初心者向け解説:プロが CapCut を“メイン武器”にしない3つの理由

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。  プロが CapCut を“メイン武器”にしない3つの理由を書きます。

「ショート動画の編集ツール何使ってますか?」という質問によく出てくるのがCapCutという編集ツール。まさに定番です。

「CapCutって、あのスマホでサクッと動画作れるやつでしょ?」

そうそう、それです。

もう最近はYouTubeのショート動画やTikTokを見てても「あ、これCapCutで作ったやつだな」ってわかる瞬間がありますよね。

テロップの出方とか、効果音のクセとか。

あれはあれで楽しいし、完成度も高いんですよ。

でも、プロの動画制作者――特にテレビ局や企業案件をガチで回してる人たちは、なぜかCapCutをメインには使わない。

これ、初心者の方からすると「なんで?」ってなると思うんです。

「だって早いし、無料だし、エフェクトもいっぱいあるのに!」って。

今日はその答えを、私が実際に現場で見てきたリアルな理由とともにお話します。

初心者向け解説:プロがCapCutを“メイン武器”にしない3つの理由

理由1:限定的なプロ仕様機能とワークフロー

これが一番わかりやすい理由。

CapCutは本来「一般消費者向け」に作られているので、プロの現場で求められる細かすぎる機能が入ってないんです。

たとえばカラーグレーディング

映画のワンシーンみたいに、青をわずかに沈めて肌だけふんわり残す…みたいな微調整をやろうとすると、CapCutでは限界が早く来ます。

Premiere ProやDaVinci Resolveだと、カラーホイールやスコープを使って、波形を見ながら正確に調整できますが、CapCutはそこまで本格的じゃない。

カラーグレーディングは好きな色調に色を盛ること。対の用語として使われるカラーコレクションとは撮影された映像の色調を本来の色に補正すること。

オーディオもそうです。

現場ではマルチトラック編集が当たり前。

ナレーション、環境音、BGM、効果音を全部別トラックにして、それぞれの音量をミリ単位で調整します。

CapCutでも一応できるんですが、Pro Toolsみたいな業務用ソフトと比べるとコントロールの粒度が全然違う。

あと、他ソフトとの連携性の低さも痛い。

プロは一つの案件を複数ソフトで回すことが多いです。

例えば、NHKの編集現場では無料版が普及しているDaVinci Resolveが最近導入されてます。

Resolveで色を整え、After Effectsでタイトルや合成を加え、Premiere Proで仕上げる――こういう連携の中にCapCutを組み込むのは、現状ほぼ不可能なんです。

そして地味に大事なのがプロキシ編集

4Kや8Kの重い映像を軽い仮データで編集して、最後に高画質に差し替えるやつ。

CapCutにはこれがない。だから重い素材だと再生がカクつきます。

編集中に「あ、また止まった…」ってなるの、めちゃくちゃストレスです。

理由2:ビジネス利用のリスク

これも大きい。

CapCutは無料でも使えるんですが、その代わりクラウド依存なんです。

つまり、クライアントの機密映像データが一時的にでもCapCutのサーバーを経由する可能性がある。

テレビ局とか企業案件では「社外クラウド禁止」というルールがある場合が多いので、もうこの時点で使えません。

あと、ライセンス問題

CapCut内のテンプレや音楽、エフェクトは商用利用できるものもありますが、利用規約をちゃんと読むと細かい制約があったりします。

特に海外配信やCM用途だと「これ本当に使っていいの?」ってなることが多い。

そして、プロとして怖いのがサービス継続性

もしCapCutが突然仕様変更したり、提供終了したらどうします?

