こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。
人物のクローズアップを撮るときに、①ズームレンズでアップを撮る、②カメラ自体を接近させてアップを撮る。どちらがいいかという質問されました。
人物のクローズアップを撮るときに、①ズームレンズでアップを撮る、②カメラ自体を接近させてアップを撮る。どちらかというと②接近して撮るです。理由は二つ。
— furutani (@kenfru3) April 24, 2019
・”被写界深度が変わらない"ため観客のストレスが少ない
・無理やり見させられた感がない
加えて、ズームの操作自体に技術が必要です。
答えは②その理由を考えます。
私が使っているカメラはスタビライザー付きの広角カメラです。ズームレンズは付いていません。だから答えは②一択です。人の顔を撮るときはカメラを持って相手に近づきます。どんな映像になるかというとこの映像のインタビューパートのような感じです。
目次
良いカメラマンほどズームを警戒する
Embed from Getty Imagesカメラマンに聞くと、わかりますが良いカメラマンほどクローズアップの基本はカメラ自体を接近させるといいます。
業務用カメラには高性能なズームレンズが付いていますが、それは使わずに近づくのだというのです。その理由についてあるカメラマンはこう表現しています。
ズームレンズは便利ですが、使い方を間違えると、カメラマンの暴走になるということもあるわけです。
ではなぜクローズアップ撮影ではカメラを近づけた方がいいのか考えてみます。
カメラ自体を寄せる方法
まず、カメラ自体が接近する方法。そのメリットは”被写界深度が変わらないこと”だといいます。映像に変化が少ないので観客がムリしてピントをあわせる必要がないのです。
被写界深度とは ピントを合わせた部分の前後のピントが合っているように見える範囲のことです。深度が浅いとはピントの合っている範囲が狭いこと。
たとえばこの動画のように被写界深度が浅い場合。ピントの合わせ方次第で同じ被写体を異なる質感で撮影することができます。


標準レンズより望遠が、絞りを絞るより開いた方が被写界深度は浅くなります。
深いとはピントの合っている範囲が広いこと。深いと前後どの位置でもピントが合っているように見えます。
被写界深度(被写体深度)とは-カメラ・デジカメの撮り方・テクニック集
動画の撮影でカメラが被写体に近づいてもカメラのレンズ自体は変わらないので 被写界深度も変わりません。加えて観客の好奇心にあわせてカメラが移動することになるため観客の心理状態からも「無理やり見させられた」という気持ちにはなりません。
ズームレンズを使う方法
Embed from Getty Images反対に、ズームインはレンズを標準から望遠側に切り替えることになります。そのため標準レンズの被写界深度(焦点の奥行き)が望遠レンズに切り替えることにより変化します。すると、ズームするに従って人物と背景のピントが変化します。
ズームインは肉眼ではあり得ない不自然さを生じます。「ズームイン」することは、観客(視聴者)に「これを見ろ!」と押し売りすることと同じです。「よそに目を向けるな!ここを見るんだ!」と強制します。
つまり、ズームインでクローズアップを撮ると言うことはカメラマンの立場で見ると言うこと。観客の好奇心に合わせて見るということではないのです。
まとめ
おさらいします。最適解は②近寄るです。その理由は二つあります。
”被写界深度が変わらない”ため観客のストレスが少ない
無理やり見させられた感がない
写真の世界ではピントを効果的に操ることで作品の質を高めます。動画、特にドキュメンタリー系の撮影では事実をきっちり撮ることか第一で、芸術的か否かは必ずしも求められません。撮影者が視聴者を誘導するような撮り方は嫌われます。
私の場合、やむを得ず近づいて撮影するスタイルを撮っていたわけですが、ケガの功名だったと言えるのかも知れません。
小津安二郎監督は50mmの単焦点レンズを常用し、レールも(ほとんど)使わず、バスト・ショットとゆるいクロースアップを同じレンズで2カットに分けて撮っていました。この場合は、非常に淡々と対象を見つめている感じになり、押し売りする嫌らしさは全くありません。