
「対談形式のYouTubeライブ配信をするにはどうしたらいいか」という質問を受けました。調べているうちに素敵な商品を見つけました。
複数の映像を束ねて一本にするスイッチャーの新製品です。
ATEM Miniとは
Black Magicが発売した配信用機材です。これが映像制作者に大きな衝撃を与えました。
マルチカメラをスイッチングするスタジオ対談のような番組は放送局でなければ撮れないと思っていたら 鍵を握るスイッチャーが驚くほどの低価格でリリースされました 価格はなんと4万円 HDMIの動画カメラさえあれば誰でもYouTubeライブ配信ができる時代です。やったね #Black_magic 発売が待ち遠しい
— furutani (@kenfru3) December 25, 2019
単独カメラでYouTubeライブ配信は比較的簡単ですが、対談には複数のカメラが必要です。そのためには入力を切り替える必要があります。
「入力の切り替え・・・!これは厄介だな」と思っていたら、知らないうちにものすごい商品が低価格で製品化されていたのです。
ATEM Mini | Blackmagic Design
2020年5月現在品切れ状態。予約待ちとなっています。レンタルも登場。
マルチカメラのスイッチャーATEM Mini登場 レンタルAPEX
スイッチャーという聖域
撮影した素材を編集して放送する、完パケ[1]完全パッケージの略称で、映像や音声の編集、エンコードなどが完了し、放送や販売などにすぐに使える状態に仕上がったものをいいます。番組に対し、スタジオ生放送のような複数のカメラを使ってつくる番組があります。
右も左もわからない駆け出し時代。スタジオADの仕事を通じてこの世界の基本を学びました。
スタジオ番組は、カメラや照明、音声そしてVE(ビデオエンジニア)と呼ばれる技術集団の力を借りなくてはなりません。その集団の頂点に立ち集団を束ねるのがTD(テクニカルディレクター)です。
TDはディレクターの意図に基づきスタジオの技術的な設計を行います。設計とは入力信号を束ねること。入力とは映像や音声を指しますが、映像の質を調整する照明なども含みます。


映像や音声などの入力信号は、スタジオフロアのそばに設けられた副調[2]副調整室の略です。と呼ばれるコントロールルームに送られます。
端子やスイッチが並ぶメカニズムファンにはたまらない風景ですね。
この中心的な位置を占めるのが真ん中のスイッチャー卓です。
TDは、その前に座り映像と音声をスイッチすることでコントロールするのです。TDスイッチャーは オーケストラの指揮者のような存在ともいえます。
ちなみに制作担当のディレクターはTDスイッチャーの横に座って、「あれを撮れ、これを撮れ」と”わめきます”。
ちょっと話が長くなってしまいましたが、スイッチャー卓という装置は、放送用機器としてもスタジオの象徴の特注品。市販のカタログを見ても自動車が一台買えるくらいの価格です。
ATEM Miniの衝撃
複数カメラの切り替えにかかる機材が”かなり高額”という思い込みをくつがえしたのが。「ATEM Mini」の登場だったのです。


これさえあれば、
- YouTube Liveで生配信すること
- Zoomで一眼レフの映像をビデオ入力として使うこと
- 4つの映像を切り替えること
- テロップを入れること
- ピクチャー・イン・ピクチャー(いわゆるワイプ)を使うこと
- グリーンバック合成をすること
- 音声をミキシングすること
全部1台でできます。
ATEM Mini の仕様はメーカーのページで確認してもらいますが、驚いたのはその価格。US$295で日本円で35,980円(税別)です。
手に入れるのはメーカー直販しか道はないようです。
放送局で使われている業務用のスイッチャーが自動車一台の価格であるのに対し、こちらは、なななんと高級スマホより安いのです。


放送用機材が高額なのには、カメラや音声などそれぞれの機材が持つ技術的な規格を上手に調整する大変さがあります。そのハードルを一気に低くしたのがHDMIケーブルで取り回しができるイージーさです。
入力に使うカメラは4台までOK。そのカメラから HDMIケーブル経由で届いた信号ならば基本切り替えができるのです。高度な技術的知識がなくても使いまわせるのが画期的といえます。
同社のハイエンド商品や競合他社の商品と比較してもその差は歴然。
同様の機能を持つ製品と比べると十分の一の価格というので驚きですね。
多分、YouTubeでの利用一本に絞って、不要な機能をバッサリ切り捨てたのもコストダウンの秘密だったのかもしれません。
便利な使い道
すでにYouTuber界隈では話題騒然となっていて、レビューも複数立ち上がっています。
海外製品ですが取付もさほど難しくなく、テックマニアでなくても解説動画を見れば使いこなせます。
パソコンに接続することで、別途制作した動画ファイルをインサート再生できるのも魅力です。
すでにゲーム解説とか、自撮り動画で使われ始めていますが、こんな方にもおすすめです。
- 生ライブ投稿
- 対談形式の動画収録・生放送
- 複数の商品を紹介するコマーシャル動画
- アマチュアスポーツの生中継 などなど
動画制作の幅をぐぐっと広げてくれる強力ツールといえそうです。
YouTubeライブをするのに必要な機材
おさらいします。YouTubeライブをするのに必要なものは、以下の4つです。
- 映像を撮るカメラ
- 音を録るマイク
- ライブ配信をコントロールする装置(PC)
- 配信するためのソフト
すでにYouTubeライブができる環境であれば、ATEM Mini をカメラ代わりにパソコンにつないでマルチカメラのスイッチングが楽しめます。
ATEM Mini | Blackmagic Design


まとめ
製造元では品切れ状態が続いていて入手はかなり難しそうです。しかし、これがあれば生放送などの制作はかなり楽になります。
ライブ放送の強みは、完プロコンテンツとくらべ、作りが若干ゆるくても済む点です。
勢いで作って勢いで放送したい。そんなユーザーにはもってこいの商品と思います。