文字スーパーのテクニック

ノーナレ動画
フルタニ
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。

つなぎ終わった映像を完成素材といいます。

説明が一切入っていないため、他人が見ても何が言いたいのかわからない映像です。

映像だけでは意味が伝わらないカットの連なりに、命を吹き込む作業がナレーションとスーパー入れと呼ばれる映像の上に文字を重ねる作業です。

このクリップ。顔出しなし。ナレーションもありません。説明は必要最小限の文字だけ。日常の風景も物語になります。

今回は文字テロップなどを使った”スーパー入れ”について見ていきます。

文字スーパーは一行18字

スーパーの役割は映像だけでは伝えきれない情報を、文字の形で視聴者にわかりやすく伝えることです。

例えば、人物紹介に使われる氏名や肩書き。地域の紹介に使われる地図や地名、外国語を翻訳したものなど様々です。

ニュースなどに使われる文字のサイズはだいたい1行18文字以内が普通です。

伝えたい情報が多くても文章を削りに削って、最小の文字数で表現するようにしているのがわかります。

たまに、「高画質な受像器では小さな文字サイズが表示できるので、字数を多くした方が読まれるのではないか」という声を聞きます。パソコンなど画面を見続ける必要があるならばいいかもしれませんが、テレビなどのモニターの見られ方は違います。

ちらっと見てわかる程度の情報量が喜ばれるのです。4Kや8Kになっても画面を見る人の態度は変わらないでしょう。画面を文字で埋めるのは「読んでもらいたくない意思表示」です。人間の見る早さにあわせて文案を考えましょう。

表示は視聴者が二度読みできるくらいの長さのタイミングをとるのが一般的です。会話などにかぶせるスーパーは、会話の速度に合わせます。

ちなみに、番組制作の現場では、ナレーションを先に録り、その音に合わせて文字スーパーを重ねていくのが一般的です。ナレーションはカットの長さに合わせて文章を推敲し、コメントの文章を調整します。したがってスーパーを先に入れてしまうとナレーションに文字の位置が合わなくなることがあるのです。

文字スーパーは必要最小限に

NHKのニュースや情報番組を見てわかるように、スーパーは必要最小限に使うのが基本です。

なぜかというと、報道ジャーナリズムの基本はファクト、つまり事実をありのままに伝えることにあります。

映像作品の主人公はあくまで映像。ありのままの映像を瞬時に見てもらい、視聴者自身がその意味を考えてもらうことが大切だと考えられてきたからです。

しかし、最近になって最小限に使うというルールが崩れ始めています。

出演者の発言した音声になぞるように同じ内容の文字をかぶせる演出です。フォントサイズを大きくしたり、色をつけて動かしたりする場合もあります。

スーパーに手を入れる理由は視聴率稼ぎです。家事の合間にテレビを脇目で見る人たちが増え始めた80年代、画面をチラ見しても内容がわかるようにスーパーをベタ付する情報番組が出てきました。ベタ付けした番組の視聴率が上がったことからルールが変わり始めたのです。

この流れはネット動画が加速させました。ネット動画の勝負は最初の数秒間です。スーパーの付け方一つで視聴者を足止めできるとわかって、ネット動画の世界では過剰なスーパーが流行りになっています。

視聴率が上がることは視聴者に喜ばれていると制作者は勘違いしがちです。闇雲に文字で埋めつくされた作品ほど、視聴者から品位を見透かされることになるので注意が必要だと思います。

文字スーパーは意図的に

正確な情報をわかりやすく伝えることが情報系番組のポジションです。そこを曖昧にして賑やかしでごまかす姿勢は、後々視聴者に足元を見られることになります。ではわかりやすく印象的でありながらカッコいいスーパーはどうやってつければいいのでしょうか。ヒントを探って見ました。

画面に映し出される文字情報の扱いでも異色な作品だったのが2013年に放送されたテレビアニメーション「キルラキル」です。

キルラキルのロゴでも使われた圧倒的存在感のすごいやつ「ラグランパンチ」 #LOVEFONT

mojimo-live|mojimo

一般的にアニメーションは絵で勝負の世界です。それにも関わらずこのアニメでは意図的にスーパーを取り込んでいます。制作者は絵を殺さないスーパーを目指したのでしょう。作品のタッチに合わせた文字フォントを選び、計算づくで配置されたスーパーが作品の味わいになっている成功例の一つです。

本編映像を黒い画面で分割して、そこに白い文字で印象的な言葉をスーパーする。独特のスタイルを確立させたのがNHKのプロフェッショナル・仕事の流儀です。

満艦飾のようにスーパーを多用すると本当に必要な情報が視聴者に届かないことが起きます。上手な広告作品ほどコピーを少なく絞り込み、余白を十分とった画面にぶつけてきますが、同じような強い印象を感じさせるスーパーの打ち方と言えます。

スーパーの基本

演出的に入れるスーパーや、出演者の発言をなぞるスーパーを除き、文字スーパーの役割は情報を伝えることが目的です。

そのためスーパーの内容は短く、シンプルで正確さが求められます。

  • 正確な情報

文字スーパーが力を発揮するのは年号や金額などの数字情報や人名や地名など固有名詞の表記です。注意すべきなのは同音異義語や難読文字の使い分けです。「絵を描く」「文章を書く」など使い分けを誤らないように注意します。

  • 一行20文字程度で最大二行

NHKのドキュメンタリー番組では、インタビューの要旨を文字スーパーにする場合、一回につきだいたい20文字二行の中で納めるようにしています。人間の目は文字を横に追う範囲が意外に狭く、あまり横に広がりすぎると苦痛に感じるためです。

行数も視野の中に収まる二行程度がストレスなく理解できる範囲です。

  • 2度読みできる時間までスーパーする

スーパーは入れてから外すまで視聴者が二回読み返せるだけの時間は確保します。制作担当者は頭の中で文字を実際に読んで見て、外すタイミングを測ります。

  • カットをまたいだスーパーは避ける

一連の動作を除き、映像のワンカットにはそれぞれ編集上の意味があります。したがってスーパーやナレーションもワンカットの中に収まるように内容を精査し映像に貼り付けていくのが基本です。

まとめ

主役である映像を補佐する形で使われてきた文字スーパー。その役割は時代とともに変化しています。リズム感あふれる文字スーパーが作品の持ち味を生み出す動画は新しい世界を生み出しています。しかし安直な演出は映像本来が持つ可能性を殺してしまう場合もあります。客からの視線を意識しながら自分のスタイルを見つけだしてください。




ABOUTこの記事をかいた人

元テレビ番組制作者。再就職→窓際→WEBコンテンツ制作で復活。64歳にして動画制作に自分の価値を見いだしました。目指すのは地域に根ざした"伝える系"の動画制作です。スキルアップと感謝の気持ちを持ちながら楽しく生きていきます。編集のお手伝いも始める予定です。