は肖像権侵害には当たりません。
  • 顔が特定できない場合 引きの映像や判読できない小ささである場合、個人を「容易に特定できる」とは言えず、権利侵害には該当しません。
  • 受忍限度(我慢できる範囲) はっきりと映っていても、日常風景の一部として映り込んだ程度で実害がない場合は「受忍限度内」とみなされることが一般的です。

2. トラブルになる警戒ライン

  • 撮影拒否の申し出があった場合 本人から「使わないでほしい」「撮影をやめてほしい」と拒絶された場合、受忍限度を超えたとみなされるため、そのまま使用すると権利侵害になります。
  • ヤバイ場所・配慮が必要なロケーション 撮影場所の性質によっては、たとえ風景の一部であっても特別な配慮や加工(モザイク等)が必要になります。

3. トラブルを防ぐ実践的ノウハウ

  1. 撮影中であることが一目でわかるようにする(大きめのカメラ、腕章の着用など) ⇒ 映りたくない人が自ら避けられる環境を作ることが最大の防犯になります。
  2. 特定の個人にフォーカスしないアングル作りを行う

撮影(取得)はしたけれど、最終的に公開・放送はされなかった(=お蔵入り/素材保管)

動画の企画変更やボツ(お蔵入り)によって「撮影(取得)はしたけれど、最終的に公開・放送はされなかった(=お蔵入り/素材保管)」というケース。

結論から言うと、「撮影・保存」と「公開(送信・頒布)」は法律上・権利上の判断が別々に発生します。

公開しない場合でも、トラブルを避けるための独自の注意点や許諾の考え方があります。

1. 肖像権・プライバシー権(人物の映り込み)

肖像権トラブルの多くは「公にされること(公開・配信)」によって被害(恥ずかしい、知人にバレる等)が生じます。そのため、公開されないのであれば、肖像権・プライバシー侵害のリスクは激減します。

状況許諾の必要性とリスク
街頭インタビュー・特定人物の撮影撮影時に「YouTube/SNSで使います」と同意を得て撮影した場合、お蔵入りになっても法的トラブルになる可能性は極めて低いです。(相手に「いつ公開されますか?」と聞かれたら「編集の都合で不採用になりました」と連絡するのがマナーです)
無断で特定個人を隠し撮り・追跡撮影公開しなくても**「プライバシーの侵害」や「迷惑防止条例違反」**に問われるリスクがあります。
雑踏・通行人の映り込み公開(送信)されない以上、個人の識別も外部からされないため、許諾もモザイクも不要です。

注意点:「撮影行為そのもの」への拒絶

撮影時に相手から「撮らないで」「消して」と言われた場合、「公開しないから(保存するだけだから)OK」とはなりません。明確に拒絶された場合は、その場でデータを削除するのがトラブル回避の鉄則です。

2. 商業施設・私有地(ロケ地・店舗)

店舗や商業施設での撮影は、肖像権ではなく「施設管理権(所有権)」や「契約」の問題になります。

  • 許諾を得て撮影後にお蔵入りした場合施設側は「宣伝になるから」と撮影を許可したケースが多いため、不採用になった場合は一言お詫びと報告を入れておくのが業界のマナーです(無断でお蔵入りにすると信頼関係が崩れます)。
  • 無許可で撮影し、公開しなかった場合施設側から立ち退きを命じられたり、敷地侵入(建造物侵入等)で警察を呼ばれたりしない限り、後から「撮影データを消せ」と法的請求されるリスクは低いです。ただし、コンプライアンス上は望ましくありません。

3. 著作物・店舗のBGM・商標など

美術館の展示物、映画館、店舗内で流れるBGMなど、他人の著作物が映り込んだ(録音された)場合です。

  • 公開しない(内部保存・編集の試作段階)著作権法上の「私的使用のための複製(第30条)」や、編集作業に伴う「一時的複製」の範囲内と解釈できるため、著作権侵害にはなりません。
  • 他者(第三者)へ素材を譲渡・転売する場合公開はしなくても、「拾い映像(他人の素材)」を第三者に売ったり共有したりすると、著作権や利用規約違反になります。

4. 拾い映像(他人が撮影した素材)を保持する場合

ネット上からダウンロードした映像(拾い動画)を自分のPCに保存し、企画倒れで公開しなかった場合です。

  • 私的利用の範囲なら問題なし個人で観賞する・自分の編集の練習用として保存するだけであれば著作権法上はセーフです。
  • 違法アップロード動画のダウンロードテレビ番組や映画など、違法にアップロードされたと知りながらダウンロードする行為は、公開しなくても著作権法違反(私的複製でも違法)となります。

まとめ:トラブルを防ぐための実務ルール

「公開しないから大丈夫」と油断せず、以下の3点だけ押さえておくと安心です。

  1. 撮影時に拒否されたデータは即削除する(撮影行為自体のトラブル防止)
  2. 協力してくれた人・施設には「お蔵入り」の報告を入れる(信頼関係の維持)
  3. 違法コンテンツのダウンロード保存は避ける(公開の有無に関わらずNG)

公開しない場合であっても、素材の管理(流出防止)には十分注意してください。

人物を撮影する際は、個人のプライバシーを守る「肖像権(人格権)」や、有名人などの権利である「パブリシティ権」など、多様な観点からの配慮が求められます。「このくらい大丈夫だろう」と過信せず、慎重な姿勢で撮影に臨みましょう。