ふつうは身につかない取材の勘所満載・所さん!大変ですよ

フルタニ
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。

動画取材をするとき頭に浮かべる番組があります。

それは「所さん!大変ですよ」(NHK総合)。

簡単には見過ごせない“事件”を徹底した取材で追跡する情報バラエティ番組です。

「なぜ自宅から? 相次ぐ謎の“拳銃”押収事件」とか「謎の“高齢者”公園」など、タイトルは”謎”だらけ。「なんだそれは?」と見てみたくなります。

しかし、どうやってネタを探しているのでしょうか? この記事では、テレビディレクター目線で探る「ネタの見つけ方」 について考えます。

アナログ頭でネタを探す

調べてみると、番組のコンセプトはわかりやすいものでした。

社会の片隅で起きている小さいけれど見過ごせない“事件”の意外な真相をあぶり出すこと。

「ふ~ん」だけで終わってしまうようなネタはボツなのだそうです。

限られた人の間だけで知られている話だけれど、全国的に共通性・普遍性があり、調べてみたら社会的な意味付けがあったというようなネタでなければならない。

深刻になりがちな内容でも、所ジョージさんが、独特のトークで見やすいように助けてくれるという仕組みが効果的です。

「相次ぐ謎の“拳銃”押収事件」のネタ探しのきっかけになった警視庁のお知らせはどうやって掘り起こしたのでしょう。

担当プロデューサーへのインタビュー記事を発見しました。

「すごい能力ですよね。一体、どんな工夫をしてネタを見つけてるんですか?」と水を向けると、制作局のエグゼクティブプロデューサー伯野卓彦さん(48)が「すみません、僕らアナログなんですよ」と申し訳なさそうに口を開いた。
伯野さんは、かつて「クローズアップ現代」の制作も担当していた“社会派”。外見は作家のような硬い人物に見えるけれど、話し方は至ってフレンドリー。伯野さんは「ネットでネタを追いかけると新鮮さや速さが求められ、結局、他社と同じ内容になりかねない。
この番組は“モノの見方”が勝負アナログ人間にとっての最後のプライドといってもいいかもしれません」。チーフ・プロデューサーの杉浦大悟さん(42)も「みんなが知っていることを出しても面白くないと思う」と同意する。そういうことなので、インターネットでネタ探しはしないのだという。

じゃあ、アナログでネタを探すってどういうことなのか?

2015年4月2日の放送第一回は「なぜ自宅から? 相次ぐ謎の“拳銃”押収事件」というタイトルです。

拳銃マターは、放送局でも報道・社会部系の記者たちが特ダネ扱いする事件です。日頃”夜打ち朝駆け”で警察と人間関係を作り上げておかない限りネタにたどり着けません。

同じ放送局員でも決して触れることができない異世界のテーマになぜ番組制作者かせ取材できたのでしょうか。

これは、新聞の折り込みチラシの中に「遺品拳銃発見のお願い」という警視庁のお知らせが入っているのを、伯野さんの息子が見つけたのがきっかけ。杉浦さんが、福島県警に問い合わせてみると、数多くの拳銃が発見されていたことが判明。「きっと全国でも同じことがあるはず」と取材して深掘りすることに。

警察取材といっても、きっかけは現場ルートではなく、広報ルートだったわけです。それに “拳銃”押収 は事件マターですが、「相次ぐ」という部分はテーマであって事件ではないところが味噌です。

ちょっとした発見から疑問を深掘りしていって謎にたどり着いたというところが番組制作者の発想といえます。

高齢者+公園で生まれる不思議感

「健康遊具 高齢者」の画像検索結果

「謎の“高齢者”公園」の回も身近な経験が糸口になったと言います。

番組スタッフの子どもが公園の器具で遊んでいて怪我をしたという出来事から、高齢者向けの遊具があるということを知ったのだとか。

高齢者向けの遊具!?

