
映画やドラマの野外ロケって、街中ノイズだらけなのに、なんであんなに声がクリアなの?
突然ですが、皆さん、映画やドラマを見ていてこう思ったことありませんか
「え、道路沿いで撮影してるのに、なんでこんなにセリフがクリアなの?」って。
だってさ、実際に自分でカメラ持って商店街で友達を撮ったら、セリフどころか「車のエンジン音」「自転車のベル」「遠くの赤ちゃんの泣き声」…全部入りまくるじゃないですか。で、あとで編集しても「え、これセリフどこ?」ってなっちゃう。
でもプロの映像は違う。あれって実は ちゃんと理由があるんです。今日はその「5つの秘密」と、さらに「初心者でもコストをかけずにドラマ仕立ての動画を作るときの録音テクニック」を解説していきます。
街中ロケでセリフをクリアに録る 録音テクニック
① ラベリアマイク(ピンマイク)を使っている

役者の胸元とか服の裏に仕込む、小さいマイクです。映像には映らないように忍ばせるんですけど、声をダイレクトに拾ってくれる。
だから周囲がガヤガヤしていても、 声が一番近い音として録れるんですよ。
② ブームマイク(ガンマイク)を頭上から狙っている

皆さんがテレビのメイキング映像で見たことあると思うんですが、長い棒の先にマイクをつけて、役者の頭上ギリギリで構えるやつです。
これ、かなり指向性が強くて「正面の声だけ」を狙い撃ちできるんですね。だから「車の音」は拾わず「セリフ」だけクッキリ録れる。
③ ロケ現場で環境音をコントロールしている
実はスタッフさんが「ちょっと今だけ通行止めお願いしまーす!」とかやってることもあるんです。商店街なら「ご協力お願いします」と近所に声をかけたり。
要は、 環境を物理的に静かにしてしまうわけです。これ、我々素人には難しいけどプロの特権。
④ 録音専門のスタッフがいる

映画やドラマには「録音部」という専属のスタッフがいて、マイクの向きや距離、風の影響を全部調整してるんです。風防モフモフ(通称デッドキャット)をつけたり、ちょっとマイクをずらしたり。
「声をいかに綺麗に録るか」に命をかけてる人たちなんですね。
⑤ アフレコ・アフターレコーディング(ADR)で差し替えてる
ここが一番知られていない秘密。実は、ロケで録ったセリフは そのまま放送されないことが多いんです。
ロケ現場では役者さんがちゃんと声を出して演技をします。スタッフはそれを録音して記録に残しますが、これはあくまで「仮の音声」。撮影後に演出担当がその記録をチェックして「声が小さい」「もっと感情を強めたい」と修正を加えたシナリオを作り直します。

そして、役者さんを 音声収録専用のスタジオ に呼び出して、完成した映像を試写しながら再度セリフを録音するんです。これが「アフターレコーディング(ADR)」、いわゆる アフレコ です。
このときの声は「ボイスオーバー」とも呼ばれ、編集者が役者の口の動きに合わせてぴったり音を当てはめていきます。この作業を リップシンク といいます。だから、商店街でどんなに雑音がしていても、完成版ではセリフが驚くほどクリアになるわけです。
さらに、劇場版映画などでは逆に 先に音声だけ収録してから撮影する という「ビフォーレコーディング」という手法もあります。役者が先にスタジオでセリフや歌を全部録音して、撮影現場ではその音声を流しながら口パクで演じるんです。
有名な例では映画『レ・ミゼラブル』。あの作品は逆に「現場で歌声をそのまま録音」するという大胆な挑戦で話題になりました。
つまり、僕たちが普段見ているドラマや映画のセリフは、 現場で拾ったそのままの声じゃないケースがほとんど なんです。
知ってしまうと「えっ、そうなの!?」って驚くかもしれませんが、これも作品をより聞きやすく、感情的に仕上げるための大切な舞台裏の工夫なんです。
ドラマ現場の裏側 ― ドキュメンタリーとの違い 録音テクニック
ここでちょっと余談。僕自身、昔テレビドラマの制作に少しだけ関わったことがあったんですが、そのとき「うわ、ドキュメンタリーとこんなに違うのか!」って衝撃を受けたんです。
ドキュメンタリー撮影だと、当時多くても カメラマン、音声、照明、車両担当を入れて4人 くらいで現場に行くのが普通でした。だから「小回りがきく」し、撮りながら現場で判断できる部分が多かったんですよね。
でもドラマになるとまったく別世界。
スタッフだけで十数人規模。監督、助監督、カメラ、照明、録音、ヘアメイク、美術、衣装、演出部…。もうちょっとした「村」が移動してくる感じ。
さらに驚いたのが「記録担当者」。
これがもう縁の下の力持ちでして、全カットごとの芝居・動き・小道具の位置・セリフのニュアンスまで、ぜーんぶ細かくメモしていくんです。
なんでそんなことするのかというと、後で編集するとき「矛盾」を防ぐため。例えば「前のカットで右手に持ってたコップが、次のカットで左手になってる!」なんてことが起きたら視聴者は違和感を持ちますよね。そういうのを 記録で防ぐ。ドラマ制作のすごさを実感しました。
さらに「アシスタント・プロデューサー」。これもドキュメンタリーではなかなか見ない役割でした。役者さんやスタッフの弁当手配、スケジュール調整、近隣への配慮、撮影許可の確認…もう“現場のお母さん”みたいな存在。
撮影は役者や監督だけじゃなく、こういう人たちに支えられてるんだって、現場で本当に痛感しました。
だからこそ、ドラマのセリフが「ノイズもなくクリア」に聞こえるのは、録音技術だけじゃなくて、こうした 裏方の大所帯システム全体で成立しているんだと思います。
じゃあ初心者はどうすればいいの?
いやいや、そんなプロみたいにスタッフも機材も揃えられないよ!って思いますよね。わかります。僕も最初はそうでした。
でも安心してください。YouTube用のドラマ仕立て動画とか、友達と撮るショートムービーなら、お金をかけずにできる工夫があるんです。
テクニック①:スマホをピンマイク代わりにする
役者のポケットにスマホを忍ばせて、録音アプリで声だけ録っちゃうんです。
後で映像と同期させれば、あら不思議。周囲のノイズよりも圧倒的にクリアな声になります。
テクニック②:ガンマイクの代わりに安いショットガンマイクを使う
Amazonで5,000円くらいから買える「ショットガンマイク」をカメラに付けるだけでもだいぶ違います。
テクニック③:環境音をあえてBGMに混ぜる
どうしても雑音が入るときは「それを演出にしてしまえ!」作戦。
テクニック④:風防を自作する
スポンジ+ストッキングで自作のモフモフ。これが案外効く。
テクニック⑤:後でセリフを差し替える(プチADR)
友達と「セリフだけ後で静かな部屋で録り直す」っていう方法。最初はちょっと恥ずかしいけど、完成映像のクオリティが一気に上がります。
まとめ
プロの映画やドラマのセリフがクリアなのは、
- ピンマイク
- ブームマイク
- 環境音のコントロール
- 専門スタッフ
- アフレコ・ADR(舞台裏の工夫いろいろ)
この5つの力技と、大所帯のスタッフチームの支えがあるから。
でも初心者でも、
- スマホ録音
- 安いマイク
- 環境音を演出に
- 自作風防
- 後録り
これで「声が聞こえる動画」になります。
「声がちゃんと聞こえる」だけで、あなたのドラマ動画はグッとプロっぽくなる。次の撮影でぜひ試してみてください。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 録音テクニック を書きます。