こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。
放送局の仕事は分業制です。大きな番組では編集担当者がつきます。駆け出しの頃担当した企画では予算の関係もあり、自分で編集することがありました。
編集経験を積み重ねる事でわかってきたのは、編集の持つ奥深さでした。例えば色彩。照明の当て方次第で画面の効果が大きく変わります。
基本は撮影段階できちんと光の設計をする事が大切です。しかし現場の事情で満足な撮影ができない場合もあります。撮影段階で満足に光の計算ができなかった”落ちこぼれカット”も編集で救うことができるのです。
超便利な機能・オート色補正
結論から先に書きます。ざっくり編集して、ざっくり色補正する。お手軽な機能がDaVinch Resolve16には付いています。16から新たに加わったパワフルな機能です。使い方はいたって簡単です。

- 編集したカットを全部範囲指定する。
- 編集ページの上のバーにある[カラー]から自動カラーをクリックする。

たったこれだけの作業で、電灯の光で黄ばんだ白や、色味がかった黒が補正されます。
カラーページにわざわざ行くことはなく、編集ページで色調整ができてしまうのは手間が省けます。しょぼい動画づくりにはもってこいのテクといえそうです。
ドラマやPVのような映像に高度なクオリティが求められる商用動画などには向きませんが、色味に比較的寛容な投稿動画などでは役に立つツールです。
色補正と言う救いの神
救いの神とは色補正です。
テレビの画面に近寄ってみるとわかると思いますが、動画の色を構成するのは青と緑と赤の小さな点です。この光の混ざり具合で全ての色が表現できます。色補正とは足りない部分を補強する作業なのです。
放送番組ではビデオエンジニアと呼ばれる専門の技術者に調整をしてもらうこの作業を編集ソフトで実現できると言うのですから驚きました。
その機能が、編集ソフトに付いている”カラーコレクション”とか”カラーグレーディング”と呼ばれる機能です。
初めて聞いただけではその違いがわからないのが専門用語。”カラーコレクション”と”カラーグレーディング”はよく間違えられる言葉です。そこで色に付いて深掘りします。
ホワイトバランスは色の基本です
ロケ先でカメラマンから必ず言われたのが撮影前にカメラの前に白い紙を広げること。白い紙をレンズの前に広げるのはホワイトバランスを取るためだと聞かされました。
ホワイトバランスとは一体なんのために必要なのでしょうか。
簡単に言うと、撮影環境での光の色の影響を補正して、白を白く写すための機能です。白を白くと言うのは、カメラが白を白く認識していないことがあるという事です。
人間の目は物体の色を環境に応じて見極めることができます。ところが機械はそれができません。
例えば、異なるカメラを使ってそれぞれホワイトバランスを取らずに白い壁を撮影したとします。それを編集してみると壁の色が微妙に異なることがわかります。このままでは編集できませんね。
光はその種類によって様々な色や特徴を持っています。例えば、電球の光は黄色っぽいですし、曇りの日の太陽光は青っぽい色が付いています。人間の眼を通すと、『白い物は白いはずだ』と自動的に補正をかけてくれるのですが、カメラはそれらの色味をそのまま写真や動画に再現するので、光によっては白色が肉眼で見るよりも黄色く写ったり、青く写ったりしてしまうことがあります。
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テレビの画面で説明したように、動画の色を構成するのは青と緑と赤の小さな点です。三つの色を最大に光らせて混ぜ合わせると白になります。
異種格闘技の試合をする際、統一のルールを決めておくように、映像の現場で基本のルールとなるのが白です。この白を再現できるようにカメラを調整すれば、異なるカメラで撮影した映像でも共通に使うことができるようになるのです。
カラーコレクションとは
撮り終わった素材を編集用パソコンに取り込み試写してみるとわかるのが、カットが変わるごとに暗くなったり明るすぎたり、人の顔色が悪かったりすることがあります。
ホワイトバランスができるのはあくまで本来の色をきちんと再現することです。暗い室内を明るくしたり、景色や人間の肌の色を本来の色より鮮やかに見せたいと思ったら、別の手段で画面の補正をしなくてはなりません。
先ほどの白い壁を例にします。ホワイトバランスを取る事で異なるカメラで撮影した白い壁が同じ色調になりました。この壁の色を夕日に染まった壁にしたいと思った時、カットごとに異なる色合いを調整する技術がカラーコレクションと呼ばれる編集機能です。
曇り空や夜景、人の顔など撮影してみたものの、温かみや冷たさなど、表現したいテーマによっても異なりますし、個人の好みによっても異なります。
ホワイトバランスは絶対的なものでぱありません。“白さ”を調整するための機能ですが、必ずしも正しい答えがあるわけではないのです。
Photoshopなどのグラフィックソフトを使い慣れていると分かると思いますが、グラフィックソフトは色を変えたり一部を切り取ったりする機能を持っています。動画編集のカラーコレクションもおなじことができます。
顔の色を良くしたり、曇空を青空にしたり、昼を夜のシーンに変えたり色彩を変えることでまったく違った印象の映像をつくることができます。
ちょっと凝った演出になるのはグリーンバック合成と呼ばれる背景色を緑にすることで被写体を切り取る技術です。
全体がモノクロの中、一部分だけ赤く色が残っているビールのコマーシャル映像を見たことがありますが、あの表現もカラーコレクションの力なのです。
工程は少し長いですが、作業自体はシンプル。高度なクロマキー合成もDaVinci Resolveで出来ます。
ではカラーグレーディングとは一体どう言う作業なのでしょうか。
カラーグレーディングとは?
カラーコレクションとカラーグレーディング の違いは明確ではありません 。 映画製作でそれぞれの言葉の意味は次のように定義されています。
- カラーコレクション: ビデオのカラー調整に関する作業
- カラーグレーディング: 映画フィルムのカラータイミングの工程を指す
カラーグレーディングが使われるのは映画やCM、プロモーションビデオなどです。ニュースやドキュメンタリーなどでは馴染みのないのがカラーグレーディング作業です。
カラーコレクションが色補正ならば、 カラーグレーディングとは例えば映像全体を古いネガフィルムのような色味に変更するなど、作品としての品質を高めるために編集の最終段階で施される作業のことを指します。
季節や時間による色差を合わせる。単調な映像に陰影や深度をつける。映像作品全体の印象色を決め質感を作り込む。色の専門職である色を操るカラーグレーディングは作品の個性を出す上で欠かせません。
カラーグレーディングはこれまで高品質な映像制作に携わる人たちが行ってきた専門分野でした。
ニュースやドキュメンタリーなど撮影した素材をそのまま編集して上映するのが目的の映像作品の場合、演出として受け取られると逆効果になる場合もあるようです。
まとめ
クリエィティブな映像作品を作る上で、役に立つのが”カラーコレクション”と”カラーグレーディング”の知識です。経験を積む事によって自分の出したい色を出せた時は達成感とやりがいを感じられると言います。
自分の好みの色使いを作品に生かす事で映像制作の世界が広げていってください。