家族はこの遊具の存在を知っていたというが、大阪の早朝の公園に取材に行くと、器具を激しく使いこなす、誰も知らない90歳の「スーパーおじいちゃん」の姿を目にすることになる……。

“ハードすぎる!? 健康遊具” でスリムになろうとしたら◯◯になった! 杉Pも!大変ですよ |NHK_PR|NHKオンライン

病気になるリスクを少しでも減らそうとする高齢者が増えたことから、自治体も動きだし、予算が付いて公園が生まれたといいます。

「風が吹けば桶屋がもうかる」ような話が現実に起きていたのです。

HB鉛筆が消える

「世にも不思議な“えんぴつ物語”」は、スタッフが甥っ子の入学祝いに鉛筆をプレゼントしようとしたところ、HB鉛筆がないことに気づいたことがきっかけだったといいます。

原因は、子どもの筆圧低下。HBだと硬いので柔らかい2Bの鉛筆に変わっていたという内容でした。

子どもの体力低下に警鐘を鳴らしたこの鉛筆ネタは、朝日新聞社系のウェブメディアが追いかけて記事にし、ヤフーのトピックスが採用したといいます。

「ネットに手柄を横取りされたように見えますけど、悔しくなかったんですか?」と伯野さんに聞いたら、「追いかけてくれた嬉しさとか喜びの方が非常に大きいですね。もちろんNHKを参考にしましたと書いてくれていたら、さらに嬉しかったですけど(笑)」と本当に嬉しそうだった。

キーワードは自分の頭のなかにある

愛知県春日井市にあるチョークメーカー「羽衣文具」の廃業を扱った回では、スタッフが取材している時、同社の倉庫にあったダンボールに「USA」という表記を見つける。メーカーに聞いてみると、これからチョークを1トン、アメリカに輸出するところだった!「チョークが1トン分ですよ。しかもアメリカに。これは、現場に行かないと絶対に発見できない“ネタ”です」。この発見は、「文房具“爆買い”騒動の謎」として放送された。

ライターの世界で聞くのが「コタツ記事」。現場に足を運ばず自宅で手に入る情報を中心に記事を書くことを指すと言います。(今書いているこの記事みたいなものです)

しかし、映像の世界ではコタツ記事のような動画をつくる方がかえって大変です。現場に行って話を聞き、絵を撮ってしまえばおわりですが、映像の世界ではゼロから絵づくりする方がよっぽど手間もカネもかかります。

生活の中で起きた出来事には、よく考えてみると不思議なことがいっぱいあります。

そうした日常の中の非日常に気がつくことが大切で、その判断基準は自分の頭の中にあるのです。

とはいってもすべてのネタがスタッフの生活のなかで発見されるのではないらしい。

杉浦さんは、よく国会図書館に通って、全国の地方紙の3面記事にでている小さな扱いの記事を探しているという。伯野さんは「新聞の紙面に掲載されている記事の雑多さはありがたいです。一気に目に入る感じ? 扱いの小ささが分かることが大事。ネットだと小さい扱いの記事も大きい扱いの記事と同じ大きさなので、逆に探しにくいんです」と話す。やっぱりアナログだ。

質問の仕方に秘訣あり

金融関係や弁護士といった知り合いに直接、話を聞く。伯野さんは「『何かネタない?』だと答えが返ってこないから、『最近受けた相談で驚いたことない?』とか質問は工夫します」と言う。杉浦さんも「SNSやメールで質問して終わらせるのでなく、実際に会うことで得られる情報はたくさんあります」と。

実際に人と会って話を聞く。当然、効率が悪く地道な作業です。

しかし番組制作者にとって取材がすべて。ここを楽をするとネタは出てこないという話には共感しました。

「僕らの言葉で、『出落ち』って言うんですが、番組が始まってすぐに話の全容が分かってしまうと、25分の番組が続かない。掘り下げるだけの背景や深みがそのネタにないといけないんです」。時間を持たせるという、番組構成上の理由もあるらしいけれど、ただ漫然と時間を費やすのではなく、番組スタッフが全国津々浦々、取材に出向き、そこでまた新しい発見をし、番組に反映させていき、濃い内容に仕上げる。現場に足を運ぶことはとても大事だという。

まとめ

映像が活字と決定的に違うのは、論より証拠。理屈よりファクトです。

目で見てわか情報量の差です。ですから、映像制作者は現場から漂う匂いのようなものをかぎわけ、映像の中に切り取らなくてはなりません。

この事実の裏にはこんな話が眠っているのではないか。

常に頭の中でPDCAを繰り返しながら生き続ける因果な生きものかも知れません。