Netflix のリモコン戦略は日本のテレビの歴史を変えた分水嶺として残る気がする

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 Netflix を書きます。

番組づくりは人手がかかります。なかには機械化出来ない部分も残っています。にもかかわらず働き方改革が待ったなしに進んでいます。放送直前の追い込みだからといって時間外の作業はタブー。働き過ぎと見なされると指導を受けます。

いっぽう放送は装置産業という性格も持っています。電力会社と同じように装置そのものを運用していかなくてはなりません。そために放送法が整備されています。放送法は映像作品などのコンテンツをつくる放送事業者を過度な競争から守る砦でもあります。

一方、ネットを中心に動画コンテンツを配信するプラットフォーマーというビジネスが拡大しています。プラットフォーマーとは地主とか鉄道会社のようなもの。場所を貸すことで利益をあげるビジネスです。

プラットフォーマーは、国から電波を利用するための免許を得る必要がある放送事業者と違って行動に制約がありません。表現についても放送法のような厳格な縛りがあるわけではありません。その自由さにはいい面もわるい面もありますが、世界を変えるパワーがあります。

動画制作をめざす上で、放送と新規プラットフォーマーの動向は気になります。

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新規プラットフォーマーの筆頭が Netflix です。 Netflixはもともとケーブルテレビのように映像作品を配信する会社でしたが、ネットの強みを生かして世界中に進出を果たしました。

さらに収益化する手法も開発し、今では制作資金を出すことで自らコンテンツを作る機能も持ち始めています。

映像制作にたずさわる者からすれば、自分たちの作った商品をお金に換えてくれるのは映画や広告、放送局でなければならない必要はありません。 Netflix はコンテンツを見る視聴者以上に、制作者の関心を集める存在になっています。

Netflixが伸び続けるとどうなるのでしょう。考えられるのは視聴者の奪い合いです。人間が映像を見る時間は限られています。映像コンテンツが放送を通じて届くのか、それともネットからやってくるのか。視聴者にとって伝送路の違いは意味がありません。

視聴者にとって役に立つサービスを発信し、強いコンテンツを提供するプラットフォームや制作者しか生き残れない。そんな厳しい世界がゃってくるのです。

Netflixの強さはどこにあるのでしょう。放送局関係者があっと驚いた奇策の中に、 Netflix の驚くべき狙いが隠されていました。

Netflix のリモコン戦略

思い浮かんだのはテレビのリモコンに付いているNetflixボタンのこと。うまいこと考えたと感じたのがリモコン戦略です。

週刊東洋経済2015年4月25日号の記事によると

2015年日本市場の参入を控えたNetflixはリモコンボタンに目を付けました。メーカーに働きかけ、リモコンに Netflix のボタンを付けることを思いついたのです。ボタンを入れてもらえればリモコンの製作費を10%負担すると申し入れました。メーカーにしてみればコストダウンに繋がります。各メーカーから出荷されるテレビの台数は250万台。わずかな費用でテレビ局と並ぶチャンネル権を手に入れることができました。

Netflixの「安くて、便利」は永続が難しい理由 | インターネット | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

Netflix が変える世界

Netflixが雇用するのは選りすぐりのエリートと言われます。 人材の差もさることながら、人材を使うシステムの仕組みも合理的です。

放送は監督官庁に許認可の判断を握られています。そのため、思いついたアイデアも会議や報告でムダに時間を浪費した上、結局は決断しきれないことがよくあります。

おそらく、放送局からか、ネット企業がリモコンを押さえに来るだろうという予測はなかったでしょう。戦略日本の経営のありかたと、少ないチャンスもムダにしないイノベーション企業の違いを感じます。

対する放送側は何を考えているのでしょう。

ヨーロッパの放送は、一定の質を保つよりも売れる番組を流して収益をあげる商業放送と、公共放送の仕組みが作られました。

アメリカでは、それぞれの事業者が勝手に放送する中で、視聴者が支持する、信頼する放送局が残る「言論の自由市場」型モデルで制度が作られました。

日本では放送と通信のあり方を巡る議論が なかなか進みません。この状況は、アップルがSONYを追い抜いていった時と同じです。

評価するのは消費者。放送が独占してきた映像産業はリモコンが大きく変える気がします。