こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。
動画編集に注目が集まっています。それも格安価格でサービスを提供しようという動きに。
スキルのフリーマーケットとして知られるココナラを見ると、実に大勢の人が動画編集を仕事にしているかがわかります。

いったいどんな人たちが参加しているのでしょう。
サービスを提供するのは九割方個人です。映像制作会社で実務経験のある人や、広告会社で働く若手社員、大学生などが目立ちます。
一件あたりの希望単価は多くて一万円。中には千円でスキルを提供する人もいます。
映像やデザインは専門の会社を通すと高額になりがちですが、個人でサービスを提供させていただくことで、低価格を実現します。
流通の中抜きをすることでコストを抑えるといわれると、クリエィティブな世界にもついに来るべき時が来たような気がします。
番組制作の経験でいうと、編集マンの人件費は3万円/日というのが相場です。それから考えると価格破壊が進行しているようにも見えます。
動画編集の中身が違う
編集プロダクションに勤める知り合いに聞いたところ、意外にも「全然心配していない」という答えが返ってきました。
なぜなのでしょう。
実は、動画編集の仕事といっても中身が全然違うのだそうです。
番組の編集は、膨大なラッシュ映像と制作者の構成を見ながら、一本のストーリーを作り出す作業です。広告などの編集はCGや映像のテクニックを駆使して誰も見たことの内映像を作り出す作業です。つまり、プロの能力を駆使しながら時間とコストをかけてその対価に見合ったコンテンツを作り上げるものです。
一方、スキルのフリーマーケットで取引される動画編集とは、もっと簡便な編集作業にすぎません。
フリーマーケットの扱う編集作業とは、撮影してきた素材から不要なカットを切って短くしたり、コメントを文字テロップにしてスーパーしたりすることです。
高度な編集技術も単純な編集作業もひとくくりに動画編集という言葉でくくってしまっていることから価格破壊が起きているように見えたのです。
動画編集に価格破壊は起きているのか
映像編集という仕事は、放送局や映像業界、広告業界といったプロの仕事でした。プロしか入ることが許されない世界では特殊な料金体系が形作られてきました。
たとえて言うなら高級寿司店のようなものです。
ところが、デジタルネットワークの進化や機材の低廉化が、一部の関係者だけのものだった映像を一気に大衆化してしまったのです。
高級寿司店の隣に回転寿司チェーンができたようなものです。
これまで映像編集に縁のなかった人も、簡単に映像編集ができるようになり新規参入してくる人が爆発的に増えたのです。
一番あおりを喰ったのは簡単な技術で食べていた人たちです。単純なカット編集やテロップ入れという仕事は参入者も多く、値崩れしてしまいました。
ところが、高級寿司店で腕を振るっていた職人さんたちは影響を受けませんでした。その理由は提供するサービスが圧倒的に違ったからです。
ちゃんとしたプロジェクトはすでにプラットフォームがあって誰も困っていないのです。ココナラさんは軽めのお仕事を発注したい。だけどやり方が分からないという人たちに向けてサービスを見せてあげているのです。
価格の安い映像編集は、これまで需要も供給も少なかった個人の情報発信が主な仕事といえます。
発注する側は映像編集という仕事の中身や適正価格がよくわかりません。いっぽう編集する側は仕事の中身が、自分の経験でも担える内容であることを理解しています。
このことから、動画編集という軽微な仕事が大量に生まれ、いわば修行見習い中の人の働き口が増えていることがわかります。専門性を身につけたプロの仕事が価格破壊するわけではないのです。
両者の間で受給が調整されていくうちに映像編集の仕事と価格が適正化されていくように思います。