プロジェクトファイルが開けなくなって、クライアントから「もう一度納品して」って言われても作れない。

Premiere ProやDaVinci Resolveなら、数年前の案件データも(多少の修正は必要ですが)ちゃんと開けます。

理由3:出力品質とファイル管理の限界

プロの現場は「見た目が同じでも中身が違う」ことが多いです。

同じ映像でも、放送局納品ならProResDNxHDといった中間コーデックで書き出すのが常識。

これは圧縮による劣化を最小限にするため。

でもCapCutはこうしたコーデックをサポートしていません。

さらに特殊フレームレートタイムコードの扱いも弱い。

タイムコードは放送や長尺案件でほぼ必須です。

CM編集では「0:15:00からBGMをフェードアウト」とか指定されますが、CapCutにはタイムコード表示がないので正確な位置合わせができないんです。

そして地味に効いてくるのがメタデータ管理

映像制作ではEDL(編集リスト)を使って別ソフトに編集内容を渡すことがありますが、CapCutはこれに非対応。

つまり、一度CapCutで作ったプロジェクトを他ソフトに持っていくのがほぼ不可能なんです。

実際の現場のシーンを一つ

ある企業VP(ビデオパッケージ)の案件。

クライアントは地方の老舗企業で、「社員総会のオープニングムービーを作ってほしい」という依頼でした。

撮影は4Kシネマカメラで、BGMは著作権クリアのオリジナル曲。

この時、プロが使うのはPremiere ProとAfter Effects、DaVinci Resolveを使うケースもあります。

理由は単純で――

  • Resolveでカラーを正確に整えたい
  • AEで光のエフェクトを自然に入れたい
  • Premiere Proで音声と動きをミリ単位で合わせたい

CapCutだと、どれも中途半端になってしまうんです。

「まぁ見た目は似たようにできるけど、よく見ると違う」っていうあの差。

そして、その差こそがプロの仕事の価値になる。

じゃあCapCutはダメなの?

ここまで書くと、この記事「CapCutのディスり記事じゃん」と捉える方もいるかもしれませんが、全然そんなことありません。

というのも、一般消費者向けとプロ向けではそもそも目的が違うから。

一般消費者に「マルチトラック編集」や「タイムコード編集」を説明しても本来使うことがない機能なので無用の長物以外の何者でもありません。

CapCutは「一般消費者向け」に作られている商品です。そのためよく使う機能は消費者向けに高度にチューニングされています。

例えるなら、電子レンジに入れてチンするだけで献立が完成するといったイメージです。

むしろ、スピード感と手軽さではプロソフトより優れているといっていいかもしれません。

私も個人のTikTok動画はCapCutで編集することがあります。うまく使えば手の込んだエフェクトやAI機能など時短ができます。

直感的に編集できるということは、SNS用の短尺動画や、自分のVlog、YouTubeのサムネ的な動画には最高です。

ただ、商用案件――特に放送や大規模プロモーションでは、どうしても機能やワークフローが足りない。

だから「避ける」というより、「使い分ける」が正しい言い方かもしれません。

まとめ

  • CapCutは手軽で便利、特にSNS動画には最適
  • でもプロ案件には機能不足・ワークフロー非対応・ライセンスリスクがある
  • プロはPremiere Pro、DaVinci Resolve、Final Cut Proなど業界標準ソフトを選びがち
  • CapCutは補助的な立ち位置として活用されることが多い

こんな話を聞くと「プロってめんどくさいなぁ」と思うかもしれませんが、その“めんどくさい”をやりきった先にしか出せない映像があるんです。

CapCutはライトな世界を飛び回る翼、PremiereやResolveは長距離を飛び切るための翼。

その違いを知っておくと、動画編集の楽しみ方がもっと広がりますよ。

参考

プロの動画制作者がCapCutを避ける主な理由を3つにまとめました:

1. 限定的なプロ仕様機能とワークフロー

CapCutは一般消費者向けに設計されており、プロの制作現場で必要な高度な機能が不足しています。例えば:

  • カラーグレーディング:プロ級のカラーホイール、スコープ、LUT管理機能が限定的
  • オーディオ処理:マルチトラック編集、ノイズリダクション、詳細なオーディオミキシング機能の不足
  • ワークフロー統合:After Effects、DaVinci Resolve、Pro Toolsなど他のプロツールとの連携性が低い
  • プロキシ編集:4K/8K素材の効率的な編集ワークフローをサポートしていない

2. ビジネス利用における制約とリスク

商業プロジェクトでCapCutを使用する際の懸念事項:

  • ライセンス問題:商用利用時の著作権や使用許諾の複雑さ
  • データセキュリティ:クライアントの機密映像データをクラウドサービスに依存することのリスク
  • 継続性の保証:サービス終了や仕様変更によるプロジェクトへの影響
  • クライアント要求:多くの企業クライアントが業界標準ツールの使用を指定する

3. 出力品質とファイル管理の限界

プロの制作基準を満たすための技術的制約:

  • 出力フォーマット:ProRes、DNxHD等の中間コーデックサポートの不足
  • 解像度・フレームレート:高解像度や特殊フレームレートでの制約
  • メタデータ管理:タイムコード、EDL出力などポストプロダクション連携機能の不足
  • バックアップ・アーカイブ:長期保存や複数バージョン管理システムとの非互換性

これらの理由から、プロは用途に応じてPremiere Pro、Final Cut Pro、DaVinci Resolveなどの専門ツールを選択し、CapCutは個人用やSNS向けコンテンツ制作での補助的な位置づけとして活用することが多いのが現状です。​​​​​​​​​​​​​​​​