オリパラで再確認した生放送の迫力。最新の技術も映像の持つ可能性を引き出していました。
改めて感じたのは、動画を商品として見ると品質の競争はかなりのところに来ているということ。
世の中一般に言えることですが、完成品で差別化するやり方は難しくなっています。
では戦術として何が残されているのか。そのヒントを探るビジネス本が売れています。
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる
インターネットによって完成品はすぐコピーできるようになった。そんな時代にはプロセスにこそ価値が出る。完成品ではなく「制作過程」を売る!〝良いモノ〟だけでは稼げない。
著者が着眼したのは「プロセスエコノミー」という考え方です。
番組を見ていて思うのが、チャンネルを変えても同じような顔ぶれが出演する番組ばかり。
内容がほとんど変わらず、情報量や速度が同じだったら、共感してもらう切り口を探し出すことしか残されていません。
その答えの一つが出来上がった商品を売るのではなく、工程を商品することです。
私の好きな番組にETVで不定期に放送している「漫勉!」という番組があります。
一流の漫画家。特にあまりメディアに登場しない漫画家のアトリエを訪ね。創作の一部始終を生中継のように密着する番組です。
漫画家がどのようなペンを使うのか。ネームの発想はどのタイミングで思いつくのか。
将来漫画家を目指す人だけでなく、漫画家のファンも初めて見る景色が、特等席に座った気分で見ることができます。
あなたの物語が価値になるとは、自分を漫画家に置き換えてみるということ。
作った商品ではなく、商品を作る自分のプロセスに価値があると著者は言います。
過程の記録が武器になる
放送局時代、ドキュメンタリーを取材する時、必ず撮るように心掛けたのが「過程を記録する」ことでした。
美術番組ではアーティストが創作の過程で呻吟する姿を、料理番組では調理のプロセスを、政治家に密着した番組では行動と発言を山のように記録しました。
藁の中に落ちた針を探すように映像を何度も見直しながら尺にしました。
ドキュメンタリー動画は事実を速報するニュース動画とはアプローチの仕方が違います。
たとえば、「迷路」をニュースとドキュメンタリーがどのように描くか見てみましょう。
ニュースはゴールに到着した参加者の着順を伝えます。
それに対し、ドキュメンタリーはルートの辿り方に注目します。
参加者のルートのたどり方は人によって様々です。
正解のルートにたどり着こうと試行錯誤を繰り返すさまに参加者の個性が見えてきます。
個性の違い、直面した課題に対するアプローチの違いを克明に描きます。
人がプロセスに共感するメカニズムとは、自分に近いと感じた人が見せてくれる代理体験ななのかもしれません。
視聴者は試行錯誤のありさまに共感し価値を感じ取るのです。
まとめ
同じような商品やサービスが多数あった場合、その中から選ばれるのは消費者の心を揺さぶる情報のありなしです。
過程はその現場、その瞬間でしか見ることができません。
そのため克明な記録は高い価値を持ちます。
いいかえれば、過程の中にはマーケティングのヒントが隠されているといっていいかもしれません。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 プロセスエコノミー を書きます。